前回は、強いチームには独自に育まれた「文化」があるという話をしました。今回はもうひとつ、ヤクルトのチーム文化の特徴でもある「リーダー」について触れたいと思います。
チームでは通常、メンバーを率いるリーダーという存在を明確に据えるものです。しかし代々ヤクルトでは、実はリーダーと言われる役割の選手を特定しないことの方が多いという変わった特徴があります。
そのため、例えば誰かをリーダーに指名して、ミーティングなどの場面を仕切ってもらうこともありませんでした。詳しくは後述しますが、こちらから「指名」する必要がなかったからです。
私も監督として、特定の選手をリーダーにしようとは思っておらず、リーダー育成といったこともしてきませんでした。それは、球団の文化が、自然発生的にリーダーのような役割をこなす選手を生んできたからだと思っています。
もう少し具体的に言うと、特定のリーダーを決めつけなくとも、いつの間にかリーダー的な存在感のある選手が生まれ、チームとして機能していた、ということです。
そのようにして生まれたリーダーの特徴は、当然といえば当然ですが、他の選手からの「信頼感」が厚いということでしょう。
そしてその信頼感は、誰に対しても同じような態度で接することのできる人物に集まっているように思います。
野球チームというのは実に多様な人たちの集まりで、高卒ルーキーから大ベテラン、社会人野球からやってきた人から外国人選手までいます。そんな中で誰とでも変わらない態度で接することで、自然と、信頼感を築き上げていくのだと思います。