堕ちる犬

四ノ瀬 了

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まだそんな怖い顔できんのか?その格好で睨まれても何も怖くねぇんだよ。

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「何だこれ……?人が住む場所か?触る気にもならんな。」
霧野は薄手の手袋を手にハメながら部屋の惨状を見ていた。
「何を言ってるんだ、しっかり触って調査しろよ。捜査は五感でやるのが基本だろう。」
「それは、そうでしょうけど。」
「お前はお嬢様か?ビビってないで嗅ぎまわれよ。良い物見つけたら咥えて持って来るんだ。わかったな。」
「あのさあ……もっと言い方あるでしょ。」

木崎は霧野の方を見もせずに、ずかずかと腐敗しきったアパートの奥に入っていく。木崎は複数の捜査を抱えつつ、夜は潜入捜査と称して別の人間になり切って裏社会の人間と関わっている潜入捜査のプロだ。

彼女が忙しく署に来る暇もないため、度々捜査の傍ら霧野に対する仕事の引き継ぎをしていたのだった。尚且つ今日は人手も足りないというので、霧野は彼女の受け持つ捜査の一つに立ち会っていた。

その部屋は所謂「阿片窟」として用意された場所であり、薬物にどっぷりつかった人間が最後にたどり着く場所だ。寝ている時間以外すべて薬漬け、預金残高ゼロ、借金限度額までさせられて、破滅してく。

乱れたベッドや毛布、無数の寝袋の様なものがあちこちに散乱し酷い臭いをたてていた。

不快だ。霧野が思わず舌打ちをすると、木崎が薬品の欠片の入ったビニール袋を手にこちらを振り向き、顔をしかめた。

「おい、霧野。ホストじゃないんだぞ。変な臭い付けて捜査現場に来るなよ。現場の臭いがよくわからなくなる。」
「あ……すみません」

木崎がこちらをじっと下から見上げるようにして見つめてくる。乱雑な口調や仕草と裏腹に 可愛らしい童顔で、なにより大きな乳が彼女へ視線を送ることを躊躇わせた。
彼女は再度霧野に視線を合わせるとニヤと嫌な笑い方をして口を開いた。

「まあそんなにしょげかえるな。汗臭い臭いをデリカシーなく漂わせる野郎どもより遥かにマシだ。立ってるだけでイイよ、お前は。」
「完全にセクハラですねそれは。コンプライアンス研修受けなおしたらどうです?山崎さんに言って部署を変えてもらおうかなー。」
「真面目ちゃんだな、じゃ、お前も次から私の胸や尻をチラチラ見るのやめろよ。隠したってわかってんだよ馬鹿。」
木崎がにやにやしている前で霧野の顔にサッと赤みがさした。
「おいおい、わかりやすく顔に出すなよ。これから先が思いやられるな。」

言い返す言葉もなく誤魔化すように部屋を漁る。これから自分が入っていく捜査とまったく関係がない事件ではなかった。部屋の持ち主は架空の人物、証明書類もすべて架空、証拠が何一つ残っていないところから闇組織関係の誰かが借りていた。関東系の大組織傘下で、ここ数年で急速に成長しつつある川名組が容疑者の候補に入っていたのだ。

床に放置されたハンディカメラを弄ると充電が残っているようで再生された。最悪の映像だった。映像の中の嬌声を聞き付けた木崎がこちらにやってきた。鼻歌交じりでだ。

「おうおう、いいの撮ってるね、薬物とセックスの相性は抜群だからな、こういうのも簡単に撮れる。」

木崎が横から覗き込んで小さな画面を見ていた。嫌悪も興味もない、ただ観察する物の目だった。画面の中では目つきがおかしい男、女、犬が入り乱れている。よく教育された犬なのか男の指示で器用に男や女の中にいれていた。みんな笑っていた。

「奴らは裏ビデオなんかも製造する。稼げることならなんでもするからな。倫理がないんだよ。いや、私らと違う倫理や正義で動いてるとでも言えばいいかな。」
「よく平然と見てられますね。」
「こんなビデオ程度で音を上げるなよ。まだマシな方だ。」
「……。」
彼女は上目遣いで霧野を見上げたと思うと優しく微笑んだ。
「そんなに深く考えこむな。考えれば考えるほど、溝に嵌る。そうやって辞めた奴を死ぬほど見てきた。割り切って物事を見るんだ。死体を見た後に飯を食うくらいの切り替え能力が無いとやっていけないぞ。」



