堕ちる犬

四ノ瀬 了

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俺の犬であるお前が主人の俺に対してあんなことをして、ただで済むわけがねぇだろ。

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煙草を燻らせながら、薬を調合し、栄養の準備を整えた。食事ではなく、生命を維持させるための栄養だ。
川名からは3つの軟膏、3種類の経口薬を受け取っていた。各薬の用法を見る。美里の持参した薬物と効能の被る物とそうでない物とがあった。どれを与えるかは、彼の状態と反応次第で変えてやる必要がある。

ある程度、治療と栄養の準備を終えてから、再び霧野のすぐ横に屈んだ。彼は何か言いたげな目でじっとこちらを見ていたが、無暗に口を開こうとはしなかった。顔面と毛先に、陰毛に付着しているのと同じ精液の乾いた物が付着していた。左目の端の睫毛にも目ヤニではなく、おそらく精液が固まって二三本の睫毛が毛束になっていた。

「相変わらず臭くて汚いな、お前は。吐きそうだぜ。」
「……」
彼は少しムッとした顔をしてから目をそらして、何もない床を見た。
「洗う前に中を見せてみろ。横になって寝な。」

彼は素直にこちらに背を向けて横たわった。姿勢を変えた拍子に音を立てて精液が尻から飛び出した。紛らわせるように彼の身体がもぞもぞと動いていた。顔を覗き込んでやると、羞恥に紅潮しているようだった。まだ恥じらいの気持ちがあるようだった。

「上から下まで汚ぇ便所だな。いくら飾り付けられたって汚ぇよ。刺青さえ便所の落書きにしか見えない最悪さだ。」

一目見てわかる。儚さを携えて花開く白い花々は、川名の絵のタッチだった。彼がこのように繊細で美しい物が描けるのを知っている人間は少ない。彼の描いた絵は何度か見てきたが、この華は特別色気を持って霧野の身体を彩っていた。まるで最初からそこに刻印されていたかのように。

しかし刺青はまだ皮膚に赤みが残り安定していない。美里は自身の腰元に入った刺青を誰かの手が這っているような感覚を覚え、不快な気分になった。代わりに目の前に咲いた三輪の花の周囲の皮膚を人差し指でなぞった。指の下の皮膚は熱を持って脈打っている。

「俺に威勢のいい口聞いてたくせに、またすぐ捕まってそんな物までつけられて。無様だな。」
「……」

ピンクに熟れた後孔を押し開き、濡れた中を点検すると、彼が実はかなりの便意をもよおしていることがわかった。あの店の料理、大量の精液に濡れた料理とその後食わせたファストフードが消化されて、今、大量の便として体内に溜まり、降りてきている。面白くなって笑ってやると「なんだよ……」と吐息交じりの声が返ってきた。

「勝手にしゃべるなよ?まあいい。今のは許してやる。お前今、クソがしたくてたまらないんじゃないか?」
「なに……」
「黙ってれば俺が勝手に中を洗ってやると思ったか。見りゃわかんだよ、汚ぇな、なんで俺がお前のクソの塊をほじくりだしてやらなきゃいけねぇんだ。最悪だ。先に出せ。」
「……このままか?」
「なんだ?嫌なのか。仕方がないなぁ。」

彼の手足の拘束を外し、リードを手に持って立ち上がった。悪くない景色だった。

「這って来い。昨日の様ななめた真似してみろ。汚ぇその穴に銃弾ぶち込んでぶっ殺してやる。その後裂けたその穴に俺のチンポをつっこんで精子ぶちまけて愉しんでやるよ。死体になったお前と一番最初にヤルのは俺だ。」
「……。どこにいく」
「お前がクソをしやすい場所に連れてってやるんだよ。」

霧野がのろのろしているので横から腹部を蹴り上げた。良い声を出して腹を抱えて蹲り、その拍子に便と精液の混じった液体が音を立てて飛び出て彼の太ももと床を穢した。

「うっわ……。最悪だな、勝手に人前でクソを漏らしやがった。もし、こっちに飛ばしてたらマジで許せなかったぞ。クリーニング代として100万円くらい徴収しているところだ。」

