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33 償い

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 子を産んで不安定になってしまったヴィクトリア。

 そんな妻を支えるために、ロイエは出来るだけヴィクトリアの仕事を肩代わりした。そして、公務の合間を縫って愛する妻に寄り添った。


「今日はすごく天気がいいね」
「愛しているよ、ヴィクトリア」

「大丈夫、君はゆっくり休んで。何も心配はいらないから」


 たとえ用事があっても無くても。
 
 傍に居て。愛を伝えて。励まして。


 そんな皇帝の姿を見て。
 再び愚行をおかすのでは……と警戒していた周囲も徐々にロイエを応援するようになった。


 陰に日向に。ヴィクトリアを支えるロイエの心が通じたのだろうか。

 しばらくすると、ヴィクトリアに笑顔が見られるようになってきた。

 ヴィクトリアと子供と――父親であるロイエ。

 一年もする頃には幸せそうな家族の姿が見られるようになった。当初、何故かロイエに警戒をしていた子供も父親のロイエによく懐いて、ロイエもまたそんな子供を可愛がった。

 そこには不幸な過去を思わせる物は何もない。ロイエの手の火傷痕もいつの間にかキレイに治って、ヴィクトリアの身体に残った傷痕も服を着てしまえばもう見えない。


 そして――。


「ご懐妊です」


 二人の関係が修復したことにより再びヴィクトリアに新たな命が宿った。しかも、今度は双子だという。


「双…子……?」


 医師の診察結果を聞いて。呆然と呟き、そっとお腹に手をやるヴィクトリア。


「はい。でも、少々心配なことが。その……以前よほど魔力を酷使されたことがおありなのか、皇后様の魔力の回復が思わしくなく、双子の出産にお身体が耐えられるか」

「……双子なの。そう……そういうことだったのね。大丈夫よ。ようやく――愛する子供達がお腹に来てくれたのだもの。絶対に産んで……育て上げて見せるわ」


 ――今度こそ。


 小さく呟くように語られる言葉はロイエにはよく聞き取れない。けれど、ヴィクトリアの顔には幸せそうな笑顔が浮かんでいた。




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