【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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34 ヴィクトリアの悲願

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 双子を妊娠したと判ってから。ヴィクトリアはみるみる元気を取り戻した。
 女神様に感謝をささげ、涙を流して喜ぶヴィクトリア。

 精力的に皇后の仕事をこなし、つらいはずのつわりすら笑顔で乗り越え、日々上の子と一緒になってお腹の子供に優しく話しかけた。


 しかし、ロイエは手放しには喜べなかった。


 竜人は強い。けれど、その分どうしても妊娠や出産時には魔力を大量に消耗して母体に負担がかかるのだ。……ただでさえそうなのに、それが双子となれば出産にかかる魔力も通常の二倍。
 その分危険度が上がるのだから、夫として心配になるのが当然だ。

 現に、ヴィクトリアの母親も双子だったヴィクトリアとその兄を出産後に魔力の回復が上手くいかずに、若くして命を落としている。

 生命力が強く魔力が多い分、出産のハードルが高くなるのは長命を誇る竜人の宿命とも言える。魔力が高い皇族や高位貴族は猶のこと注意が必要となる。
 竜人といえども、いいや竜人だからこそ出産は命懸けなのだ。

 運命の番であれば、女神様の加護でそのハードルも随分と低いものとなる……のだが。

 ただ、種族上子供が弱く育ちにくい分、一度でも子が授かれば、たとえ早世しても無事に産まれて成長するまで、何度でも子の魂は同じ夫婦のもとにやってくる――と言われている。


 ロイエとしては前回の出産でようやく回復してきていたヴィクトリアの魔力も使い切ってしまっていたことから、今回は見送りたい気持ちでいっぱいだった。
 ――が、ようやく元気を取り戻してくれたヴィクトリアにそんなことを言えるはずもなく。


「大丈夫よ。だって、私は陛下の運命の番なのでしょう? だったら女神様のご加護があるはずだもの」


 結局、そんな風に押し切られる形で双子を出産することになり――――その宣言通り、ヴィクトリアは無事に健康で元気な男女の双子を出産した。

 そして。


 それからヴィクトリアはピタリとロイエと閨を共にすることをやめた。




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