人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

「有害」「不要」認定した社員に送られる、会社側の残酷なサインとは――

第一の動きは「解任」「異動」

会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。

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この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。

50代になると、部長や課長などの役職についている人が多くいます。役職を解任されるのは、「このままでは、あなたを不要と判断しますよ」という会社からの警告と考えてください。

自己申告制度を導入している会社では、社員の満足度などを調査し、問題のある部門や部署を発見しやすくしています。例えば「大阪支社の満足度が低い」となったら人事が内偵に入りますが、「満足度が低いという状態にしていることが、そもそも管理職として能力がないよね」と判断されます。

自己申告制度がなくても、「〇〇さんの部署って若手が辞めてるよね」「異動希望を出している人が多いよね」「人を育てることができないよね」といった情報は、会社も当然、把握しています。経営と人事で「こんな状態ですけど、どうします?」と話し合い、「厳しいね」となったら、解任となります。

解任されても「担当部長」「部長補佐」など別の肩書きが与えられる会社もありますが、ヒラに落とされることも多く、そのままその部署には居づらいだろうな、ということで異動してもらったりします。

このような場合の異動は、「場所が変わったら活躍してくれるんじゃないか」「パフォーマンスを上げてくれるんじゃないか」「変わってくれるんじゃないか」と、覚醒を促すことが目的です。

それでもダメだったら、もう一回、異動させて、だんだん閑職になっていきます。それが、いわゆる窓際族です。けれど、窓際族を置いておけるほど余裕のある会社は減ってきています。そのまま退職勧奨される場合も少なくありません。厳しいですが、これが第一の動きとなります。

第二の動きは「評価を下げる」「給与も下げる」

第二の動きは、「評価を下げる」です。それにともない、給与も下がり、ボーナスも下がります。これも、「このままじゃダメですよ」「行動を改めてくださいね」という会社からのメッセージです。

本当に不要と判断されたら退職勧奨になりますが、「評価が下がる」「給与が下がる」は、その前段階として「このままだと不要と判断しますよ」「退職勧奨になりますよ」という予告です。

評価制度が整っていない会社では、上司はあまり低い評価はつけません。低い評価をすると、理由を説明したり、フィードバックをするのが面倒だからです。

このような場合は、人事から上司に「この評価でいいんですか?」とプレッシャーをかけます。「だけどさあ、しのびないじゃん」「娘が来年、大学受験だしさぁ」などと言われたりしますが、「いやいや、しのびないとか言っているから、こうなっちゃったんでしょう? ダメなものはダメなものと言いましょうよ」と適切な評価を促します。

評価や給与が下がった理由について、きちんとフィードバックしてくれる会社だったら、指摘を真摯に受け止めましょう。行動を変えれば、復活できます。評価や給与が下がっても何も言ってくれない会社だったら、そのまま何もしなければ、退職勧奨になってしまいます。

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上司に「私の課題を教えてください」とお願いする。上司が何も言ってくれない場合は、同期や周囲の人に「俺ってどう?まずいところがあったら教えて」と聞いてみる。こうした行動が必要です。

経営陣や部門長が集まる評価会議では、「給与分の仕事をしていない」と判断された社員はリストアップされています。「この人、イエローカードだね」「もう2回目ですよ」「じゃあレッドカードだね」といった話し合いが行われ、レッドカードになれば、退職勧奨です。

評価が下がり、給与が下がったら、カラータイマーが点滅しています。早急な対処が必要です。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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