私も野村監督の影響からか、シーズン中にチーム全体を集めて特別な話をすることはほとんどありません。ただ少し異なるのは、局面局面においては、監督としてチームを鼓舞すべく皆に気持ちを伝えるようにしている点です。昨シーズンでいえば、混戦だった9月がまさにその場面でした。
当時、チームは優勝争いの真っ只中で、2ゲーム差の中に4チームがひしめくような展開でした。まさに1つの試合も負けられない状況です。選手たちを取り巻くプレッシャーは並み大抵のものではなかったことでしょう。
そんな中で私が彼らに伝えたかったのは、「目の前の勝敗はともかく、自分たちはまず『優勝するのにふさわしいチーム』であろう」ということでした。
つまり、他のチームが「あいつらだったら、優勝してもおかしくない、何も不思議じゃない」と思わず認めてしまうような、胸を張れるチームでいようじゃないか、ということですね。
振り返ってみると昨年のヤクルトは、まさに胸を張っていいほどの練習を各選手が自主的に行なっていましたし、チームの士気もこれ以上ないほど充実していたと思います。
「我々はまさに優勝するにふさわしいチームである」。このメッセージを、重要な局面で選手たちにきちんと伝えることで、彼らには目の前の勝敗を超えて、「優勝するにふさわしいチームとは何か」ということを自然と考え、行動していくようになって欲しかったんです。
昨シーズン、最後の最後に我々が優勝争いから抜け出したのは、この意識があったからかもしれませんね。
取材協力:高森勇旗