美里の目前で野外で大便をさせられたこと、銃を喉奥まで突っ込まれたことは、霧野の精神に羞恥と恐怖のダメージを刻み込んだ。

しばらく目の前の男に従うしかない。

無駄な抵抗をやめて従順でいることは、屈辱的ではあるが、仕方がない。目の前の男は冷静に見えてダイナマイトのような怒りを抱え、霧野で発散させようとしている。今無闇に刺激しても仕方がないんだ。彼が冷静な時に、父親の情報をダシにして、脱出を手伝わせるように仕向ければいい。今はダメだ。何をやっても。

霧野は自分にそう言い聞かせた。
スイッチを切りかえたかのように、自身の股間の辺りが著しく熱く反応し、目付きがとろんとして、羞恥が快楽に結びついて、息を荒らげている肉体の事実。それを、意識の外に持っていったのだった。

無意識の中で彼からの調教の記憶と快楽がフツフツと沸騰しかけたお湯のように沸き立っていた。湯は脳を茹であがらせていた。

「身体を洗ってやる。声を出してもいいが犬のお前が勝手にヒトの言葉を喋るなよ。ただでさえキツイのやってやろうとしてんだから、これ以上罪を重ねない方がいいな。」

軽くホースで全身に水をかけられる。痛めつけられた傷にしみて凄まじい痛みを伴うが、穢れた身体にはそれくらいが気持ちがいい。しかし、叩くような水圧で下半身に水を当てられると流石に声が出る。

ある程度水をかけられてから、水がとめられた。美里の革靴が霧野のリードを霧野の首からすぐの所で踏んでおり、首を上にあげることが出来ない。

「見てみろ。これが何かわかるかな。」

地面に置かれた物は、長さ20センチ厚さ5センチ程度の長細い板のようなものだった。全体が軽くカーブを描いており、中心に穴が空いている。

板はふたつの板どうしが小さな鉄版で接着され、ボルトでとめられて1つの板のように見えていた。つまるところ、ギロチンにかける囚人が頭を填める拘束台を小さくしたようなものだった。

美里はリードから足を外して手で持ち直すと、目の前の板を拾い上げて霧野の後ろ側に回った。

キュル、キュル、とボルトの回る音がしていた。
そして、陰嚢の付け根当たりを雑につかみあげられる感覚と共に何か重いものがそこに括り付けられた。

なんだ!?

「モゾモゾと動くなよ。」

再びボルトの回る音がすると、股間に謎の重みとともにゆるやかな不快感がやってきた。

先程の板の空いていた箇所に霧野の陰嚢がはめこまれ、板のサイドが太ももに触れていた。
拘束の意味がすぐにわかった。なんとも恥ずかしい拘束だ。
陰嚢は板に挟みあげられて軽く引っ張りあげられ続けている。太ももを動かすと板が腿につっかえて、玉を引っ張るのだ。

「次はデカいクソ溜め込んでた最悪な汚ぇ中を洗ってやる。ピカピカに洗い上げてやるからな。悦んでいいぞ。」

美里は手に持っていたドライバーをポケットの中にしまい、ホースを手に取った。
体内洗浄が始まり、いつも通り勢いよく中に冷たい水が入ってくる。
衝撃に耐えきれずに、霧野が這っている脚を少しでも伸ばそうとしたり、立とうとすると挟まれた陰嚢が強く圧迫、引っ張られて、股間に激痛が走るのだった。板はハンブラーという名の調教道具であった。これで陰嚢を挟まれた者は膝を曲げて屈辱的な姿勢をとり続けなければ、痛みに苛まれる。人間のように二足歩行をすることは許されない。

「あ゛あ…っ!!、くっ!」

リードが後ろに強く引かれて、すぐ近くから美里の声がした。

「こうすれば逃げられんだろ。犬らしく常に尻の穴を丸出しにして四足でしか歩けないようにしてやったんだ。」

ぬるぬるとした指が入ってきて中をコリコリと執拗に擦り上げ続けた。最初こそ息を荒らげているだけで済んだが、あまりに執拗に追い回すように指が責めてくる。荒い呼吸だけではすまない。あわせるようにクチュクチュと粘着質な音が激しくなった。

「あ、ん゛っ…、ぁぁ、!、」

冷水で冷えきり震えていた身体の中に再び熱い塊が生まれた。熱い欲望はむらむらと全身に広がり、体の奥底をジンジンと疼かせる。求めるように腰が揺れて、手が思わず股間の方にのびた。このまま自身の手で肉棒を扱き上げて楽になりたい。

