小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

低迷する時期、成果が上がらないとき、
どのようにモチベーションを保つのか?

若手の台頭の陰で、
ベテランに対する気遣いも

――先ほどの話にあったように、5月の「16連敗以降」、若手の起用が増えることで、一方ではベテラン選手の出場が減っています。ベテラン選手たちに対するケアはどうしているのですか?

小川 正直、これは難しい問題ですね。ポジションが限られている以上、若手とベテランを同時に起用することはできない。両者のコンディションや実績、現在置かれている立場を考慮しながら、どのように選手起用をするかというのはとても難しいです。一方では、ベテラン選手たちの状態も上がってきていないのも事実で、二軍で言えば、坂口(智隆)や畠山(和洋)はなかなか調子が上向かない現状もあります。一軍で言えば、川端(慎吾)、大引(啓次)ですよね。たとえば、大引の場合は一軍にいながらもなかなか起用する場面が作れませんでした。

――一軍での出番がほとんどない中で、大引選手は二軍降格となり、また夏場を迎えて一軍に昇格されました。こうしたところに「起用場面を作る難しさ」が現れているということでしょうか?

小川 選手起用の優先順位を考えた場合、チームがこのような状況である以上、廣岡、太田(賢吾)、奥村ら若手選手の方が優先されるのは、ある意味では仕方のないことだと思います。たとえば大引ならば、「プロ通算1000安打」まで、「あと4本」という状況がずっと続いていました。当然、「早く達成させてあげたい」という思いはあります。でも、試合で起用しなければ、いつまで経っても達成はできない。彼も不満は溜まっていたと思います。その不満を聞いてあげたり、何か声をかけたりしたとしても、「試合に出る機会が少ない」という状況は変わらないわけです。この点に関しては、もうどうすることもできない、もどかしさはあります。

――ベテランの起用に関しては、選手たちのプライドや経験を尊重する必要もあると思います。この点で気を遣っている点などはありますか?

小川 実力の世界ですから、「気を遣う」というのは語弊があるかもしれないけど、「大引の1000安打」ということで言えば、「早く達成させてあげたい」という思いから、相手チームとの兼ね合いを意識したことはあります。たとえば、8月12日からの横浜DeNAベイスターズとの3連戦、そして16日からの中日ドラゴンズとの3連戦では、当初僕は「この6試合中、5試合は左投手が来るだろう」と読んでいたので、「ここで大引を先発起用しよう」と考えました。結局、この6試合で左投手が先発した試合は3試合でしたが、この3試合では大引を先発起用しました。結果的にこの間に1000安打は達成できなかったけれど、首脳陣の中でもいろいろな意見がある中で、そこは僕が自分で判断しました。

――それは、監督からの「ベテランに対する敬意」といったことなのでしょうか?

小川 それを「敬意」と言っていいのかわからないけれど、大引は2015(平成27)年にFAでヤクルトに入団し、その年の優勝に貢献してくれた選手であることは間違いのない事実です。そうした選手に対する気遣いは、やはり必要だと思っています。

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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