その後、話題はモデルのキャスティングへ。「モデルについては、1名は装苑専属モデルのSUMIREを起用したいと思いますがいかがでしょうか?」と玉利さん。え! あのSUMIREちゃん? そう、ここ数年の装苑の顔である、クールビューティーSUMIREちゃんです。透明感のあるフェイスと、全身から醸し出される独特の雰囲気は他のモデルにはない存在感で、まさに“旬”のモデルさんです。
父君はあの実力派俳優・浅野忠信さん。カッコいい! そして母君は、カリスマアーティストのCHARAさん。アルバム「Violet Blue」を初めて聴いて以来、僕はCHARAさんの大ファンです。そんなお二人の娘さんであるSUMIREちゃんは、まさに美しいサラブレッド❤❤❤
「ぜひ、SUMIREちゃんをクリエイションしたいです」こうして、パールガールちゃんの1名が決まりました。頷く玉利さん、「ありがとうございます。それで、フォトグラファー、スタイリスト、ヘアメイクアーティストはどうしましょうか?」
ふむふむ。普段コスメティッククリエイションで僕の右腕となってくれるクリエイションスタッフは何名もいます。でも、前回の80周年記念号でのミラクルクリエイションのような新鮮で面白いケミストリーを求めるなら、僕のアイデアにぴったり合う、僕にとっての“ニューカマー”を編集部でセレクトしていただくのがよいと思い、そう提案。「わかりました。2、3日お待ちください」玉利さんはそう言ってくださいました。
この日の打ち合わせはここで終了。次回のミーティングでは、「ニューカマー」との顔合わせとともに、僕のほうでブラッシュアップした企画案を持ってくることで決定。どなたが選ばれるのか、楽しみです。
数日後。持ち帰ったアイデアを発展させて、全体のページ構成のバランスに配慮したカラーリングイメージのラフを準備し、三たび新宿へと向かいます。編集部がセレクトしたのはどんな人物なのか、ドキドキワクワクです。
「はじめまして、スタイリストの遠藤リカです」そう言ってミーティングの部屋に入ってきたのは、小柄でお洒落で元気そうな女性。ここに来る前に別の撮影の仕事が入っていたようで、肩から大きな荷物を下げています。
彼女のお洒落で馴染みやすそうな第一印象に、「あ、僕、この人好き❤」と好感を持ちました。彼女とはこの日のミーティング中、すぐに意気投合することに。聞けば編集部オフィスから歩いて行ける新宿伊勢丹では、リカさんがセレクトしたポップアップショップがまもなくOPENするのだとか。また、年末の第67回NHK紅白歌合戦に出場するPUFFYのお二人のスタイリングを担当することになり、この日はそのための打ち合わせをしてきたのだとか。そんな素敵なクリエイションのお話を楽しく聞きながら、本題について話し合います。
リカさんは僕のアイデアをとても面白がってくれました。「それなら衣装はこういうのもアリかな?」とか、「モデル2人がアクセサリーになるなら、こんな方法もある!」といろいろな提案を次々に出してくれます。どんどん企画が膨らみ、話が盛り上がって、初対面とは思えないほど意気投合しちゃいました。
その後、玉利さんとリカちゃんから、「フォトグラファーは矢吹健巳さんがいい!」との希望が挙がります。僕は存じ上げなかったのですが、その場で彼の作品資料を見せてもらい、「あ! 好き❤ いいかも!」と合意。こうしてフォトグラファーは矢吹君に決まりました。
残るは、ヘアメイクアーティスト。今回の僕のアイデアは、かなり手の込んだヘアスタイルだったこともあり、モッズヘアの宮坂さんにお願いすることになりました。実はこの宮坂さん、元・資生堂のヘアメイクアーティスト。これまでに何度も一緒にクリエイションしてきた仲なのですが、まさかこんなミラクルなタイミングで再会できるなんて、思ってもみませんでした。嬉しい!
クリエイションを一緒に創り上げる仲間が、一人、また一人と集まってきます。そして、撮影まで一週間を切った月曜の夜――「大集合オールスタッフミーティング」を開催しました。僕のアイデアをきっかけに結集したこのメンバーで、撮影カットや段取りなどについて意見しあい、シューティングに向けて詰めていきます。それぞれの専門の立場からの意見交換ということで“トンガリ”つつも、同じ目標を見すえて協力し1つのビジュアルを考えていく、とても楽しく充実した時間になりました。
さて、まだ決まっていないキャスティングが一枠ありました。もう一人のパールガールです。でも、これもほどなく決定しました。僕が現在アートディレクションをしているコスメティックブランド『マジョリカ マジョルカ』のモデル、琉花ちゃんです。彼女のスウィートなフェイス&雰囲気は、クールビューティーSUMIREちゃんとは対照的。この2人なら、美しいコントラストに彩られた素晴らしいビジュアルになると確信しました。すでにさまざまなメディアを飾る琉花ちゃんは、どんな情景にも溶け込み、品位のある装いを見せてくれるモデルさんです。ここ1年ほどの『マジョリカ マジョルカ』でのクリエイションで、僕はそう実感していました。
これでキャストは決定! う~む、この2人をどうお洒落に料理するか。楽しみでしかたないシューティングの日――12月17日は、もう目前に迫っていました。
そして迎えた当日。撮影カットは、全部で5つです。ただしアーティスティックな内容にギミックを入れていくので、実際にはそれ以上のカット数があり、そのぶんだけスタイリングも増えます。モデルのガールズ自身が、ブローチやイヤリング、パールなどの「アクセサリー」になっていく撮影現場は、とっても可愛く楽しい雰囲気に包まれていましたが、一方で時間との戦いでもありました。
いつもそうなのですが、企画のアートディレクターである僕は、撮影現場では何となく“暇を持て余している”風に振る舞います。そしてモデル・フォトグラファー・ヘアメイクアーティスト・スタイリストの皆さんがフル稼働で動き、シューティングしたものに対して、最大の瞬発力&集中力で「こうじゃない? あ~じゃない? キャ! ステキ!」とジャッジしていく。ま、これが僕のクリエイションの仕事です。
こうして、オファーから撮影本番まで短い準備期間であったものの、ミラクルなメンバーが勢揃いした濃厚な撮影はHAPPYに無事終了しました。ハードな部分もありましたが、言ってみれば「美しい修羅場」でしょうか? やっぱりこういうクリエイションが大好きです。関係者の皆様、ありがとうございました。
このクリエイションが載った装苑3月号は、1月28日に発売されました。ぜひ! 書店などでご覧ください。あ! GET! してください。売れてほしいです。嘆願❤よろしくお願いいたします。
最後に、装苑編集部さま。このような光栄★な機会を与えてくださいまして、本当にありがとうございました。また一緒にクリエイションしたいです。いつかいつか、装苑でビジュアルクリエイションの連載をやりた~~~いと思っています。これからもよろしくお願いいたします❤LOVE。
装苑はやめられない。
本連載が書籍に? 資生堂アートディレクター成田久氏が、銀座一丁目の森岡書店にて「ププププレゼン力」展を開催中! 2017年12月19日(火)~28日(木)まで。詳細はこちら