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書籍化記念
柾人が嫉妬をした夜は6
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赤くなった顔を隠すために。
いつの頃か、花開いたような笑い方をするようになった。
ずっと彼が笑ってくれ、ただ自分だけに向けてくれることだけを願い続けてきた柾人にとってはこの上ない喜びだが、こういうときには困ってしまう。あまりにも清麗で手折るのが罪に感じてしまう。
身体はもう彼を欲しているのに。
肩に頬を擦り付けて、背中に回した手で撫で回し始める。筋肉の場所を確かめるように掌が彷徨い、肩甲骨を撫で広背筋をなぞる。
「そんなことをしても絆されないぞ」
「絆されてください。オレが人生をかけて大事にしているのは柾人さんだけなんですから、少しくらい肩を撫でられたくらいで怒らないでください」
柾人の扱いを誰よりも知るようになった有能な秘書は、背伸びをして耳の下に唇を押しつけた。チュッと甘い音を立て離れていく。
「オレは大丈夫ですから……もうあのことは忘れて」
かつて柾人の叔父と朔弥の兄が彼に暴行した記憶が消えない。守りたいと彼の傍にいるのに自分のせいで彼を傷つけてしまったというのもあり、もう社会人になって三年も過ぎた今でも彼を庇護対象として見てしまう。
「柾人さんに守って貰うばかりのオレじゃないんですよ」
二度と辛い目に遭わないよう、己の身は己で守ると身体を鍛えているのも知っている。筋肉が付きづらい体質なのか、どんなに鍛えても細いままだが。
「だが君を守りたいんだ、私が」
「オレも柾人さんを守りたいんですよ、わかってください」
大人になって自信を付けた朔弥の目は、かつての怯えや不安はもう拭い去られている。代わりに希望と信念がそこに宿り、今までにないほど輝かしい魅力を放っている。
惹き寄せられる。
仕事に追われてばかりで、恋人としての時間を過ごせずにいた間に、朔弥にどんな心境の変化が起きたのだろうか。
どうしてもこの仕事を成功しようとする強い意志を感じて、嘆息と共にわだかまりを吐き出すしかない。
「私が折れるしかないね、そこまで言われたなら」
唇を近づけ、息がかかる距離で折れたことを宣言をすればクスリと笑われた。
「ありがとうございます。オレ、柾人さんの傍にいられて本当に幸せなんですよ」
また背伸びをして、今度は唇に押し当てた。いつも柾人がしているように、唇を舐めてから合わせ、舌を潜り込ませてきた。絡ませ舌の根を舐めてくる。
朔弥に煽られるなど初めてで、興奮する。しかも必死に柾人を悦ばせようと身体を押しつけて興奮させようとする。すでに下肢は力を持ち始め、朔弥を求めている。そこに朔弥が身体で刺激をしてくる。
いつの頃か、花開いたような笑い方をするようになった。
ずっと彼が笑ってくれ、ただ自分だけに向けてくれることだけを願い続けてきた柾人にとってはこの上ない喜びだが、こういうときには困ってしまう。あまりにも清麗で手折るのが罪に感じてしまう。
身体はもう彼を欲しているのに。
肩に頬を擦り付けて、背中に回した手で撫で回し始める。筋肉の場所を確かめるように掌が彷徨い、肩甲骨を撫で広背筋をなぞる。
「そんなことをしても絆されないぞ」
「絆されてください。オレが人生をかけて大事にしているのは柾人さんだけなんですから、少しくらい肩を撫でられたくらいで怒らないでください」
柾人の扱いを誰よりも知るようになった有能な秘書は、背伸びをして耳の下に唇を押しつけた。チュッと甘い音を立て離れていく。
「オレは大丈夫ですから……もうあのことは忘れて」
かつて柾人の叔父と朔弥の兄が彼に暴行した記憶が消えない。守りたいと彼の傍にいるのに自分のせいで彼を傷つけてしまったというのもあり、もう社会人になって三年も過ぎた今でも彼を庇護対象として見てしまう。
「柾人さんに守って貰うばかりのオレじゃないんですよ」
二度と辛い目に遭わないよう、己の身は己で守ると身体を鍛えているのも知っている。筋肉が付きづらい体質なのか、どんなに鍛えても細いままだが。
「だが君を守りたいんだ、私が」
「オレも柾人さんを守りたいんですよ、わかってください」
大人になって自信を付けた朔弥の目は、かつての怯えや不安はもう拭い去られている。代わりに希望と信念がそこに宿り、今までにないほど輝かしい魅力を放っている。
惹き寄せられる。
仕事に追われてばかりで、恋人としての時間を過ごせずにいた間に、朔弥にどんな心境の変化が起きたのだろうか。
どうしてもこの仕事を成功しようとする強い意志を感じて、嘆息と共にわだかまりを吐き出すしかない。
「私が折れるしかないね、そこまで言われたなら」
唇を近づけ、息がかかる距離で折れたことを宣言をすればクスリと笑われた。
「ありがとうございます。オレ、柾人さんの傍にいられて本当に幸せなんですよ」
また背伸びをして、今度は唇に押し当てた。いつも柾人がしているように、唇を舐めてから合わせ、舌を潜り込ませてきた。絡ませ舌の根を舐めてくる。
朔弥に煽られるなど初めてで、興奮する。しかも必死に柾人を悦ばせようと身体を押しつけて興奮させようとする。すでに下肢は力を持ち始め、朔弥を求めている。そこに朔弥が身体で刺激をしてくる。
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