真中流マネジメント

真のリーダーは自然に現れる

2016.08.12 公式 真中流マネジメント 第10回

首脳陣のリーダーシップ

キャンプ中にみっちり伝える「野村流」コミュニケーション
監督とコーチの“絶妙な”役割分担

チームを引っ張るリーダーとはいえ、それはあくまで選手の話です。チーム全体を見るのは、やはり監督やコーチなどの首脳陣であると私は思っています。

私が現役の頃は、古田さんや池山さん、宮本慎也など個性派揃いであり、みながリーダー格のようなものでした。そのため、野村監督をはじめとしたコーチ陣は、あれこれと何でも指示したりはしませんでしたが、ここぞというところでやはりリーダーシップを発揮されていたと思います。

野村監督の統率力がフルで発揮されるのは、実はシーズン中というよりも、チーム作りの最初の段階、すなわち、春季キャンプ期間中でした。

キャンプ中、野村監督は選手たちと毎日ミーティングを行います。そこで、野球に関してはもとより、「一人の人間としてどうあるべきか」といった話題を中心に、みっちり語って聞かせてくれるんです。

私が監督からいつも言われていたのは、「真中満-野球=ゼロになるな」ということ。つまり、野球以外のことにもしっかり触れて、外の世界を見ることのできる人間になれるかどうかを、常に問われていたわけです。

毎日1時間、キャンプ期間中で合計20時間超。そういった話を通じて監督の考えをじっくりとチームに浸透させていくのです。それだけ聞いていると、監督が何を考えているのか、何を言いたいのか、私たち選手にどうなってほしいのか、そういったことが分かるようになります。

そうすると、シーズン中はそこまで監督とコミュニケーションをとらずとも、不思議と意思疎通できるようになるんですね。それはおそらく、キャンプ期間中のコミュニケーションを通じて育まれた信頼関係によるものだと思います。反対にシーズン中は、野村監督の意図を汲んだコーチ陣が統率力を発揮します。そういう役割分担が自然と出来ていました。

これが、野村流のリーダーシップなのでしょうね。

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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