遊部!

きとまるまる

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15話「気づきは少し離れてから」

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・登場人物

 立花 涼介たちばな りょうすけ:♂ 高校一年生。ごくごく普通な男の子。

 笹原 冬華ささはら とうか:♀ 高校二年生。元気で可愛くて人気者な女の子。

 暁 秋斗あかつき あきと:♂ 高校二年生。明るいムードメーカー的な存在。なんだかんだ顔はいい男。凪先輩のことが大好き。

 不知火 夏帆しらぬい かほ:♀ 高校二年生。小さくて物静かな女の子。なぜか立花には攻撃的。

 五十嵐 賢也いがらし けんや:♂ 高校三年生。遊部の部長。よく下ネタを口にして百瀬に殺されかける人。

 百瀬 凪ももせ なぎ:♀ 高校三年生。いつもニコニコしているおっとりお姉さん系な女の子。お胸がとても大きい。下ネタが大嫌い。



ーーーーー



 六月下旬。徐々に気温も上がっていき、ほとんどの生徒が夏服へと移行を済ませ、教室内は春先とはまた違う景色を広げている。
放課後を知らせるチャイムが教室内に鳴り響くと、生徒たちの楽しげな声がざわざわと教室を包み込む。その楽しそうな空気の中、不知火 夏帆は机に突っ伏し、頭を抱えながら、どんよりと重苦しい空気を放っている。


