ある日のこと、私は有名な講師の先生との打ち合わせのために、オフィスにうかがいました。
すると、先生は私の前に別の人と打ち合わせをしているようで、入り口のソファーで時間まで待っていました。
「お待たせしました」
と声をかけられて、テーブルについて30分の打ち合わせをしました。
打合せの間ずっとパワフルで、ご機嫌なノリで打ち合わせは終わりました。
そして、打合せを終えて入り口に戻ってみると、なんともう次の打ち合わせのお客さまが来ていました。
後で聞いてみると、お忙しい先生なので、打ち合わせはぶっ続けで、まとめて4人も5人も一度にしているのです。
それぐらい効率的に働くことで、時間をやりくりしているわけです。
「そうか! 売れている人はここまで効率化しているのか!」
と感動した覚えがあります。
成功している人は、あらゆることを効率的に進めています。
・たくさんの店舗を展開して売上をあげている。
・社員が勝手に働いてくれている。
・メルマガ1通で数百万円を売り上げる。
・ほったらかしで商品が売れる。
・1つのコンテンツを何度も使いまわしている。
・たくさんのお客さまを一度に相手にしている。
・お客さまや取引先がわざわざ自分から来てくれる。
これは多くの人が憧れる状況ではないでしょうか。
もっと効率的に稼ぎたいと多くの人が考えていると思います。
しかし、ここでお伝えしたいのは「効率化しよう」ということではありません。
ここで言いたいのは逆です。
「最初は効率を求めない方がいい」
ということです。
これが、今回のテーマです。
効率のいい経営を目指すのは素晴らしいことです。
生産性を上げることは経営者の責務ですので。
しかし、最初から効率を求めることはおすすめしません。
例えば、楽器の練習を例にすると分かりやすいかもしれません。
私はクラリネットを習っていますが、新しい曲を練習するときには、まず、テンポを落としてゆっくりと練習します。
当然のことですが、最初から速いテンポで練習していると、指がぜんぜん追いつかないからです。最初から速いスピードで何度やってもうまくならないのです。
ダンスの練習もそうです。
最初は1つ1つの動きを確認しながら、ゆっくりと練習していきます。そして、ひと通り踊れるようになったら、だんだんとスピードを上げて行くわけです。
もちろん、これはビジネスでも同じです。
1つずつの仕事を丁寧にやっていき、ひと通りの仕事に慣れてから、最後にスピードをあげるのが最もスムーズです。
最初から効率を求めてスピードを出しても、サービスの品質は低いし、仕事の流れは場当たり的だし、お客さまにも満足してもらえません。
リピーターは来ないし、クレームも増えて、余計に手間がかかって、結局は非効率になってしまいます。
ですので、最初のうちは効率を忘れて、丁寧にその仕事に取り組むことが必要です。
実は、効率を考えるのは一番最後なのです。
私も、今は打ち合わせをなるべくまとめてやるようになりましたし、ネットで済ませることも増えてきました。
しかし、最初はそうはいきません。
時間がかかっても自分が出かけて行って、取引先やお客さまの指定する場所まで行っていました。
対面してお話することで、相手の表情や口調も分かりますので、押さえておくべき重要なポイントがしっかりと理解できます。
また、今はセミナーをやるときは、準備はあまりする必要はありません。
スライドもつくらずに、ホワイトボードを使って、その場で対応することもできます。
しかし、最初はどうしたかというと、スライドは当然、話す内容もすべて文章にしていました。話すことを一字一句書いていて、冗談を言う場所も同じでした。
2時間のセミナーでも、準備に1か月も2か月もかけていました。
それをしていたおかげで、セミナーのコツが分かってきて、今では準備がほとんどいらなくなったわけです。
そして販売の際にも、今では広告を使ってセミナーに数百人も集客することができています。しかし、そのためには広告のキャッチコピーを何度も何度も練って、反応がいい広告文になるように何年も試行錯誤しました。
最初に丁寧に1つずつやるからこそ、後から効率化ができるのです。
・たくさんの店舗を展開したいなら、最初は1つの店舗で売上があがるように研究し、オペレーションを磨く。
・社員が勝手に働いてくれるようになるには、じっくりと社員とコミュニケーションを取り、時間をかけて信頼関係を築く。
・メルマガ1通で数百万円を売り上げたいなら、丁寧に配信をしていって、ファンを増やす。
・ほったらかしで商品を売りたいなら、ほったらかしで売れるようなクオリティのWEBサイトや、チラシを丁寧につくる。
・1つのコンテンツを使いまわししたいなら、いくつもコンテンツをつくってみて、その中でいいものを抽出していく。
・たくさんのお客さまを一度に相手にしたいなら、最初は1人ずつ丁寧に対応していき、お客さまの対応のツボを見極める。
・お客さまや取引先がわざわざ自分から来てくれるようになるには、最初は自分から客先に出向いていき、実績をつくっていく。
このように、最初は採算度外視、効率度外視で丁寧に仕事をやり遂げるからこそ、最終的に効率的に仕事を行うことができるのです。