彼は顔を伏せて羞恥に震えているようだった。その様子がよく、さらに蹴り上げて、漏らさせてやりたい衝動をこらえた。
「また蹴り上げられたいか。嫌ならさっさと歩け。」

彼を引っ張るようにして地下室の扉の方に向かっていった。彼はひきづられるようにしながらも、後ろからついてきて、扉を開ける段取りになって「どこへ」とまた言い出した。彼を見下げて足を軽く上げると、彼は軽く声を上げ、リードがピンと張るくらい距離をとって腹部を腕で押さえるような仕草をした。

「ふん、蹴られるのが嫌なら黙ってろ。やっぱりお前の口はまだ駄目だな。禍のもとだ。いい加減なんとかしてやらないといけないな。」

地下室の扉を開け、霧野を引っ張り出してからドアを閉め、自分は腕を組んでドアにもたれかかった。下を見ればマゾが一匹、状況を理解し始め羞恥と焦りに息を荒げ始めていた。階段の上から午後の日差しが刺し込み、車の通る音や組員の声などの生活音が聞こえてくる。

「はやくそこでしろ?そうだな、俺の方に尻を向けて、してるところを見せろ。なるべくデカいのひりだして見せろよ。その方が面白れぇからな。」
「……へんたいが」
「変態?犬が外で便をするのは当たり前のことだろ。大体お前がさっき中でするのを渋ったんじゃないか。自分の家の中でするのは嫌なんだろ。お前は奇麗好きだから。」
「中で」
「駄目だ。お前がそこでクソを全部出しきるまで中に入れてやらない。何かなめた真似しようとしたらすぐさま射殺する。昨日の今日だ、そのくらいされて当たり前だよな。」

自分の語気が強くなっていた。言ってる端から昨日のことが思い出され、同じ場所で自分が後ろから股間を蹴り上げられたことを考えると腸煮えくりかえってくる。全身の傷が共鳴したかのように熱を持って痛み出した。

「はやくしろよ。階段の上でしてもいいし、デカい声出して昨日みたく皆を集めてもいいんだぞ。」

霧野は顔を伏せままこちらに背を向け壁の方を向いた。
「しゃがんで…‥?このまま‥…?」
背中の向こうから上ずった小さな声が聞こえてきた。

「へぇ、俺に聞くの?じゃあ、壁に手をついて脚を大きく開いて中腰になってしろ。昨日の俺の格好と同じだ。わかったか?その方がよく見える。」

彼は身体を起こし壁に手をついてこちらに尻を突きだすような姿勢をとった。息が上がっておりこちらにまで、獲物を前に熱い涎を垂らした狼のような息使いが聞こえてきた。彼のしなやかな筋肉質で隆起した背中の上、一面を彩る傷と痣が、呼吸に合わせて上下に蠢いた。切り傷になった部分の傷口が軽く開いている。

汗ばんだ身体から彼自身の汗の匂い、血の臭い、金属の鉄の臭い、誰彼構わず出された様々な男の分泌液、生臭いにおいが漂い、その上便の臭いが漂い始めた。最低の臭いの調合であったが、それが、しなやかな体躯をし、元々は常にミントの様な良い香りを漂わせていた彼から出されていると思うと、妙な厭らしさがあった。

彼が力んで声を出していた。
「う゛……」
目の前で力んだせいなのか羞恥のせいなのかさらに身体が震え、肛門がパクパクと口を開き始めた。その様子がまた面白かった。

「今更恥ずかしいのか?これが本来の肛門の使い方だろうが。そこにチンポいれられてんのなんて、お前しかいねぇんだよ、便所野郎。」
「……うう、」
肛門の周囲の筋肉が震えたかと思うと塊が一本、もりあがった秘所から蛇のように這いだして、15センチ程度になったところで音を立てて地面に落ちた。笑いそうになるのをこらえながらまだ出るのだろうかと思って視線を地面の汚物から目の前の穴に向けると恥じらいもなく次の物を出そうとしていた。

