cueのププププレゼン力

第13回 2016.10.12

人生縫ってきたぜ♥LOVE表現

エキシビションは1パックで

僕は、いつもクリエイションのアイデアを複数ストックしてあります。今は難しそうでもいつか絶対形にしたいもの、近い将来TRYしたいもの、今すぐ実現したいもの、などなど。
そうした作品を発表するときに大切にしているのは、「時期」と「空間」。それらを意識しながら、展示コンセプトを考えるのが大好きです♥ その「時」、その「場」だからこそ作品がピタッとハマる、そんな展覧会をいつもイメージしています。

このようなポリシーがあるため、たとえ創ってみたい作品があっても「時期」「空間」が合わない場合には別の作品に変えるようにしています。「時」「場」とのマッチングによって、作品は美しくも醜くもなるのですから。

その他に僕が大切にしているものの1つは、ダイレクトメール(案内状)のクリエイションです。このアイテムはバカにできません。ダイレクトメールひとつで、お客様はイベントのすべてを感じ取るからです。非常にチャレンジングではありますが、お客様をどのように惹きつけるか、毎回とてもやりがいを感じています。

作品の展示方法を含めた「空間の演出」も、毎回楽しみなポイントです。1枚の絵画をどこに飾るか……それだけでセンスは表れてしまうし、そのスペースに展示する作品も変わって見えるはずです。会場をセッティングする際はいつも緊張しますが、“腕の見せどころ”でもあるため、大好きな工程でもあるのです。

すべては衝動♥から始まった

今回の展覧会『青山でヘンタイ』展。この“ヘンタイ”はネクタイの一種なのですが、どうしてそんなネクタイを制作することになったかというと……かつて、オリジナルストライプの巨大なテキスタイルを創ったことがあり、「それを活用して何か面白いものができないか?」という衝動に駆られたことがすべての始まりでした。

一般的に、女性はジュエリーやストールなど「首まわり」を着飾るアイテムが豊富です。一方、男性はといえば、ピシッとフォーマルなネクタイが主流。でも男性にだって、もっともっと自由なものがあっていい! そんな思いつきから気ままに帯状のものを創り始め、気づけば数百本に達していました。創るたびに自分で締めてみて、「あ! カッコいい! 可愛い!」なんて言ったものです。

そんなふうに始まった企画ですので、作品タイトルは僕にしては珍しく後づけです。
「ネクタイ風なんだけど、もっと遊べる、表裏もない、男女も関係ない、もっと自由! 自由に!」
ならば変わったタイ……ということで『ヘンタイ』と命名したというわけです。
また、すべてオリジナルファブリックでソーイングしていて、ディテール作業もかなり変態チックな行為なので、そのあたりのニュアンスもタイトルに込めました。他にもメンズモデルを上半身裸にして、“ヘンタイ”を締めてもらうビジュアルをクリエイションするなど、とにかく面白くて変わったアイデアを詰め込んだのです。

世界でヘンタイ

『青山でヘンタイ』――ファッションの地・青山で発表するということで、あえてタイトルに「青山」と入れました。このイベントでは、どなたかに象徴的なアイコンモデルとして出演してほしいと考えていました。“ヘンタイ”を自分なりに楽しめる、遊べる方にお願いしたいな、と。
またこの企画は、『青山でヘンタイ』からスタートし、『新橋でヘンタイ』『京都でヘンタイ』『パリでヘンタイ』など……リレー的に各地で実施していけたらとも考えています。

「そんな壮大なプランの第1歩である『青山』のアイコンモデルを、どなたにお願いしようか?」
そう思ったときにパッと浮かんだのが、THE青山を背負い、約20年の間ワッツの世界観を創り上げてきたギャルリーオーナー・川崎淳与さんでした。情熱とPower、そしてもちろんセンスと美意識を兼ね備えたお方です。
企画の意図をご説明すると、川崎さんは快諾してくださり、晴れてイベントが実現しました。この展覧会は「ヘンタイ」というタイトルもあってなかなかハードルが高いと予想していたのですが、さすがギャルリーワッツです。

人生、創っていくぜ!

さて、ここに挙げた一連の創作は、僕にとって仕事ではなくあくまで個人的な表現活動です。やりたいからやる。そんな衝動に突き動かされたものです。だから止まりません。チャレンジするたびに新しい自分が見つかり、新しいアイデアが生まれ、次のチャレンジにつながっていきます。もちろん、仕事へと広がっていくこともあります。

これまで、様々な場でクリエイションを発表してきました。それこそ数え切れないほど。でも、もっともっともっとTRYしていきたい。美術館や屋外、海外でも、作品を展示してみたい。今までの創作をずらりとまとめた作品集も創ってみたい。

日々精進。LOVE♥やらせてください。皆々さま、何とぞよろしくお願いいたします。
今日も縫います。縫い続けます。

 


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プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

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