フツーの人にとっては不利なことばかりだが、わたしはそう長く不利な状況が続くとは思っていない。出版界が斜陽であることは紛れもない事実であるため、出版物がこの先に激増することはないだろう。フツーの人にとって、作家デビューのチャンスが急拡大することもない。しかし、それでもチャンスは巡ってくると考えている。
なぜなら、現在の大物・有名人のネーム頼みという状況は、そう長くは続かないからだ。同じ人が同じことを書いていれば、そのうち読者にあきられる。それが道理というものだ。いまの出版界は、あまりにもひと握りの大物・有名人に頼りすぎている。
ビジネス書に限っていえば、大物・有名人の持ち歌、十八番は大体ひとつだ。新しいジャンルを開拓するという作家は、稀(まれ)中の稀である。社会の状況が変わってさえも、大物・有名人の主張は変わらないことが多い。
それでも、出版社は行列をつくって次々とオフォア―してくる。いまがピークの作家本人にとってみれば、なんとも住み心地のよい環境であろう。しかし、盛者必衰は世の習いである。いまがピークの大物・有名人は、日が西に傾くようにして、やがて沈むことになる。それは時間の問題といってよい。大物・有名人たちが消えた後にだれが来るか。フツーの人の作家デビューは、そう遠い時期ではないとわたしは思っている。