今どきの若手は何を考えているのでしょうか。これを理解していないと、若手とのコミュニケーションはどうしても難しいものになります。
まずは、今どきの若手の傾向についてざっくりと捉えてみましょう。とはいえ、ひと口に若手といってもいろいろな方がいます。
したがって、ここでは一つの傾向として見ていただき、理解を深めてもらいたいと思います。
すべての若手がこうだと一概に決めつけているわけではないことを、最初にお伝えしておきます。若手の傾向を理解することによって、自身の関わり方のヒントを見つけてもらえればと思います。
ビジネスの場面では、指示をしても思うように動いてくれない部下がいます。
それに対して、
「なぜ、仕事を任せてもやる気が見えないのだろう?」
「積極性がもっと欲しいな」
「分からないときは、もっと聞いて欲しい」
などと、歯がゆい気持ちになっている上司やリーダーはたくさんいます。
「なぜ、若手はそうなのか?」と頭を悩ませていないでしょうか。
その理由は簡単です。それは、「失敗したくない」からです。
「誰だって失敗したくないに決まっているじゃないか。上司だって同じだよ」という声が聞こえてきそうです。確かに皆同じなのですが、若手にとっては、「失敗」の意味が違うのです。
ある一部上場企業で若手に対する意識調査をしたときのことです。「失敗したくない理由としてどんなことがあるか」という質問に対して、「ケチをつけられるのが怖い」という答えが返ってきたそうです。
この「怖い」という言葉は、若手を理解するうえでとても大事なキーワードです。
若手にとって「失敗」とは「怖い」ものなのです。
それはなぜかというと、
・自分を否定される
・自分の居場所を失う
と考えているからです。
「自分を否定される」というのは、先ほどの「ケチをつけられる」ということになります。失敗を理由に「自分のやってきたこと、すべてが否定されている」と感じることです。
また「居場所を失う」というのは、「会社の中での居場所」を失うということです。「否定」され「居場所を失う」のが「怖い」のです。
この感覚は、若手が育ってきた20年の環境を考えるとその理由が分かります。
まず彼らの学生時代、学校や家庭で自分を否定されることはほとんどありませんでした。いろいろと叱られた経験はあっても、最後には必ずフォローが入る環境でした。何をしても最後は常に許される環境で育ったのです。
しかし、社会ではそういった甘えは許されません。失敗は失敗。反論ができない環境となります。そこで「失敗」するということは、自分の非力さや、不注意を明らかにするものでしかありません。
失敗の事実を指摘されるということは、「ダメなやつ」と自分自身を否定されているように感じてしまうのです。
彼らにとって社会に出るということは、初めて自分を否定される可能性のある環境に放り込まれたということなのです。なので、なんとしても「失敗」を避けたいと感じることは、自分自身を守るという意味で自然な本能と言えます。
また、居場所という視点から見ると、家庭以外では、学校が彼らにとっての大事な居場所でした。学校とは、家庭とともに、彼らにとって人生の半分を過ごした場所です。学校は勉強する場であると同時に、「友人とのおしゃべり」を通した情報共有の場でした。
スマホを持った子どもは、年々増えています。情報化社会が進むことにより、スマホを持たなければ情報のやりとりができないも同然になるので、子供たちにとっては死活問題になります。
大事なのは「共感しあえる仲間がいる」ことを、確認することです。これができないというのは、「自分の居場所を失う」ことを意味します。
また、お互いが心地よい距離感を保つことが、円滑な人間関係を維持するポイントであることを子どもたちでさえ理解しています。それが崩されると、一気に関係は悪化します。そして、その悪化がイジメに繋がることも多々あります。
よい関係を維持するためには、「失敗」が一番避けなければならないことだったのです。
そう、「失敗」してしまうと自分の環境が決定的に悪化します。クラスメイトの中で自分の立場が低くなり、いじめられる可能性が高まるのです。
いじめの怖さを知っている彼らは、立場が低くなることを怖れ、なんとしてでも安全な居場所を守りたいと考えるのです。