冒頭でお話しした今回の雅楽演奏の新作コスチュームはまず、校友会事務局にアイデアを提案させていただきました。
「既に着なくなった男性ものの着物、羽織りなどを提供していただきたい。その着物を反物に戻し、それを生地素材として僕がリクリエーションして新しいコスチュームを生み出す。雅楽師の二人には、それを着て演奏してもらってはどうか。オファーしていただいた皆さんとの思いと演奏が僕のクリエイトでつながり、1つの形になる立体的な表現の試みであり、凄く素敵だと思うのです!」
とリクエストしました。
校友会の方々は快諾。流石、パッションと行動力があるので、たくさんの着物を集めてくださり、解体作業を経て4ヶ月で素材を用意してくださいました。着物を解体するのは丁寧さと根気が要る作業ですから凄く大変だったはずです。
集まった男性ものの着物は、やはり女性ものの派手で雅な柄とはいきませんでしたが、羽織りの裏地の富士山や男性ならではの柄の色や組み合わせ、モチーフ、家紋などなど渋くてとてもCOOL!
歴史を背負ってきた男たちの着物生地を広げ、柄合わせをしながら配置していきます。ここで全てのコスチュームの柄の見え方、バランスや迫力が決まるので、それぞれの生地の置き位置はもっとも慎重に決めていきました。
今回は着物。
雅楽師である彼らの腕前の魅力を背中に背負わせたい♥という思いを込めて、柄の見せ場を全て彼らの背に集中させました。
以前、女性ものの着物で大作コスチュームを制作したことはありましたが、男性ものでの制作は今回が初めてです。なおかつ、それを雅楽師に着てもらい会場で演奏していただくというのは、美しい緊張感があり挑戦です。
雅楽と着物。
日本オリジンの賜物を、現代へと形にしてみたかったのです。
雅楽。
皆さん、雅楽と聞いて何を思いますか?
よくあるのは結婚式に奏でられる調べですよね?
僕も最初はそんなものでした。雅楽師なんて何処に生きているのか?な感じでした。
4年前、母校東京藝術大学での学園祭。
学園祭実行委員会からオファーされたイベントを僕がオーガナイズしていたこともあり、10年ぶり以上に学園祭を訪れました。
ふらっと後輩クリエイターに誘われて模擬店に顔を出したのがきっかけでした。
懐かしい顔ぶればかりにテンションアップ!
同級生に先輩、後輩、恩師とまるで大大大同窓会、夏の終わりの藝術祭。
そのとき、目の前の空いた席にぽーんと見知らぬBOYが座りました。
「何? 君? その席、人が座っているからどいてくれる? 一体、君は何者なの?」といつもの調子な僕。なかなか凛としていて物怖じしない牛若丸みたいな美しき青年こそ運命♥のはじまり、纐纈拓也さんでした。
「え? 何? 雅楽勉強してるって? 龍笛吹いてるって? ちょっとちょっとめっちゃ興味あるからここに座ってガッツリ話を聞かせて!」
と急展開に相変わらずの猛アタック! 興味しんしんMAXな僕。
自作のコスチュームを着てもらって音楽を奏でてもらいたいという思いは昔から強く持ってました。それも一流★★★本物のスキルを持った人に。
だから纐纈さんと出会ったのは、まさにビビビな運命です。
その瞬間、クリエイター魂は恋♥に落ちました。落とされました。
しかも雅楽だなんて、なんてFANTASTICで神がかりでしょう。妄想アイデアがその場で膨らんでしまいました。
纐纈さんとの出会いからすぐ、三浦さんたちとも知り合い、さらに彼らとは不思議な御縁で結ばれてコラボレーションクリエイションを行うことになりました。
僕が仲良くさせていただいているステキなバッグブランド「Coquette」のオーナーでデザイナーの林さんの挙式があり、僕は宴用のコスチューム制作をオファーされていたのですが、そこでさらに雅楽師に演奏をお願いできないかと相談を受けたのです。
それは素敵! 非常にコンセプチュアルで面白い!
というのがきっかけとなり、出会ってすぐにコラボレーションする形になったのです。もちろんこのときは正式な装束を着た龍笛、笙の雅楽師二人の演奏でした。
間近で演奏を聞いたのはそのときが初めてでした。
なんて神々しく美しいのだろう。
奏でる音色でその場の空気が、時が、一瞬で浄化されているように厳かに、心地よく響きました。宴は雅に盛大に美しく終えました。