いまだ記憶に新しい2017シーズンの屈辱的な戦績。ドン底まで低迷したチームを立て直すべく舞い戻った小川監督は、宮本慎也ヘッドコーチを要に据えたチーム改革を断行した。ハードワークに見られる「厳しさ」の追求は、選手達の意識をどのように変え、チームにどんな変化をもたらしているのか――。インタビュアーにライター長谷川晶一氏を迎え、小川監督のスワローズ改革に迫っていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――前回は秋季キャンプの目標である「考えること」「感じること」について伺いました。今回もその続きをお尋ねしますが、キャンプスタート時に行った各選手による「レポート提出」は「選手たちだけではなく、コーチのためでもある」という話を聞きました。この意図を教えていただけますか?
小川 こうしたレポート提出は、これまでもやっていました。でも、それがただ一方通行になっていたり、あるいは「選手対特定のコーチ」という一対一の関係だけに終わってしまってはもったいないと考えたんです。せっかく、選手にレポートを書いてもらうのならば、全コーチがきちんとその内容を共有し、それに対して各コーチがどのように思っているのかを選手たちにちゃんと伝える必要があると思ったんです。
――その結果、前回お話しされていたようにすべてのコーチが全選手と対峙するという4時間を超える個人面談となったわけですね。
小川 はい。そうです。これだけ時間をかけた狙いは、選手たちにとって、自分のことを指導するコーチたちがどのように見てくれているのか、どんな思いで指導に臨んでいるのかを本人にきちんと認識してもらうことでした。こうした認識を持っていた方が、練習の効率も、当然よくなります。
――レポートを通じて、コーチは選手の思いを知り、選手はコーチの指導意図を知る。理想的な相互関係が芽生えますね。
小川 はい。極端な言い方になるけど、間違った練習さえしなければ、選手は黙っていても上達するものだと僕は考えています。そのためには、両者の円滑なコミュニケーションが大切になってくる。ただ、今言ったことと矛盾するかもしれないけれど、間違った方法で練習することが、必ずしも「絶対にダメだ」とか、「完全なムダだ」いうことではないんですけどね。
――それは、どういうことでしょう?
小川 間違った方法で練習するということは、確かに上達する上での遠回りになります。でも、いろいろ試行錯誤の末につかんだものは、後に指導者になった際に生きてくるものなんです。現役引退した人がすべて指導者になるわけではないけど、苦労したり、悩んだりした経験は、引退後の人生においても決してムダではないと僕は思っています。