笹原「おーい、夏帆~? 大丈夫~?」

不知火「......。」

笹原「夏帆ってば~? 生きてる~?」

不知火「死んでる...。」

笹原「ありゃりゃ。やっぱり死んでますわ。」

暁「こいつの勉強嫌いは、いつになったら治るんだ?」

笹原「不治の病ですよ、これは。」

暁「それは、お気の毒に。まぁでも、期末は教科多いからなぁ~。夏帆じゃなくても、嫌になるよな。」

不知火「無理...もう、嫌...。なんなの...? なんで教科増やすの...? バカなの...? アホなの...?」

暁「お前みたいなバカを増やさないためだよ。」

不知火「勉強したくない...。やりたくない...。地獄にいきたくない...。」

笹原「そんなこと言っても、やらなきゃだよ? ほら、私テスト範囲撮ったから、送るね?」

不知火「やめて、冬華...。それ見たら、勉強やらなきゃいけなくなるから...。」

暁「見なくても、やらなきゃいけないんだぞ? つーか、勉強しなきゃ中間の時みたく、立花に負けるぞ?」

不知火「うぐっ...!?」

笹原「中間は頑張ってたんだけど、全教科負けちゃったもんね。」

不知火「やめて...思い出させないで...! 私が、あんなクソ地味男に...信じたくない...!」

暁「ほら、あんな苦しい思いをしたくないなら、勉強しような?」

笹原「私たちが、教えてあげるからさ。頑張ろ?」

不知火「うぅ...やりたくない...。勉強したくない...。でも、クソ地味男には負けたくない...!」

笹原「負けたくないなら、勉強しようね。」

暁「楽して勝てるほど、この世は甘くないぞ。」

不知火「...はっ!? そうだ...! 地味男をこちら側に引き込めば、勉強せずとも勝てる可能性が...! あいつに勉強させない方法を、考えよう...!」

暁「おっと? 立花を夏帆側バカサイドに引き込むという、荒技を駆使しようとしてるぞ?」

笹原「夏帆、素直に勉強しようね...。」



ーーー



 放課後、遊部の部室。


笹原「こんにちわー!」

暁「ちわーす!」

不知火「こんにちわ...。」

百瀬「こんにちわ。」

五十嵐「おーおー、夏帆のやつ、もう死んでんじゃん?」

百瀬「夏帆ちゃん、端っこいつもの場所は、綺麗に掃除しておきましたから、いつでも座って大丈夫ですよ。」

不知火「ありがとうございます...。」

笹原「行くな行くな。端に逃げるな。」

暁「現実から、目を背けるな。」

五十嵐「んじゃ、全員揃ったし、早速テス勉始めますか~。」

笹原「ん? 全員?」

暁「部長、立花がまだですよ? いくら影薄いからって、忘れないであげてくださいよ。」

百瀬「立花くん、今日はお休みだそうですよ。」

暁「え? そうなんですか?」

笹原「珍しい。風邪引いたんですか?」

五十嵐「みたいだぞ~。」

笹原「あらら。」

暁「バカだなぁ~あいつ。」

不知火「ちぃ...! このストレスを、地味男にぶつけてやろうと思っていたのに...! なんで、こういう大事な時にいないのよ...!」

五十嵐「夏帆ちゃん、立花はストレス発散のサンドバッグじゃないのよ? やめてあげて。」

百瀬「うふふ。夏帆ちゃんは、立花くんのことが大好きなんですね。」


 不知火は、黙ってジッと百瀬を冷たい眼差しで睨み始める。


笹原「あわわわ!? な、凪先輩、今すぐに謝ってください! 早く!」

暁「今の夏帆は、ストレス溜まりまくってるので、街の一つや二つは簡単に破壊するレベルですよ!?」

笹原「「アホなこと言ってすみませんでした!」と! 早く!!」

百瀬「え? 私は本当のことを言っただけでーーー」

暁「ぎゃぁぁぁ!? これ以上、罪を重ねないでくださいぃぃぃ!」

百瀬「ところで部長、立花くんはどうして風邪引いたんですか?」

五十嵐「えっとな、一昨日の休みに友達と川に釣り行って、テンション上がってみんなで川に飛び込んで遊んでたら、風邪引いたってさ。」

笹原「立花くん...。」

暁「あいつ、意外とはっちゃけるタイプだよな...。」

不知火「ふっ...バカなやつ...! 川に飛び込んだ程度で風邪引くなんて。やっぱり地味男は、クソ雑魚地味男ね。あいつが熱でうんうん唸ってるところを想像したら、面白くなってきたわ。」

笹原「おっ、夏帆のテンションが上がってきました! さすが立花くん!」

暁「テスト期間中の夏帆の気分を上げるなんて...立花、やるなぁ!」

百瀬「立花くんパワー、すごいですね!」

五十嵐「誰からも心配してもらえないなんて...悲しい男だな、立花 涼介は。」

不知火「さて、ストレス発散の地味男がいないのなら、私がここにいる理由はないわね。では、お先に失礼します。」

笹原「こらこら、待ちなさい。ここにいる理由ならありますよ。」

不知火「と、冬華...離して...!」

暁「お前、マジで勉強しないとだぞ。また立花に負けてもいいのか?」

不知火「この前、勉強して勝てなかった...! つまり、もう勉強したってなんの意味もない...! だから、私は勉強しない...!」

笹原「それは、単純に勉強時間が足りなかっただけだよ。中間だって、何度か逃げ出してたでしょ? その時間を勉強する時間に変えれば、今度こそはいけるよ!」

不知火「無理...絶対に無理だから...! それに、今回は別の方法でなんとかするからーーー」

暁「立花に勉強させないのは、やめてやれよ。さすがにそれは可哀想だろ?」

五十嵐「夏帆、それはチートだぞ。正々堂々戦いなさい。部長、許しませんよ。」

百瀬「わからないところは、私たちが教えてあげますから。」

不知火「やだ! 嫌だ嫌だ! 勉強したくない! 離してぇぇぇ!」

笹原「夏帆、ワガママ言わないの。」

暁「ったく、いつの間にこんな勉強嫌いになったのやら?」

五十嵐「ホントよね~。お母さん、この子の将来が心配だわ。」

百瀬「はい。お父さんも心配です。」

暁「あなたたち、逆ですよ? 逆。...いや、逆はダメです! その関係は、ダメですよ!!」

笹原「はいはい。バカなことしてないで、夏帆を止めるの手伝ってくださーい。」

暁「へーい。」
百瀬「はーい。」
五十嵐「はいはい。」

不知火「助けてぇぇぇ!」



ーーー



立花「へ、へ...へっくしょいっ!!」


 同時刻、自室で寝ていた立花は、身体を起こし、脇に体温計を挟さんで熱を測っている。


立花「ん~...まだ鼻がムズムズするな...。あっ、終わった。えっと...おっ、熱は下がってる。体調も、そんなだるくないし。あとは、くしゃみくらいかな~。」

立花「...しかし、暇だな。びっくりするくらい暇だな。なんだろ? いつもいつも学校でわーわーしてたからか、一人でいるのがめちゃくちゃに退屈だな? ん~熱も下がったし、ゲームでもしようかなぁ?」

立花「...先輩たちは、今頃なにしてんだろ? あっ、そういや...今日からテスト期間だし、今はテス勉してるかな? 意外とみんな真面目だからなぁ。夏帆先輩以外は。」

