これから数回にわたり、日常会話で起こりがちな「困ったシチュエーション」において、どうすれば「話しやすい人」として対処することができるか、私なりの考えをお伝えしようと思います。
最初にお話したいのが、「周りがその場にいない人の悪口で盛り上がっているとき、どうすればいいか」。
その場にいない人の悪口で盛り上がること、しばしばありますよね。
愛が感じられる悪口(?)もあれば、シャレにならないレベルの悪口が飛び交うこともありますが、いずれにせよ、そこでどう振る舞うかは重要です。
たとえば、あなたが悪口を言うのが好きで、かつ悪口を言われている人(仮にAさんとします)のことが好きでなかったりすると、つい一緒に悪口を言いたくなるかもしれません。
しかし、あまり盛り上がりすぎてしまうと、悪口を言っている仲間からさえ、「あの人、ふだんはAさんと仲良さそうにしているのに、陰ではあんなに悪口言うんだ……。私も陰で何言われてるかわからないから、気をつけなきゃ」などと思われてしまう危険性があります。
あるいは、ほかの人の悪口に同意したりうなずいたりしただけなのに、「あの人、Aさんのこと、こんな風に言っていたよ」などと告げ口され、すべての悪口の責任を負わされてしまう……などということも起こるかもしれません。
一方で、あなたが悪口を言うのが好きじゃない、Aさんのことを別に嫌いではない、といった理由から、悪口に加わりたくないと考え、「悪口はやめたほうがいいんじゃないかなあ」「Aさん、そんな悪い人じゃないと思う」など、その場の空気を壊すようなことを言ったとします。
その場合、周りの人から「自分だけきれいぶっている」「本心を見せず、何を考えているかわからない」などと思われてしまう可能性があります。
では、周りが悪口で盛り上がっていたら、どうするべきなのか。
一番無難なのは、聞こえないふりをしてスルーすることですが、一対一の会話の場合は通用しません。
そこでまず考えられるのは、「『へえ』『ほう』『そうなんだ?』など、『それは、私にとっては、今まで見たことも聞いたことも考えたこともない新情報です』というテイで、ひたすら当たり障りのない相槌をうつ」という方法。
これなら、ギリギリ同意したことにはならないし、話し手の気分を損ねることもないでしょう。
とはいえ、相槌を打つだけでも、相手が「この人、ちゃんと聞いてくれている」と感じ、さらに悪口が盛り上がってしまう可能性があります。
また、「あなたはどう思うのか?」と水を向けられたら、返す言葉に困ってしまうこともあるかもしれません。
そんなときに試していただきたいのが、「話題を変える」という方法。
たとえば、相手(仮にBさんとします)が「Aさんって、全然仕事しないんだよね」と言ったら、「いやでもBさん、よくフォローしてるよね。見ててすごいし偉いなと思う」といった具合に、相手を褒める方向に話を持って行くのも手です。
悪口で盛り上がる人は、「自分の大変さを知ってほしい」と考えている可能性もあるからです。
さりげなく話題を変えるのが難しい場合は、多少強引かもしれませんが、悪口が途切れたときにでも、「あ、全然関係ないけど」と前置きしつつ、相手の好きそうなテレビ番組や相手が推しているタレントの話題を出してみたり、自分が困っていることを相談してみたりするのもいいかもしれません。
相手が、悪口と同等もしくはそれ以上に興味を持ちそうな話題、相手がスルーしづらい話題(人は何かを相談されると、たいてい「相手は悩んでいるのだから、ちゃんと答えなければ」という気持ちになります)をふるのがポイントです。
それを繰り返しているうちに、もしかしたら「あの人は、悪口になると話題を変える」「あの人、悪口あまり好きじゃなさそう」と気づかれてしまうかもしれませんが、そうなれば、気の進まない悪口大会に参加させられる機会も減るはずなので、むしろラッキーだと考えましょう。
ちなみに私は、悪口を聞くのは嫌いではありません。
もちろん程度にもよりますが、悪口というのは、とても人間らしい行為だと思うからです。
なので、周りが悪口で盛り上がっているときは、相槌をうちながら、ひたすら聞き役に徹することが多いのですが、同意や意見を求められた場合は、(悪口を言われている人の耳に入ることも覚悟のうえで)ときに一緒に悪口を言うこともあれば、「でもあの人、こういういいところもあるけどね」と、フォローのようなものを入れることもあります。