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王国の次代の守護者と期待されている光の御子アネットには、姉のリエラがいる。リエラはそれなりに優秀であるが、光の御子である彼女に比して、力も弱く、落ちこぼれと見做されていた。
しかしアネットが十六歳の誕生日、パーティーのさなかにリエラは魔王の力に目覚めた。
魔性たちを召喚し、瞬くうちに王国を制圧するリエラ。
王国の主だった者はそれでも難を逃れたが、光の御子であるアネットは囚えられた。
豪壮な部屋の中、大きな鳥籠のような檻に彼女は入れられ――
そうしてリエラはアネットに宣言するのである。
「今日からあなたのご飯は、これよ」
床に置かれたのは麦粥の皿と、それに差し込まれた匙。
妖艶に笑うリエラは言った。
「だって、あなたは私のペットだもの」
それは、運命に弄ばれた、二人の姉妹の愛と憎しみの物語。
文字数 9,426
最終更新日 2022.11.28
登録日 2021.05.19
播磨明石に在住する宮本伊織は、小笠原忠政の近習を勤める若き英才である。しかし彼には頭を悩ませる身内がいた。その人は宮本武蔵。恐れ多くも主君に斡旋されて彼の養父となってくれた高名な武士にして剣豪である。そして変人でもあった。
武蔵の奇矯な言動行動に日々悩まされている伊織であるが、あるときに敵討ちと養父を狙う女が訪ねてきて…。
その日から、宮本家の周辺には不穏な影が見え隠れするようになっていくのだが――
文字数 108,093
最終更新日 2022.05.31
登録日 2022.05.30
イラストレーターの田上さんは、そこそこ人気がある書き手だ。
しかし人気があるからといって調子にのって仕事を引き受けていたため、完全にスケジュールを破綻させてしまった。
これではダメだと、秘書を雇うことにしたのだが、やってきたのは以外な人物だった…?
文字数 2,663
最終更新日 2021.12.31
登録日 2021.12.31
元禄の頃の尾張、柳生家の次代当主である柳生厳延(としのぶ)は、正月の稽古始に登城した折り、見るからに只者ではない老人とすれ違う。いかにも剣の達人らしき様子に、丸に三つ柏の家紋を入れた裃……そして以前にも一度この老人を見たことがあったことを思い出し、厳延は追いかけて話を聞く。
その老人こそは嶋清秀。剣聖・一刀斎の薫陶を受け、新陰流きっての名人、柳生如雲斎にも認められながら、かつてただ一度の敗北で全てを失ったのだと自らを語った。
〝宮本武蔵がなごやへ来りしを召され、於御前兵法つかひ仕合せし時、相手すつと立合と、武蔵くみたる二刀のまゝ、大の切先を相手の鼻のさきへつけて、一間のうちを一ぺんまわしあるきて、勝負如此ニ御座候と申上し〟
伝説に語られる勝負に、しかし名を遺すことなく歴史の闇へと消えた剣士の、無念と悔悟の物語。
文字数 36,415
最終更新日 2021.06.30
登録日 2021.02.08
明治の頃、佐伯楓が檜山喜一郎の死を知ったのは、彼を最後に見てから四日目の夕刻のことだった。
檜山は数年前より彼女の家の剣術道場に通っていた若者で、当世ではすでに禁止されて久しい敵討ちのために入門していたという若者であった。
免許を得た後に、師である楓の兄、佐伯衛の静止を振り切り、楓に寄せられる想いを振り切り、檜山は敵討ちに出て――
そして返り討ちにされた。
敵は紫電流、北尾重兵衛。その男の秘剣・花隠しとは何か。
残された師である佐伯衛は、敵討ちをどうするのかについては迷いながらも、秘剣の謎を解こうとする。
文字数 19,122
最終更新日 2021.06.30
登録日 2021.05.31
明治二十年。ある寺を訪れて寺男となった不思議な男、「きさぶろう」は、伝説的生き人形の造形師、松本喜三郎の如き名人となりたいと言い出し、旅立ち、生き人形師となって帰還した。それでも満足な腕前を得られなかったという「きさぶろう」は、『西行法師』の伝説を聞き京都へ行く。
その後また帰った「きさぶろう」は、ほどなく死んでしまう。
そして寺の周辺で連続殺人が起きるようになって……。
これは明治より続く、一体の生き人形を巡る、三人の「キサブロー」にまつわる物語である。
文字数 17,439
最終更新日 2021.05.31
登録日 2021.05.31
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