ほかに心がけていただきたいのが、「世の中にはいろいろな人がいる」と心で理解することです。
そういわれると、多くの方は「そんなのわかってる」と思うでしょう。
でも、頭でわかるのと心でわかるのとではやはり異なるのです。
先ほど「あなたの大丈夫こそ、誰かの地雷」と書きましたが、同様に、あなたが「当たり前」だと思っていることの中は、あなたにとって当たり前なだけで、ほかの人にとっては当たり前じゃないこともたくさんあります。
たとえば、最近ではだいぶ、レズビアンやゲイ、トランジェンダーなどに関する理解は進んできたように感じるのですが、世の中には「他者に恋愛感情や性的欲求などを抱きにくい人」もいらっしゃいます。
私は、自分自身がゲイで、「世の中には同性が好きな人も異性が好きな人も、同性・異性両方を好きな人もいる」というのは昔からわかっていたため、セクシュアリティがわからない相手とプライベートに関する話をするときには、「彼氏はいるの?」「彼女はいるの?」ではなく、「好きな人はいるの?」「つきあっている人はいるの?」と訊くようにしていました。
しかし、「他者に恋愛感情や性的欲求などを抱きにくい人がいる」と知ったのは、ずいぶん後になってからのことでした。
今は、セクシュアリティがわからない相手には、不用意にそうした質問をしないようにしていますが、かつて私が「彼女いるの?」と訊かれるたびに息苦しい思いをしたように、もしかしたら私が「好きな人はいるの?」と訊いた相手の中に、息苦しい思いをした人がいたかもしれないと、ときどきふと考えることがあります。
もちろん、知らないうちは仕方がありませんが、もし「世の中には、こういう人がいる」という情報を得たときには、それをきちんとインプットし、「もしかしたら目の前にいる人が、そういう人なのかもしれない」という思いを、心の片隅に入れておくことをおすすめします。
相手へのリスペクトを忘れないこと。
リラックスして会話をしつつ、常に相手の気配を察すること。
「世の中にはいろいろな人がいる」と心で理解すること。
これらを心がけるだけで、あなたの言葉が変わり、話し方や会話の内容が変わり、地雷を踏んだり、被害を大きくしたりすることがかなり少なくなるのではないかと思います。しかし、特に「嫌い」「ダメ」など、ネガティブだとされているような事柄を表すときは、できるだけ強く直接的な言葉や表現を使わず、優しくやわらかい言葉や表現を使うことも大事です。
言葉の選び方、言い方ひとつで、相手に与える印象は大きく変わります。
たとえば、「嫌い」と言いたいときに「あまり好きじゃない」と言ったり、「ダメ」と言いたいときに「あまり良くない」と言ったりすると、少し優しい印象になります。
ちょっとふくよかな人のことを表現するときも、「デブ」「太っている」などというよりも、「ちょっと大柄な」「ちょっと肉づきのいい」というと、やわらかい印象になるのではないでしょうか(そもそも、容姿についてコメントすること自体あまり好ましくないし、シチュエーションによっては、かえって嫌味に聞こえるかもしれませんが)。
そうすれば、相手はあなたに対し、「この人は気を遣って話す人なんだな」という印象を抱き、仮にあなたが、相手にとって本当なら地雷となるようなことを言ってしまったとしても、相手が地雷を踏まれたことに気づかなかったり、あまり不快な気持ちにならなかったり、大目に見てくれたりする可能性が高くなります。
これはもちろん、その場にいない人の話をするときでも同様です。
むしろ、その場にいない人の話をするときこそ気をつけるべきかもしれません。
もしあなたが、その場にいない人のことを「あのデブ」などと言っていたら、その場にいる、「自分はふくよかなほうかもしれない」と思っている人は、「この人は、自分がいない場所では、自分のことをこんなふうに話しているのかもしれない」と感じてしまうからです。
相手に直接言った言葉でなくても、相手の地雷を踏んでしまうことはあるのです。
どうしても誰かを攻撃したいとき、ストレスがたまり、周りの印象など気にせず、思いきり誰かの悪口を言いたいとき、直接的な言葉を使わないと相手に伝わらないと感じたときなどは別ですが、そうでない場合は、できるだけ優しくやわらかい言葉や表現を使うようにしてみましょう。
もしかしたらみなさんの中には「そんなことを言われても、どう優しい表現に言い換えたらいいかわからない」と思う人もいるかもしれません。
時間のあるときに本や漫画を読んだり辞書を眺めたりして語彙を増やしたり、いろいろな事柄について、「どうすれば優しい表現になるだろう」と考えたりするのももちろん効果的ですが、もし身のまわりに、「この人の話し方は優しいな」と感じる人がいれば、その人がふだん、どのような言葉を使い、どのような話し方をしているかを観察し、真似してみましょう。
以上、今回は地雷の避け方について、私なりの考えをいろいろと述べてきましたが、ある程度こうしたことを配慮したうえで、それでも地雷を踏んでしまったときは、反省し今後に生かしつつ、あまり自分を責めすぎないようにしましょう。
また、世の中には、繊細で傷つきやすく、会話の至るところに地雷がひそんでいる人もいらっしゃいます。
あまりにも地雷が多い人、あなたなりに配慮しているのに地雷を踏んでしまうことが多い相手など、「話していて疲れる」と感じる人とは、「あまり立ち入った話はしない」「適度な距離感でつきあうようにする」といった具合に、関係性自体を見直したほうがいいかもしれません。