第5回ライト文芸大賞

第5回ライト文芸大賞

選考概要

過去最多の応募数を更新した第5回ライト文芸大賞。
心温まる家族の愛や、逆境を乗り越える人間の姿、青春の瑞々しさ、命の尊さなど、力強い題材の作品が集まった。

25作が残った最終選考において大賞候補作としたのは、「家政夫くんと、はてなのレシピ」「3日戻したその先で、私の知らない12月がくる」「私と継母の極めて平凡な日常」「瞬間、青く燃ゆ」「シンプル」の5作品。
これらの候補作の中で、僅差であったが編集部内で最も支持を集めた「3日戻したその先で、私の知らない12月がくる」を大賞に選出。
さらに、テーマ別賞として、「家族」をテーマにした2作「家政夫くんと、はてなのレシピ」「私と継母の極めて平凡な日常」を家族愛賞、また若手編集部員からの支持が高かった「瞬間、青く燃ゆ」を青春賞、平易な文章で主人公の複雑な心情を丁寧に描いた「シンプル」を優秀短編賞とした。
その他、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「3日戻したその先で、私の知らない12月がくる」は、「リワインド」という時間を巻き戻す能力を持った女子高生の青春の日々を描いた作品。「今を大切に生きること」という一貫したテーマが明確に伝わる点、筆力の高さ、SF設定と青春恋愛が上手く組み合わされた点で支持を集めた。

「家政夫くんと、はてなのレシピ」は、妻を亡くした高齢の男性のもとに家政夫として通う男子大学生の交流を描いたハートウォーミングな作品。レシピの独自性、料理の描写力も群を抜いていた。

「私と継母の極めて平凡な日常」は、精緻かつリアルな登場人物の心情描写の巧みさと、脇役に至るまで魅力的なキャラクター造形が高く評価された。また時事性のあるテーマ選択は、書き手の高い感度を窺わせる。

「瞬間、青く燃ゆ」は、冒頭のシーンのインパクトと、メッセージの明確さが評価された。辛い過去に苦しむ主人公がそれを乗り越え成長する姿と、爽やかな読後感が印象的。

「シンプル」は、繊細な筆致で、10代の主人公の葛藤と成長を鮮やかに描いた作品。明確なテーマを一篇の短い物語にきちんと落とし込んだ筆力の高さが、編集部内でも高く評価された。

開催概要はこちら
応募総数 1,239作品 開催期間 2022年05月01日〜末日

編集部より

「リワインド」という超能力設定を活かした印象的な冒頭のシーンで読者を惹きつけ、先を読ませる魅力のある作品だと感じました。作中には主軸となる恋愛の他にも、部活、美術、BL漫画など、魅力的な要素が盛りだくさんにちりばめられており、読者を楽しませてくれます。また、バドミントンの描写には非常に躍動感があり、ぜひ著者の青春スポーツものを読んでみたい、という意見が複数の編集者から出ました。タイトルのセンスも非常によく、文句なしの大賞受賞です。

離島で高校生活送ってます

浅葱
1位 / 1,239件

編集部より

ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。親元を離れ、離島の学園で暮らす主人公たちがスローに送る青春の日々。まさに「もふもふ天国」な生活に心癒され、自分もいつかこんな暮らしをしてみたいという気持ちになります。


編集部より

主人公と依頼主の家族との交流が優しく丁寧に描かれた、ハートウォーミングな作品。苦しみを抱えながらも、大切な人の死を乗り越え、日々の生活を着実に営んでいく人間の力強さを感じることができました。また、どのレシピにもひと工夫があり、ごはんもの小説としての魅力もしっかりある、一粒で二度も三度もおいしい作品でした。


編集部より

由依と継母である琴子との、血の繋がりを超えて互いを思いあう姿が心に響く作品でした。由依の葛藤が丁寧かつリアルに描かれていて、素直に感情移入できます。琴子が注ぐ無償の優しい愛情にもじんときます。こんな女性が近くにいたらいいな、と思わせるキャラクターでした。また、選考では会話文のテンポの良さも評価されました。


編集部より

彼女をストーカーに刺殺され、他人の感情が色として見える「色視症」という特殊な病を抱えることになった主人公の律の葛藤と、過去を克服しようと奮闘する姿に心を動かされました。律の抱えているものをまるごと受け止め、信じ、支えようとする大地の熱い友情にもじーんときます。爽やかな読後感の残る、まさに「青春賞」の名にふさわしい作品でした。

シンプル

847位 / 1,239件

編集部より

頑張って弁当を作ってくれる母の弁当を馬鹿にされたことで、人前で食事ができなくなってしまった主人公。友達との微妙な距離感、家族との関係における心の葛藤が丁寧に描かれ、それを乗り越えて成長する主人公の姿に非常に好感を持てる作品です。物語全体の構成も巧みで、完成度の高い作品でした。ぜひ、長編を読んでみたいです。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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