2022年になっても、希望退職・早期退職を募る企業が後を断ちません。富士通が50歳以上の幹部社員から希望退職を募ることを発表し、フジテレビが希望退職、博報堂が早期退職を募るなど、今後もさらに増えていきそうです。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。
コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
1つは、中高年の「給与の高さ」です。希望退職・早期退職の対象となっている45歳以上は「バブル世代」と「氷河期世代」にあたり、年功序列の会社であれば、最も給与水準の高い世代です。人数も多く、部下を持たない管理職も少なくありません。
高い給与に見合ったパフォーマンスを上げている人はともかく、そうでない40〜50代には辞めていただいて、会社を若返りさせたい。それが企業の本音でしょう。
もう1つは、「定年延長」問題です。高齢者雇用安定法により、企業は2025年には65歳までの希望した全員を再雇用しなければいけなくなります。さらには70歳までの就業機会の確保も努力義務になります。
この世代に、あと20年も30年も会社にいてもらうよりは、1000万、2000万を積んでも辞めてほしい。だから、希望退職・早期退職を募っているのです。
中高年の給与と定年延長の問題は、大企業や上場企業に限った話ではありません。東京商工リサーチによると、2021年の「コロナ破綻」は2540件(負債1000万円以上)。倒産に巻き込まれた従業員は2万5059人に上っています。2018年頃から始まった黒字リストラに加え、この2年は赤字リストラも増えています。
今はまだ希望退職や早期退職を募っていなくても、今後はさらに多くの会社で実施されるかもしれません。年功序列の企業の多くは「言われたことを言われた通りにやればいい」と思っている人が偉くなっています。会社の将来に危機が迫っていても、なかなか意識改革できませんが、経営者が変われば話は別です。トップが「意識改革を早くやれ!」と号令を出したら、年功序列の会社ほど早くスイッチが入ります。
社員をA・B・Cなどにランクに分け、評価が高いAランクの社員には希望退職・早期退職の募集に応募しないように説得し、BランクやCランクの社員には「別の道を考えたほうがよろしいんじゃないでしょうか?」と退職を促してきます。
本来であれば、給与に見合った働きをしない社員がいるなら、そのことを本人に伝え、もしくは給与を下げて、リストラする前に気づきを与えるべきです。何も言わず、何の前触れもなく、いきなり「お辞めになりませんか?」と伝えるのは、むごい話です。きちんと指摘さえすれば、意識を変えられる中高年だって多くいるのです。
しかし、残念ながらそうした指摘をしてくれる会社はあまり多くありません。辞めてもらったほうが話が早いので、容赦なくリストラを実行するでしょう。