立花「...夏帆先輩は、なにしてるんだろ?」


立花(M)一方その頃、部室では...。


笹原「はっ!? 夏帆がいない!? 部長、夏帆の霊圧が消えました!!」

五十嵐「なんだとぉ!? あの野郎、いつの間に!? 探せぇぇ! なんとしても、奴を探し出せぇぇぇ!!」

百瀬「あらあら、全然気づきませんでした。さすが夏帆ちゃんですね。」

暁「あいつ、いい加減に危機感を持てよな...。」



ーーー



 テス勉という悪魔から逃れ、心地よい風が吹き抜ける屋上へとやってきた不知火は、ベンチに腰掛け、自販機で買った紙パックのイチゴ牛乳を美味しそうにゴクゴクと飲んでいる。


不知火「......っはぁ~。生き返るぅ...。やっぱり、疲れた時は甘いものね。」

不知火「あぁ...これから、またテストという地獄がやってくると思うと...しかも、期末という...。無理、信じたくない...テストがない世界線へと逃げ出したい...。というか、そもそも数学とか現代文とか化学とか、その他諸々も、将来的に絶対に使わないでしょ。私はそっちの道に進むつもりはないし。」

不知火「......私、将来どうするんだろ? 全然考えたことなかったなぁ。」

不知火「...どうするんだろ、私...?」


 ふと、空を見上げる。透き通るような青が、瞳の中に広がっていく。不知火は、しばらくジッと空を見つめる。


不知火「......。」


不知火(M)雲ひとつない、綺麗な青空。私の心は、どんよりと曇ってモヤモヤしている。

不知火(M)たまにやってくる、このモヤモヤ。一体なんなんだろう? なんでモヤモヤしてるんだろう? なんで、この空みたいに、晴れないんだろう?

不知火(M)このモヤモヤは...なんなんだろ...?


不知火「...私、この先も一人ぼっちなのかな?」


 ボソッと小さく呟いた言葉は、ピコーンッというメッセージを受信する音にかき消されていく。不知火はスマホを取り出し、送られてきたメッセージを確認する。


立花[夏帆先輩、ちゃんと勉強してます?]


不知火「......は?」



ーーー



 リビングへと降りてきた立花は、冷凍の唐揚げをチンし終え、テレビを見ながらモグモグと美味しそうに頬張っている。


立花「...ん? はい、もしもし?」

不知火「おいこら、地味男...!」

立花「夏帆先輩、お疲れ様です。どうしたんですか?」

不知火「なんだ、さっきのメッセは...? 喧嘩売ってんのか...!?」

立花「売ってませんよ。今日から、テスト期間でしょ? 他の先輩方は、真面目にテス勉やるだろうなと思ったんですけど...夏帆先輩は、なにしてんだろ?って気になりまして。」

