どうしてもそりが合わない家族。話していて、ついイライラしたり不愉快になってしまったりする友人・知人。笑えない冗談を連発し、ときには無理難題を押しつけてくる上司や同僚……。
できれば話したくないけれど、いろいろなしがらみがあって、そうもいかない。
できれば塩対応して遠ざけたいけれど、嫌われるわけにもいかない。
おそらくみなさんの中にも、そうした悩みを抱えている人がいらっしゃるのではないかと思います。
「苦手な人」と一口に言っても、怖い人、うざい人、なんとなく嫌いな人、いろいろなケースがあると思いますが、いずれにせよ、苦手な人と話さなければならないとき、まず試していただきたいのが、「話す前に、目に見えないバリアを張る」という方法です。
私は、ある女性に取材をした際に知ったのですが、もともとは、バルバラ・ベルクハンさんの著書『アタマにくる一言へのとっさの対応術』(瀬野文教訳、草思社)に書かれている方法だそうです。
やり方は非常に簡単。
苦手だな、と思う人が近づいてきたり、話しかけてきたりしたとき、あるいはこちらから苦手な人に話しかけなければならないときに、自分の全身が、何か(柔らかい繭や光、あるいは硬いシャッターなど、好きなもの、イメージしやすいものでかまいません)で守られている様子を頭に思い浮かべるだけです。
一度しっかりとイメージできれば、次からは「バリア」と唱えるだけで、瞬間的にバリアをはることができます。
頭の中でしっかりイメージする(絵として思い浮かべる)ことができれば、「自分と相手との間に、目に見えないバリアがあり、自分の心と体が守られている」と感じられるようになり、心が落ち着きます。
そうすれば、苦手な相手から嫌なこと、困ったことを言われても、ある程度落ち着いて、余裕をもって対処できるはずです。
余裕をもって接しているうちに、相手のいいところに気づき、徐々に苦手意識が薄まっていくこともあるかもしれませんし、目に見えないバリアを相手が感じて、必要以上に近寄って来なくなる可能性もあります。
見えないバリアで自分を守るという方法は、苦手な相手と直接対面するときだけでなく、電話やオンラインなどで話すとき、苦手な人から届いたメールを読むときにも有効なので、良かったら試してみてください。
私自身、このやり方を知ってから、「ちょっと苦手だな」と感じる人と話すとき、相手の言動にとげとげしたものを感じるとき、緊張するような場に行き、話さなければならないときなどに、目に見えないバリアを張るようにしているのですが、それだけで心の中に安心感が生まれ、気持ちを落ち着かせることができます。
苦手な人と接する際、もし可能であれば試していただきたいのが、「自分から声をかける」という方法です。
「先手必勝」「攻撃は最大の防御」という言葉がありますが、あなたが相手に苦手意識をもち、避けていると、あなたと相手が接するときは基本的に「相手のほうから近づいてくる」「相手のほうから話しかけてくる」という状況になります。
つまり、必ず相手のペースで会話やコミュニケーションが始まり、あなたは応戦するしかありません。
それでは、いつまでも相手に合わせた対応をするしかなく、苦手意識はますます高まっていきます。
しかし、あなたから話しかければ、少なくとも最初はあなたのペースで会話を進めることができます。
ちなみに私自身、ときどきこの「先手必勝」法を使うことがあるのですが、苦手な人に話しかけられたときよりも、自分から先に話しかけたときのほうが、気持ちに余裕をもって対応できる気がします。
もちろん、何の用もないのに、わざわざ話しかける必要はありませんが、「相手が近づいてきたな」「相手が話しかけてきそうだな」と思ったら、自分から話しかけてみましょう。
ほかに、この連載の第5回でご紹介した「深呼吸をする」、第7回でご紹介した「口角を上げる」なども、苦手な人と話さなければならないときに役に立つかもしれません。
苦手な人と話していると、どうしても心身が緊張したり、相手のちょっとした言葉にイライラしたり動揺したりしますし、「この人のことが苦手だ」という思いが、表情に出てしまうこともあります。
でもそんなとき、何度か深呼吸をすれば、リラックスして会話ができるようになり、イライラや動揺も落ち着きます。
意識して口角を上げることで、相手には「この人は自分に対して敵意を持っていない」と感じてもらえますし(相手があなたに対して怒っている場合は、逆にもっと怒らせてしまいかねないので、口角を上げるのはやめましょう)、脳が騙されて、あなた自身の中の「この人と話すの嫌だなあ」という気持ちも、少しやわらぐかもしれません。