いまだ記憶に新しい2017シーズンの屈辱的な戦績。ドン底まで低迷したチームを立て直すべく舞い戻った小川監督は、宮本慎也ヘッドコーチを要に据えたチーム改革を断行した。ハードワークに見られる「厳しさ」の追求は、選手達の意識をどのように変え、チームにどんな変化をもたらしているのか――。インタビュアーにライター長谷川晶一氏を迎え、小川監督のスワローズ改革に迫っていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――先日まで行われていた交流戦では12勝6敗で全日程を終えて、勝率1位に輝きました。交流戦前には借金9の最下位でしたが、ペナントレース再開時には借金も3まで減りましたね。
小川 交流戦ではみんなが本当によく頑張ってくれましたし、投打の歯車がきちんとかみ合っての勝率1位でした。特に中尾(輝)、近藤(一樹)、石山(泰稚)の救援陣は登板過多でありながら、よく踏ん張ってくれました。この勢いを大切にして、セ・リーグでも戦っていきます。
――さて、今回はチーム内での競争、若手選手起用のポイントについて伺いたいと思います。まずは、前回、監督を務めていたときから気心を知る選手と、そうでない選手との接し方について、監督の中では気をつけていることはありますか?
小川 当然、畠山(和洋)にしても、雄平にしても、あるいは青木(宣親)にしても、昔からのつき合いですから、気心は知れている部分はあります。たとえば、スタメンを外す場合にしても、彼らに対して、「こういう理由で、今日の試合はスタメンから外す」と、理由を説明することに抵抗はありません。その一方で、たとえば大引(啓次)や坂口(智隆)などは、僕がSD(シニアディレクター)時代にチームに加入した選手なので、身近に接するのは今年が初めてでした。だから、最初の頃はかなり気を遣いましたね。
――今、名前が挙がった大引選手はショートからサードへ、坂口選手は外野からファーストへ、それぞれ今年コンバートされていますね。
小川 確かに、そのように受け止められるのは仕方のないことだとは思っています。でも、もちろん僕の中では、元々在籍していた生え抜き選手を優遇して、他球団から移籍してきた選手を他のポジションに回すという考えはまったくありません。現実的に大引、坂口をコンバートしたのは事実ですけれども、それはあくまでもチーム全体を通して、「適材適所」を考えた結果です。
――両者のコンバートの理由を、改めて教えていただけますか?
小川 まず、大引に関して言えば、キャンプが始まる時点での僕の構想としては、ショートは大引を筆頭に、西浦(直亨)、廣岡(大志)を競わせようと考えていました。ところが、2月1日のキャンプインの時点で、大引が故障してしまった。それでも、ある時点までは猶予を与えて、彼が戻ってくるのを待っていました。けれども、なかなか調子が戻らないまま開幕を迎えてしまった。そこで、大引には申し訳ないけれども、彼の足への負担を考えたこと、そしてその時点で(サードを守らせようと考えていた)川端(慎吾)がまだ本調子ではなかったこともあって、大引をサードにコンバートすることを決めました。
――大引選手に、そのような説明をしたわけですか?
小川 はい、しました。彼はショートにこだわりとプライドを持っていましたから、なかなかすぐには受け入れられなかったようですが、きちんと本人に説明をして、今では納得してもらっています。でもその結果、廣岡にも開幕以来、しばらくの間はチャンスを与えることができたし、西浦も急成長したと思います。