すかさずに1発臀を叩かれ、指がさらに中を抉るように押し込まれた。

「おい!!てめぇ!勝手に何しようとした?」
グリグリといい所を丁寧に擦りあげられて、太い肉棒で圧迫されている時とは別の、直接針で脳を弄られるような快感が走る。
「おお゛っ!!……ん、ん、はへっ……やめっ、へ」
「今なにか喋ったな。」

再び1発、今度は玉を強く叩かれ、霧野の身体は蹲るように、怒った猫のように身体が硬直、身体がビクビクと震え、そのせいでハンブラーに玉も痛めつけられて快楽と苦痛に呻く羽目になった。

「うあ゛っ、!、ぁぁ、……ん、」
無為に身体をよじって逃げようとすればギリギリと玉が痛めつけられ首が絞まった。

「うるせぇ淫乱犬だ!多少でもじっと耐えられるよう拘束しておいて正解だったぜ。お前のような駄犬はこうでもしないと何にもできないからな!」

グプグプと水と粘液の音を立てて気持ちのいい箇所を擦りあげられているうちに、緩やかな快楽の延長でダラダラと勃起しきった肉棒から汁が漏れ続け、薄い精液のような熱い液が肉棒と床を濡らし続けた。

「ふ、ぁ、、あっ……!!お、お゛ぅ……」
「まだまだ綺麗じゃないな。」

指が抜かれる代わりに普段ホースが乱雑に中に突っ込まれた。せっかく気持ちよくなれていたのに、冷水を叩き込まれたら、冷えと腹痛の苦しさにイケなくなる。言葉による意思表示が禁じられているため、腰を軽く揺らした。

「なんだ?金玉を挟まれ、ホース突っ込まれてただでさえ情けなくて恥ずかしい格好してるくせに、自らへこへこと腰を振って俺を誘うとは、落ちたもんだな。なぁ、澤野?」

やめてくれ!自分が誰か思い出させないでくれ!と言えない代わりに身体の動きを止めて腰を下ろした。

床に這い蹲るような形になる。そのくせ身体の下に隠された肉棒はギンギンに勃起し股の間で熱い存在感を持ってどくどくと脈打っていた。鉱山の下を流れるマグマのように、いつ吹き出してもおかしくが無かった。

「ふん、イキたいのか?隠したってお前の無駄マゾちんぽがデカくなってることくらいわかんだよ!駄目だな。」

体内に勢いよく水が噴射されホースが抉るように奥の方まで突っ込まれた。激しい水流が腸内の形をわからせて、管を冷し、責め立てた。ホースが抜かれたと同時にプラグが差し込まれ、水が出せないまま体内できゅるきゅると音を立てて渦巻いた。

「はぁ…っ、はぁ…うぁぁ、」
額に脂汗が流れでいた。ギンギンに盛っていた肉棒は次第に元気を失って、生理現象による苦痛が身体を苛んでいく。

「股ぐらを見せてみろ。」

重い身体腰を上げてすっかり小さく萎んだ肉棒が見える姿勢をとった。

「よく見えねぇなァ。仰向けになって見せてみろ。」
「……」
足を曲げたまま仰向けとなると自ら足を抱えるようにしないと、玉がひっぱられる。相当いやらしい姿勢をとる必要があった。

「聞こえなかったか?ああ、じゃあ、犬のお前にわかりやすく言ってやろう。"ちんちん"だよ。服従の姿勢だ。俺に腹を見せて股開きな。」

しぶしぶ足を曲げたまま股を開いて仰向けになった。重力で勝手に足が伸びるといたいので、自ら脚を抱え込む。美里を見上げると、苦しさと同時に羞恥がさらにわきあがってしまい、霧野は自らの知らぬ間に軽く媚びるように喘いでいた。

「おい、駄犬、勝手に高まるなよ。そのまましてろよ。」
「…ぁ、……はぁ、……ぐぅ」
その間にもきゅるきゅると水が体の中を苛む。
「うーん、いい格好だな。恥ずかしくねぇの?」
「……」
お前がやらせてるんだろ!と睨みつけた。

「まだそんな怖い顔できんのか?その格好で睨まれても何も怖くねぇんだよ。寧ろ余計に哀れだぜ、いいぞ元の姿勢に戻って。次から玉に枷嵌められてなくても同じようにできるようにしとけよ。」

再び四つん這いの姿勢に戻ると美里の手が萎んだ肉棒に伸びてきて、何か固くて冷たい金属製のものがカチカチと音を立てていた。

「じっとしてろよ。無駄に動くようなら、その腹蹴りあげてから腸内洗浄をあと3回は追加してやる。」

それは肉棒を抑え込み、囲うようにして取り付けられ、最後に錠を落とすような嫌な重みのある音がした。

恐る恐る覗き込むようにして股間を見ると、鍵を手にしたみさとの白い手がするりといなくなり、残った場所に、金属の檻、貞操帯がハマりこみ、恥辱により再び力を取り戻そうとしていた肉棒を戒めていた。先端からピアスが垂れているのを直視してしまい、さらに嫌な気分になった。

