バタバタするのが大嫌いで、何事も用意周到・準備万端な僕なのに……なんで今回にかぎってこんなウッカリをやってしまったのだろう。でも、これもいい勉強。もう二度と、こんなミスはやらかさないぞと肝に命じました。
さて、天使のお恵みでGETした次のフライトの時間は17時40分。現在、まだ午前9時前。この時間を上手く使って、空港でのフライト待ちを満喫しよう! とポジティブに考えることにしました。
タクシーで乗り付けたときから気になっていたのですが、この成田空港第3ターミナルの建物は、外観からして僕の好きな雰囲気をたたえています。無駄な装飾がなく、なんとなく“DIY感”があって面白い。Jetstar★のデザインのカラーリングや、カウンター周辺で働いているスタッフさんも好印象。カジュアルスタイリッシュで、シンプルなデザインが印象的なターミナルです。
こんな素敵な場所で半日を過ごすのだから、どうせなら原稿を1本書き上げようと、クリーンなウッドベーステーブルがたくさん並んだオープンフードエリアへと足を運ぶことに。うっかりミスで沈んだアンハッピーな気持ちは忘れて、この時間を楽しんじゃおう! 気分を切り替え、カフェラテ片手に執筆作業に取りかかります。
以前にこの連載でも触れましたが、「書くこと」は大好き。時間さえあれば、場所を問わず集中してバァーッと文章を綴ることができます。次のフライトまで8時間以上あるので、原稿だけでなく、雑務処理やスケジュールの見直しもできそうです。
まずは原稿を仕上げてしまおうと、ジャポニカ学習帳を颯爽と広げて「書くモード」に入ります。周囲にはフライトを待つたくさんの人、人、人。観光客かビジネス客か、外国の方も大勢います。人々が集まり、さまざまなフードの香りが混ざり合うその空間で、僕は1人、執筆の旅へと入り込んでいくのでした。
執筆の旅を終え、今度はもちろんフライトにも間に合い――19時30分過ぎ、大分空港に無事到着しました。そこから高速バスで約1時間、別府方面へと夜の大分をひた走ります。ちなみに前回訪れた際は電車でした。そのときはふらっと別府駅に降り立ち、観光協会でオススメの宿を聞いて、『ART MAP』を手に取り、素敵な人々と知り合い……車窓から夜の大分を眺めていたら、HAPPYに過ごした1泊2日の思い出が浮かんできました。
バスに揺られ続けていると、ふいに遠くに見えてきたのは別府タワー。「この土地、なんとなく覚えてる」と記憶が蘇ってきました。そして別府に到着。バスを降り、宿にチェックインして、まずは駅前高等温泉へ。200円払って温泉に浸かります。あ~、この感じ。地元の方とおぼしき先客もやがて上がり、ノスタルジックな感じのする温泉は僕の貸し切り状態に。さ、明日からは湯と執筆の時間を過ごそう。
翌日、11月4日。別府の朝、空は快晴。気温は東京とさほど変わらないようであります。朝早くに宿を出て、有名な竹瓦温泉に向かいます。今年からすっかり朝活モードになっているので、早朝ながら頭はすでにスッキリ、気分も爽快。竹瓦温泉に着き、立派な門構えの暖簾をくぐりました。
受付で100円を渡し、脱衣所へ。浴場には朝の光が燦々と降り注ぎ、お湯がなみなみ張られた湯舟がキラキラと輝いています。地元の方らしいお爺さんが1名入浴していたものの、またもほぼ貸し切り。素晴らしい湯場を満喫します。東京でもほとんど毎日、朝風呂に入って1日をスタートさせる僕なので、至福の時間であります。ちなみにただいまの時刻は9時半を過ぎたところ。いつもなら出勤のために山の手線に乗っている時間です。
今回の旅行の直前に、クリエイティブディレクターから、とあるプロジェクトのアートディレクターになってほしいとオファーがありました。詳細を聞いてみると、アスリートと関わる企画とのこと。面白そう! アスリートを応援できる企画なんてすごく楽しそうだし、2020年には東京オリンピックもあるので、俄然やる気になって引き受けました。
その企画のことを、竹瓦温泉の湯舟に浸かりながら考えることにしました。「あの競技の選手とか、いやいや、人気のあの選手にこんなことしてもらったり~」と、妄想アイデアがとめどなく浮かんできます。休み明けに早速ミーティングがあるので、自分の意思や考えをまとめておかなきゃと、温泉での妄想TIMEは続くのでした。
温泉をあとにして、次は地元の喫茶店で広告キャンペーンのプランを考え、そのあと連載の執筆をすることにしました。でもまずはメニューの注文から。地元ならではという感じのモーニングメニューが並ぶ中、選んだのは「温泉珈琲」。温泉の地ですからね。お店のマスターが淹れてくれた温泉珈琲を飲みつつ、執筆作業をスタート。
地元の常連さんらしいお客たちとマスターのやり取りをBGMに、ペンを走らせていきます。耳に届く会話はもちろん九州の方言。方言はその土地らしさを感じさせる言葉。素敵で、微笑ましい。そんな思いを抱きながら、昼食の時間まで執筆に没頭したのでした。
別府は以前からARTが盛んな街。文化庁の助成による別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の実行委員会が中心になって、「ベップ・アート・マンス2016年」が開催されており、街中がまるで文化祭状態です。前回来たときには「Platform 04 SELECT BEPPU」がやっていて、ちょっと覗いてみたらスタッフさんと仲良くなってしまい、街常設のアート作品を紹介していただいたりもしました。
さて、喫茶店での執筆を終えて宿へ戻ってきました。今回お世話になる「山田別荘」は、実は前回の旅でも泊まらせていただきました。非常に歴史のある宿で、風情を感じさせる和洋折衷のモダンな別荘建築が素晴らしい。聞けば昭和5年に建てられたのだとか。伝統ある別府の温泉文化に、現代風のデザインや音楽が見事に融合しています。この宿の露天風呂を楽しみながら、ゆっくりアイデアを考えたり、執筆にいそしんだりしたいと思っていました。
この宿は日本テイストの旅館STYLEなためか、海外からのお客さんにも大人気のようです。昼食を済ませ、ロビーで原稿を書いていると、チェックインしたばかりの韓国人ファミリーが近くの席にやってきました。アニョハセヨ。しばらくロビーで執筆を続けたあと、宿の露天風呂でサッパリして、夜の別府へと繰り出しました。