「ベテランはリストラの対象になりませんか?」
ある人からそう聞かれました。今回は、この質問に答えてみたいと思います。
ベテランとは、基本的には褒め言葉です。「あの人、ベテランだよね」「さすがだよね」と言われるのは、技術・技能に長けていて、知識も豊富で信頼が置ける人ですよね。
たとえば、商品を売る技術・技能に長け、長年の経験によって培った豊富な知識があるベテラン営業マンであれば、業績にも繋がっているはずです。当然、会社からは今後も必要とされるでしょう。
ベテランという言葉を辞書で引いてみると、「経験を積み、その道に熟達している人。老練な人。ふるつわもの」とあります。経験を積み、その道に熟達している人なら、たとえ50代であってもリストラの対象にはなりにくいです。
ただし、「ベテランはリストラの対象にならない」とは言い切れません。その技能や知識が、これからも使いものになるかどうか次第、ということになります。
たとえば「俺、エンジンのキャブレーターの修理が得意なんだよな」という職人さんがいたとします。キャブレーターとは、燃料を気化する装置です。一昔前までは一般的な自動車部品でしたが、今の車にはキャブレーターはほぼありません。
ITの世界は特に変化が激しいです。「CG一筋30年です」という人がいても、その技術が変わってしまえば、まったく通用しなくなってしまいます。
そのベテランの技が今後も通用するものであるか。その人が持っている技術や技能、知識が「もういらないよね」というものになっていないか。ここがリストラにおける非常に重要なポイントになります。
また、同じ技術を持っている人が2人いたら、それを30年かけてやっている人と、10年で覚えた人が同じアウトプットだったら、10年の人のほうがいいわけですよね。
ですから「ベテランはリストラの対象になりませんか?」という問いには、「なるかもしれません」という回答になります。
長年培ってきた技術・技能があり、会社で信頼され、一目置かれていたとしても、時代が変わり、やり方が変われば、一気にリストラの対象になってしまうのです。
プロ野球の落合博満さんのリーダー像を描いた『嫌われた監督 落合博満は中日ドラゴンズをどう変えたのか』(鈴木忠平/文藝春秋)という本がビジネスパーソンからも注目を集め、12万8000部突破というベストセラーになっているといいます。
私も非常に興味深く読みましたが、落合監督は谷繁選手や立浪選手といったチームの要となってきたベテランであっても、何も言わずにレギュラーから外します。落合監督には落合監督なりの考え方があるのですが、ベテランだからといって容赦しません。
これは一般の企業であっても同じでしょう。たとえ優秀なベテランであっても、同じ技術・技能を持っている若手がいたら、より若い人に取って代わられるかもしれません。