「随分デカいの出したな!で?まだ出んのかよ。よくそんなのを俺に触らせようとしたな。お前はサディストだなぁ~。」

目の前の彼がふるふると震え、しかし排泄は最早意志と関係なく止まらずに、最初の物より一回り小さいがそれでも一本糞といえる重量を持った糞便を排泄して、地面に落とした。その様子は動物が排便しているのとまるで変わらなかった。これ以上はもう出ないようだが、肛門は役割を果たしたにも関わらず臭いをたてながらひくつき、締まり切らない穴から糞便の残りと精液の混じった汚液が漏れていた。

「はぁ゛……っ、はぁ゛…‥っ、うぅ……」

霧野は濁音の混ざった声を出しながら荒れた呼吸をして、排泄の快感と羞恥に喘いでいた。自分の出した物の臭いが鼻について余計に羞恥心をくすぐっているようだ。開発された腸は排便をスムーズに、そして排泄の快楽を高める。

「デカいの二個もだしやがったな。こんなにデカくて臭いクソを身体にいれといて、よくさっきまで澄ました顔していられたな。その上、俺に親父の話までしようとして。で?もう出ないか?」
「…でない、もう、やめろ、こんなの」
「本当か?てめぇの言葉は信用できないから、確認しなきゃだな。でもそんな汚ぇクソ穴触りたくねぇ。」

美里は懐から銃を取り出して眺め、先端を目の前の穢れた穴の中に押し込むようにして広げた。
「ああ゛っ…」
力をこめるとズボっと中に銃の先端が面白いくらいに食い込んで入っていった。
「このまま撃っちまおうか。それが一番無様で裏切り者のお前によく似あう死に方だと思わないか?」

霧野が切迫した息遣いをする中で安全装置を外してやると惨めなほどぶるぶると震えだした。下から突き上げるようにして、銃の先端四センチ程度を押し込んでは引き出し押し込んでは引き出しを繰り返していると、切迫した息遣いの中に甘い声が混じり始めた。

「最悪な野郎だな。お前はサイコマゾだ。何をクソ穴に拳銃ぶち込まれて高まってんだよ。死ぬかもしれねぇんだぞ、ああ?それが余計にイイか?最高に気持ち悪いよ。」

銃の先端を勢いよく霧野の排泄孔から引き抜くと一段と高い声を出した。開いた穴からは粘液と精液意外に最早何も出てこないようだった。

「確かにもう無いようだな。しかしお前そんなにデカい声出していいのか?ここをどこだか忘れていないか。」

彼は思い出したように息遣いの中に混ざる声を抑えようと、必死になってこらえていた。

「馬鹿め、クソ穴いじられると夢中になってすぐこれだ。……おい、俺の拳銃がお前のせいで汚れたな、奇麗にしろよ。いつもみたく口でな。」

彼がゆっくりと壁から手を離してこちらを振り向いた。恥ずかしさと悔しさ、気持ちよさに紅潮した顔に銃を突きつけ、徐々に下の方におろしていった。

「そこに跪いて、咥えるんだよ。いつもみたく。早くしないと撃つぞ、別にお前に当てなくても壁にでも撃ち込めば昨日の再現だな。皆がここに集まってきてお前のその性奴隷さながらの躾けられた姿とお前のひりだしたばかりのデカいクソを見に来るわけだ。」

彼は美里から視線を外すとうつむいたまま膝を地面についた。その際に自分の出したグロテスクな一物が目に入ったのか、視線を泳がせ、自分の出した物の左右に膝をつくようにして跪き差し出された銃の先端を口の中にいれた。

美里は銃が彼の口内に入ったことを確認すると、イラマチオの要領で彼の後頭部を強く押し込み、銃身を口の奥、喉の奥深くまでいれた。

手の下で彼の身体が今までにないくらい硬直し、見下げた時にあった眼は今までにないくらい恐怖に満ちていた。この状態のまま発砲すれば脳幹を弾丸が貫通して即死する。口と鼻から震えの混じった熱い息が、喘息にのように強く早く漏れ出ていた。美里は引き金に指を掛けたり外したりを繰り返し、彼の反応を見ていた。

