以前、ある展覧会の搬入をしていたとき、後輩アーティストから「CUEさんは全然休憩をしませんね」と言われました。え? 休憩って何?
そういえば、資生堂のクリエイターとしてクリエイションをしてきたこの17年間、「休憩」を考えたことはありませんでした。さらにさかのぼって学生時代を振り返ってみても、やっぱり同じ。
今でもそうですが、毎日、できるだけ効率よく素敵にものごとを段取りするようにしています。それは、1日24時間という限られた時間内で、なるべく多くの「やりたいこと」を実現したいから。だから仕事はやりきってから帰宅します。プライベートでもやりたいことがたくさんあるので、そのための時間も確保する必要があるのです。
後輩に言われるまで、自分が休憩を考えずひたすら効率よくものごとを進めているということに気づきませんでした。でも思えば学生の頃から「スケジュール魔」で、何をするにもタイムスケジュールをきっちり組んで動いていました。そうしないと、たくさんやりたいクリエイションの1つ1つを質高く実現することができないし、観たいものが観られないし、会いたい人にも会えないからです。
もちろん気分転換や休憩は大切だと思いますが、自分の生活には「休憩」という概念があんまりなさそうだと感じています。もちろん一緒にクリエイションしている方々にまで、同じような行動様式を求めたりはしません。身体を休めに来ているこの温泉の地で連載のための文章を書くこと自体、結局休息ではないし……ただ、日常からの脱出をすることは、自分にとって気持ちの休憩ではあると思っています。
さて、この旅の出発は11月3日の木曜日。金曜日に有給休暇を取り、土日とつなげて4日間の旅にしました。
出発前夜――久しぶりに早めに仕事を終えて帰宅し、旅の準備を開始。なるべく効率よくコンパクトにと、荷物や洋服のコーディネートを考え、用意していきます。自宅から成田空港までのルートも調べ、準備万端であります。
飛行機のチケット、宿泊する宿はすでに予約してありますが、大分空港からの観光プランはノーアイデア。ケ・セラ・セラで行こう! と考えていました。数年前の九州旅行でふらっと別府に立ち寄ったことがあり、おぼろげながら町並みも覚えていたので大丈夫だろうと。今回の目的は温泉と執筆。締め切りに追われるのが嫌なので、原稿を少なくとも3本は書き貯めようと彼の地へ飛び立ったのであります。
そして迎えた当日。フライトは、成田空港第3ターミナルから出発するJetstar★です。この航空会社の飛行機に乗るのは今回が初めて。前々からTRYしてみたいと思っていたので、この機に乗ってみることにしました。
「飛行機はAM8時25分発なので、6時に起きて7時ピッタリの電車に乗れば余裕で間に合うだろう」そう考えていたのですが、家を出る直前に「あれ? 何か忘れてないか……?」と思ったのです。
そう、飛行機の場合、遅くとも出発の1時間前には空港に到着していなければならないはず。致命的な勘違いに気づいて、バッと家を飛び出し、タクシーを捕まえて空港へと向かいました。マズイ、マズイ、マズイ!
そうして空港に着いたのは8時少し前。でも第3ターミナルの正面にタクシーを横付けすることはできないらしく、可能なかぎり近くまで行ってもらって下車し、そこから送迎バスに飛び乗り、そして駆け下りて、Jetstar★のカウンターへ猛ダッシュ。
息せき切らしながら、カウンターのスタッフさんに尋ねます。「すみません……大分行きは?」「すでに搭乗手続きは締め切りまして、まもなく出発いたします」
ガ~ン。って、そりゃそうだよな。もう出発5分前だもの。あ~ん、やってしまった。タクシー代、飛行機代、宿泊代、すべてが消えてしまいました。
すると……。「お客様」ガックリ肩を落とす僕に、スタッフさんが声をかけてきました。「はい?」乱れた呼吸を整えながら答えると、こんな言葉が。「夕方の便に空席がございまして、お乗りできますが、どうなさいますか?」おお、マジで! 天使ですか!? 「は、はい! 乗ります!」LUCKY☆ は~、これで別府に行ける。ありがとうございます。