悪気はまったくなかったのに、会話の中でふと口にした一言や話題が相手にとっては「地雷」だったらしく、怒らせてしまった。
そんな経験をしたことがある人はいませんか?
あるいは、地雷を踏んでしまったようだけど、相手が何も言ってくれないまま疎遠になったため、何が良くなかったのかいまだにわからない。そんな経験をしたことがある人はいませんか?
誰かと会話をしていて、相手の地雷を踏んでしまったことは、もちろん私にもあります。
特に、まだまだコミュニケーション能力が低かった若いころは、いろいろと失敗がありました。
ひそかに地雷を踏んでいたのに、私が気づいていないというケースも、きっとたくさんあるはずです。
今でもたまにやってしまうのが、地雷というほどではないのですが、交際相手がいた人に「彼氏(もしくは彼女)とは仲良くやってる?」と訊いたところ、すでに別れていた……というケース。訊く前から、別れている可能性もある程度念頭には入れているのですが、実際に「もう別れた」と聞くと、やはりドギマギしてしまい、「まあ、人生いろいろあるよね」などと適当なことを言いつつ、気まずい空気を必死で振り払います。
話しやすい人になるためには、もちろん、会話の中にひそむ地雷に気づき、回避することが必要ですが、これは非常に難しい問題です。
「何を不快に思うか」は、人によってまったく異なるからです。
「地雷は人の数だけある」と言ってもいいかもしれません。
特に容姿や年齢、家庭環境、出身地、人種、学歴、仕事、政治、宗教、恋愛、セクシュアリティなどについて話すとき、「自分はこういうことを言われても気にならないから、相手もきっと気にしないだろう」「自分はこういう話題をふられても大丈夫だから、相手も大丈夫だろう」と考えるのは非常に危険です。
自分が言われたくない言葉、触れられたくない話題なら、口にする前に「あ、これは言わないほうがいいかな」という思いが頭をよぎることもあるでしょう。
しかし、自分がまったく平気なこと、気にしていないことだからこそ、人は何気なく、無邪気に、相手の地雷を踏んでしまうのです。
地雷のほとんどは、踏んでしまったほうにとっては「え? 今のが地雷だったの?」「え? そんなことで怒るの?」と思ってしまうようなものでしょう。
あなたの「大丈夫」の中に、誰かの地雷がひそんでいるのです。
どんな人、どんなケースにも確実にあてはまる地雷の回避法は、残念ながらありませんが、ここでは、私なりに考えた(もしくはふだんから気をつけている)地雷の避け方をお伝えしたいと思います。
まず、何よりも大事なのは、話している相手へのリスペクトを忘れないことです。
相手のことを軽んじたり侮ったりしていると、その気持ちは話し方や言葉に表れ、相手を不快な気持ちにさせます。
その時点ですでに地雷に軽く足をのせているようなものであり、もし相手が言われたくない言葉、触れられたく内容を口にすれば、たちまち火柱が上がるでしょう。
相手を大事に思う気持ちがあれば、「これを言ったら相手は不快になるかもしれない」「この話題には触れられたくないかもしれない」といった想像力も、多少は働きやすくなるかもしれません。
次に大事なのが、会話をしながら、常に相手の気配を察知すること。
地雷を踏んだときは、たとえ相手があからさまに怒ったりしなくても、必ず顔色や表情、放つ空気が変わります。
そうしたら、以後、その話題を続けたり膨らませたりしてはいけません。
何か別の話題を思いついたふりをする、「あれ? 自分、何を話そうとしたんだろう」ととぼけるなどして、可及的速やかに撤収しましょう。
ただ、「常に相手の気配を察知する」といっても、必要以上に神経質になることはありません。
それでは、自分も相手も疲れてしまい、会話を楽しめなくなります。
あくまでもリラックスし(た空気を出し)つつ、相手を観察するようにしましょう。
たとえるなら、やわらかく動く繊毛で、相手が放つ思いや空気を受け止めるようなイメージです。
会話の内容にも注意が必要です。
相手の容姿や年齢、家庭環境、出身地、人種、学歴、仕事、恋愛、セクシュアリティ、宗教などについてネガティブなコメントをするのはもちろんNGですが、これらに関しては、良かれと思って言った一言が地雷となる可能性も高いため、特に関係が深まるまでは、慎重にコメントする必要があります。
もし相手から、「実は自分は~なんだ」と打ち明けられたら、「ああ、そうなんだ」と、まずはそのまま受け止めるのがいいかもしれません。
何かに悩んでいる人に対し、求められたわけでもないのにアドバイスをするのも、できるだけ控えましょう。
アドバイスをするとき、人はどうしても上から目線になりがちですし、ドヤ顔で語るアドバイスが陳腐なもの、相手がとっくに実践していることだったりすることもよくあります。
望まれないアドバイスは地雷の宝庫です。
悩みを打ち明けられたら、やはりとにかく聞き、そのまま受け止めることに徹しましょう。