「んん、良い顔だな。そうだよ?、俺は怒ってんだよ。別にこのままお前を殺しても、俺は何の罪にも問われない。寧ろ俺がこの手でお前を殺したという思い出が一つ手に入るくらいだ。それもお前自身のクソのついた俺の銃を舐めさせてから殺してやったという最高の思い出が。」
「ふ、っ゛‥ぐ…‥」
「おお、瞳孔が大きく開いているな。奇麗な目だ、死ぬとそれが無くなるのだけが惜しいな。」

後頭部をさらに強く押し込み、尻でしたのと同じように銃を動かして先端で喉の奥の方をコリコリとこずいた。喉を突かれたせいで嘔吐きそうになり、紅潮した目の縁に溜まっていた涙が一気にぼろぼろとこぼれ出ていた。

「俺に対してなら、なめた真似しても許されるとでも思ってたんだろ。そりゃあ、川名さんや二条さんに比べたら、俺は怖くないだろうよ。お前より体躯だって細いしな。でもな、お前は俺に忠誠を誓ったんだよ。薬で頭イカされてたから覚えてないとでもいうのか?奴隷、俺の犬であるお前が主人の俺に対してあんなことをして、ただで済むわけがねぇだろ。お前の命が最早俺の手で守れないとなったらそれはもう、俺が殺してやるしかない。次に同じようなことを勝手にやってみろ、お前は手に負えない獣とみなして、確実に俺が殺す。川名さんに止められようとも関係がない。何故ならこれは俺とお前の約束事だからだ。わかったか。わかったら目を閉じろ。」

目の前で彼の怯えたしかし奇麗な大きな双眸がゆっくり閉じられていった。彼の息は相変わらず怯え荒くなっていた。呼吸の高まりは恐怖でどんどん激しくなり、睫毛の先が震えて瞼の裏で目が動いているようであった。それでも目を開けずにじっと耐えている。どのくらいたったかわからない。ゆっくりと彼の口から銃身を引き出した。

「よし、目を開けていいぞ。少しは反省したか。でもまだこんなもんじゃ仕置きが足りないな。これから中でゆっくりと仕置きしてやるから覚悟しておけ。」
「……」

美里は黙ってこちらを見上げている霧野の頬に左手を思い切り振り下ろした。肉を叩くいい音がし、霧野は何が起きた理解できないような顔をして顔を抑え、上目遣いで美里を見ていた。

「何黙ってんだ。ありがとうございます、か、よろしくお願いいたします。くらい言えないか。一週間もわざわざ皆で時間を作って調教してやってるのに、心底ダメな犬だ。血統が悪いのか?」

霧野は一瞬だけ憎しみのこもった眼を向けて美里を見上げた。それから表情を隠すように目を下に向けた。

「………、よろしくお願い致します。」
「ほぉ、すげぇなお前。感情が一切こもってないじゃねぇかよ。お前はクソ演技のプロのくせに。何故演技でさえ感情をこめようとしないんだ。俺をイラつかせる天才か?やっぱりお前の口は最悪だ、身体でわからせてやる。頭も下げて言え。そこに額をこすりつけて言えよ。お前の出したクソの前で土下座して言うんだよ。」
「……」

霧野は軽い躊躇いを見せながらも、美里の前で頭を下げて再度同じ言葉を言っていた。おねがいするという感情はやはりあまりこもっていないが、悔しさ、悲しみ、怒り、羞恥が言葉の端々からにじみ出ていた。
美里はそれを上から見下ろしながら、ようやく自分の中の気分がマシなものになってきたと思った。リードを上に引くと彼の頭が上がった。未だ反抗的な小さな輝きは残っていたが、普段美里に見せる顔よりずっと大きな恐怖に満ち、羞恥に溢れている。

「いいぞ、お前の性根叩きなおしてやる。」

彼の表情の奥底に何か歪んだ快楽の影がある。ホテルで見せたのと同じ顔だ。
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