穴のプラグが抜かれて、ダラダラと生暖かい液体が流れ出ていった。排泄の気持ちよさとともに緩やかな痛みが股間に現れていた。

「うん、いいじゃないか。中もマシになったな。」
「はぁ、…はぁ、」

身体の奥に溜まった性欲のタガを外してしまいたく、次に何をされてもいいからとにかくイキたい、そんな気持ちが霧野の頭の中に渦巻いていた。美里の目の前で尻穴を惨めにひくつかせている自覚はあったがもうどうにもならなかった。

「ん、んん…」
「なんだ?俺にヤラれたいか?こんな汚ぇ場所で、洗ってやったとはいえでかいクソ二本も垂れたばかりの汚いお前なんかに俺がいれてやるわけないだろう?しかし、いい具合に発情したな、マゾ野郎。そんなに媚びるなら代わりに雄犬連れてきてやるよ。」

雄犬?何を言ってるんだ

口内に親指を入れられ、両サイドに口を開くタイプの口枷を嵌められてしまった。口が軽く空いたままになり、力を抜けば犬のように舌が出た。

「お前ももっと犬らしくならんとな。」

顔をあげようとすると何かが頭に被せられ一瞬視界が黒くなった。何度か瞬きをすると、視界は狭く暗くなったものの見えなくはない。
首輪を引かれて連れられた先で鏡に映った自分は犬であった。顔半分以上を黒い仮面が覆っており、ピンと尖った犬の耳と尖った鼻を象った作りだった。尖った鼻の部分がチャックで開閉でき、マスクの隙間から微かに見える口は横に開きダラダラとヨダレを垂らしていた。

キリキリと貞操帯の中に押し込められた雄が痛み始め、性感帯の3点が同調するようにジンジンと感じ冷たく痛み始めた。快楽からか苦痛からか判らない温かい涙が涎に混ざって垂れており、顔を伏せた。はあはあと勝手に息が上がっていくのが余計にみじめったらしい。

「最低な姿だろ。こうでもしないと正気のお前は自分が何なのか理解出来ねぇからな。」

美里はさらにロッカーから鉄パイプを取り出すと、霧野の両手首をパイプにロープで括った。それから空いたままになった穴にしっぽの着いたディルドを押し込む。

ゆっくりと出し入れされただけなのに、中だけで痺れるような肉の感覚が始まった。雄の部分がさらに締め付けられて苦しく、開きっぱなしの口から嗚咽と快楽の混じったいやらしい声が漏れ出る。手が引きつったように痙攣し、ロープが手首にくい込んだ。

「う゛う‥ぅ…」

「良い仕上がりだな。おい、霧野。これからお前を雄犬共にヤラせてやるが、何されても俺にされてると思えよ。俺の命令でやらせるんだ。これからが仕置の本番だ。誰の汚ぇ肉棒で何発突かれようが、すべて俺のだと思え。それが忠誠であり、救済でもあるからな。」

美里はそう言うと携帯でどこかに電話をかけ始めた。本当に誰かをここに呼ぶつもりのようであった。二三何か言って軽く笑っていた。顔は全く笑っていないのに、声だけ相手に合わせて笑っているのだ。鏡越しに彼と目があった。怒りと愉悦に燃えた目をし、笑っていなかった口元が微笑んだ。

「そうだ。ひとり良い仕上がりの”債務者”がいるんだよ。”元”警察官だから良い身体だし、壊れにくく、憂さもはらせるだろ。二三日もしたら、別の場所にまわしちまうからその前にな……うん、わかった。必ず来いよ。」

電話を切った彼は目だけでこちらを見降ろしていた。

「というわけだ。お前ならこれから何が起こるのか理解できたか?」
「……」
「お前は今、顔も覆われ身分もない一匹の犬だ。俺以外誰もお前を知らない、わからない。それはいいことだ。お前は、自分が警官だと思ってるもしくはまだヤクザの端くれだと思っているから、いや、自分を人格のある人間だと思ってるから調子に乗って俺に歯向かうんだ。一度すべてを0にして、ただ感じるだけの肉になってみろ。……アイツの指示で皆にまわされたのとまた違った趣がある。好きなだけ感じていいぞ。誰もお前をわからないんだから。」
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