人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

「有害」「不要」認定した社員に送られる、会社側の残酷なサインとは――

第三の動きは「希望退職・早期退職」

第三の動きは、「希望退職」「早期退職」のお誘いです。博報堂では早期退職、フジテレビでも希望退職の募集が発表されました。会社が早期退職や希望退職の制度を導入し、「これに応募してみませんか?」と声をかけてきたら、「お辞めになりませんか?」という遠回しな退職勧奨です。

退職勧奨とは、会社があなたを不要と判断したときの最も重い措置です。

前回もお伝えしたように、会社は社員を簡単にはクビにできません。社員を解雇できる正当な理由は、度重なる欠勤・遅刻などの労働契約不履行、もしくは不正くらいしかありません。

それ以外の理由は不当解雇にあたり違法となりますが、退職勧奨は「お辞めになりませんか?」と「おすすめ」しているだけですから、違法ではないのです。

「3ヶ月間は有給扱いにしますから転職活動してみませんか?」「今だったら退職金をたくさん払いますよ」といった条件面の提案も行われます。同意すれば、労働契約の合意解約となり、「あなたも合意して、お辞めになりましたね」という形をとって労働契約を解消します。

退職勧奨はあくまで会社からの提案ですから、拒否すれば退職にはなりません。なりませんが、評価や給与が下がったり、職場に居づらくなっていきます。

会社が早期退職・希望退職の制度を導入したら、「不要な人には辞めていただきたい」という意思表示と受け止めてください。おもなターゲットとなる45歳以上の人は、特に注意しなくてはいけません。

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第四の動き「退職勧奨」を防ぐには?

会社が不要と判断するのは、「有害」な人です。給与に見合った活躍をしない、ハラスメントをするなど、他の社員や組織に悪影響を与えることが「有害」と考えられます。

このような人には、いなくなってもらうか、変わってもらわないと、周りがしんどくなります。本人の問題だけでなく、他の社員が辞めたり、病んだりするので、会社としては手を打たないとまずいのです。

次は「無害」な人です。無害とは、いてもいなくても一緒ということ。マイナスもないけれど、プラスもない。無害な人材でも許容してくれる会社ならいいですが、早期退職・希望退職を導入する会社が増えているのは「無害では困る」というメッセージです。「有益」な人材にならなくてはいけません。

無害なままでも会社が許容してくれるのであれば、定年まで逃げ切るのもひとつの方法ですが、やはり心機一転、頑張ることをお勧めします。

「50代は変わらない」とよく言われますが、変われる人もいます。年功序列の評価制度を変えて、ダメな点はきちんとフィードバックしてもらうようにすると、今まで言われていなかったことを指摘されて、「初めて気づきました!」と驚く50代の人が多くいます。

リストラの対象になりがちな「パフォーマンスより給与が高い人」は、今まで何も言われていなかったから、自分の課題に気づいていないことが多いのです。フィードバックを受けると、すねる人、まったく気にしない人、反応しない人もいますが、気づいて変われる人もいます。

人はいつでも変われるのです。50代だから変われない、なんてことは決してありません。

会社から不要と判断されてしまったことを真摯に受け止め、働き方を改めたほうが、あなたも幸せだし、周りもだし、家族も幸せです。変わるべきなら変わったほうが、みんながハッピーになれます。

解任・異動になる、評価・給与が下がる、希望退職・早期退職を勧められる、こうした場合は、自分を変える機会と受け止め、ピンチをチャンスに変えましょう。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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