「同期の○○さんは、もうこんなこともできるのよ! それに比べて石田さんは!」と、入社当時は上司や先輩によく言われていたものです。できのいい新入社員でなかった私は、肩身の狭い思いをしながら仕事をしていました。とはいえ、「まずい! 頑張らなくては!」と思ってやっていたものです。
ところが、今の若手に「○○さんはこうなのよ!」と言っても、ほとんど響きません。理由は、「人と比べることに意味がない」と感じているからです。「他人は他人、自分は自分」と、自己完結しているからです。
ある一部上場企業の電気メーカーでは、売上げアップのために成果主義を徹底したそうですが、逆に若手の退職者が増えたと言っていました。
無理に競争させようとしても、逆効果になります。上司は、他者と比較することで若手に「もっと頑張ってほしい」と思っているのですが、若手からしたら、「競争相手がそんなに優れているなら、その方にやってもらえばいい」と考えます。
また比較されることは、自分に対してダメ出しをされているともとれるので、反感を持つようになります。その結果、最悪退職までいってしまうというわけです。
個性重視の教育を受けてきた若手にとっては、競争ではなく自分の目標達成が重要であり、他人は関係ありません。
20世紀は、人も仕事も競争原理で評価され、それが効果をあげた時代でした。その当時は、いい大学に入って、いい会社に入ることがすべてであり、それさえ叶えば人生は成功したも同然という考え方が主流でした。
受験は戦争であり、就職活動をすれば企業の青田買いに上手く乗り、誰よりも早く「いい会社」に入ることが目的となっていました。
つまり
「他者に勝つこと」=「幸せな人生を手に入れること」
だったのです。