――こうした指導を通じて、例えば、ルーキーの村上宗隆選手だとか、3年目のシーズンを終えた廣岡大志選手など、期待の若手に変化は見られましたか?
小川 村上に関して言えば、ご存知の通り、プロ初打席で初ホームランを放つという華々しいデビューを飾りました。幸先のいいスタートではあったけれど、でも、その後は結果を残すことはできなかった。それでも、一軍の試合で一流投手たちと対戦することで、彼の中で何か感じるものがあったようです。結果が出ずにファーム落ちした後も、「残り試合で自分なりに試行錯誤していた」と、ファームからの報告がありました。それが、フェニックスリーグでも、台湾でのウインターリーグでも、成果に結びついたように思います。
――まさに、秋季キャンプで課題においていた「考えること」を実践できたのですね。
小川 実は村上の武器は「考えること」なんです。18歳という若さで、自分なりにいろいろ感じて、それを練習に取り組んでいくということは誰にでもできるものじゃない。具体的に何を感じ、考えたのかは、本人に聞いてみないとわからないけれど、彼に関しては「感じる力」が長けているというのは間違いないです。そういう意味では、プロ初ホームラン後、結果が出なかったことが、かえって村上のためにはよかったのかもしれないとさえ、僕は思いますね。
――廣岡選手には、何か変化は生まれましたか?
小川 開幕当初は一軍、しかもスタメンスタートを切ったのに、結果的にはショートのレギュラーポジションを西浦(直亨)に奪われてしまった。その悔しさを持ってフェニックスリーグに臨んでいたという報告を受けています。秋季キャンプでも、目の色は昨年よりも違っていたと思いますね。
――廣岡選手の「考える力」はどのように評価していますか?
小川 あれだけのポテンシャルを持っているから、どうしても周りは期待するし、熱心な指導をします。それによって、廣岡自身の中に迷いが生じた部分もあったのかもしれないと反省しています。村上にはいい意味での頑固さがあります。でも、廣岡にはすべてを受け入れようとする素直さがあります。どちらがいいとか悪いという意味ではなく、廣岡に合った指導法を我々がきちんと見つけなければいけない。そんな思いで彼には接しています。
――そのポテンシャルについては誰もがお墨付きを与えています。来季は勝負の4年目ですから、大いに期待したいところですね。
小川 今年、あと一歩というところでレギュラーを逃した悔しさを忘れずに、このオフを過ごしてほしいですね。来年、高卒4年目ということは、即戦力として評価される大学4年生と同じ立場の一年ということになります。プロ4年目、そろそろ芽が出てくる頃だと思うので、僕らも期待しています。