不知火「だったら、もっと他に聞き方ってもんがあるでしょうが...!」

立花「で、今何してるんですか?」

不知火「......テス勉に決まってるでしょ。」

立花「なんですか、今の間は? というか、そもそもテス勉してたら、電話なんてしてきてないですよね?」

不知火「は? どういうことよ?」

立花「夏帆先輩が、他の人がいるところで僕に電話かけてくるとか、ありえないでしょ。どうせ今、テス勉から逃げて一人なんでしょ?」

不知火「うぐっ...!?」

立花「図星ですか?」

不知火「おい、地味男...今すぐに住所を教えろ...! 息の根を止めにいってやる...!」

立花「あの、病人だってこと忘れてません? 優しくしてくださいよ。」

不知火「優しくしてほしいのなら「このクソで地味で情けなくて、可哀想な私めに優しくしてください、夏帆さま」と言え。」

立花「言うわけないでしょ。遠慮しておきます。」

不知火「あんた、ホント生意気になったわよね。」

立花「生意気ではないでしょ。自分の意見をはっきりと言える、可愛い可愛い後輩でしょ?」

不知火「今すぐに鏡見てこい。地味でブサイクな顔しか映んないわよ。」

立花「それは、結構傷つきます。謝ってください。」

不知火「本当のことでしょ。ってか、あんた熱は? 大丈夫なの?」

立花「もう下がりました。今は、くしゃみがたまに出るくらいです。」

不知火「ちぃ...! 50度くらい、熱あればよかったのに。」

立花「遠回しに、死ねって言ってます? ふぅ...ごちそうさまでした。あーおいしかった。」

不知火「あんた、何食べてたの?」

立花「冷凍の唐揚げです。」

不知火「病み上がりに、よくそんなもん食べられるわね...。」

立花「病み上がりだからこそ、パワーつけなきゃですよ。」

不知火「唐揚げ、吐け。」

立花「元気なんで、吐きません。」

不知火「ちぃ...つまんな。地味男、明日は来んの? 学校。」

立花「まぁ、このままの調子なら行きますよ。」

不知火「それはよかった。明日には、私のストレスが発散できるのね。楽しみだわ。」

立花「すいません、明日も熱出す予定なので、休みますね。」

不知火「そしたら、立花 涼子ちゃんの写真を校内中にばら撒くわ。だから、熱出していいわよ。」

立花「夏帆先輩、それはダメですよ!! マジでダメですからね!!」

不知火「うるさっ。おい地味男、私の鼓膜を傷つける気か? いい度胸だな?」

立花「僕の名誉を守るためです!! やったらマジで怒りますからね!」

不知火「安心しなさい、やらないわよ。あんたがいないところでやったって、あんたの反応が見られないからつまらないもん。」

立花「安心できない理由なんですけど...まぁ、やらないならいいや。信じてますからね。というか、そろそろ勉強しに戻らなくていいんですか? 勉強しないと、また僕に負けちゃいますよ?」

不知火「......。」

立花「ん? 夏帆先輩?」

不知火「......。」

不知火(そういえば、いつの間にかモヤモヤが消えてる。なんでだろ? いつ消えたんだろ?)

立花「夏帆先輩~?」

不知火「ん? なによ?」

立花「なによ?じゃないですよ。そろそろ勉強しないと、冬華先輩とかにーーー」

笹原「か~~ほ~~ちゃ~~ん?」

不知火「はっ!? こ、この声は...!?」


 不知火が恐る恐る背後を振り向くと、般若のような顔をした笹原が、不知火を冷たい眼差しで見下ろしている。


笹原「こんなところにいたのね...! 今日という今日は、許しませんからね...!」

不知火「と、と、冬華...お、落ち着いて...!」

笹原「落ち着きません! はい、捕まえた! ほら、部室にいくよ!!」

不知火「い、いやぁぁ! は、離してぇぇぇ!」

笹原「離しません! 可愛い夏帆の願いでも、聞きません! 夏帆の将来のためにも、私は心を鬼にします! 部長、捕らえました!」

五十嵐「はっはっは! 逃げ場のない屋上に逃げ込むなど、バカがやること! 夏帆、お前の負けだ!!」

暁「あーあ、あともうちょい逃げられてたら、今回は見逃してもらえてたのに。」

百瀬「残念ですね、夏帆ちゃん。」

不知火「嫌だぁぁぁ! 勉強したくないぃぃぃ!! 助けてぇぇ!」

立花(あーあ。ってか、先輩たちの声、めちゃくちゃ聞こえてくるし。いつも元気だなぁ、あの人たちは。)

笹原「立花くんじゃーん! もしもーし!」

立花「ん? 冬華先輩、お疲れ様です。」

笹原「風邪、引いたんだって? 熱はどう? 下がった?」

立花「はい。熱も下がって、体調も良くなったので、明日は学校行けると思います。」

笹原「それはよかった! 部室で待ってるからね!」

立花「はい、ありがとうございます。」

笹原「あっ、ちょっと待ってね~!」

立花「ん? はい。」

暁「おっす、立花! 元気してっか!?」

立花「暁先輩ほどじゃないですけど、元気してますよ。」

暁「そりゃ、よかった! つーか、風邪引いたんだって? 熱はどうだ? 下がったか?」

立花「下がりましたってか、さっき冬華先輩が質問したの、知ってるでしょ? なんで同じこと聞くんですか?」

暁「それはよかったぜ! 明日、部室で待ってるからな!」

立花「あの、なにがよかったんですか?」

暁「あっ、ちょっと待てよ! そのままな!」

立花「はいはい。」

百瀬「もしも~し、立花くん元気ですか~?」

立花「元気ですよ、凪先輩。」

百瀬「風邪、引いたって聞きましたよ。熱はどうですか? 下がりました?」

立花「凪先輩も、その質問してたの聞いてたでしょ!? そっちで共有してくださいよ! 何度も聞いてこないでください!」

百瀬「よかった~! 明日、部室で待ってますから。元気な姿、見せてくださいね!」

立花「凪先輩に関しては、マジで何がよかったのかわからないんですけど!?」

百瀬「どうぞ、部長。」

五十嵐「おいーす! 立花、元気してっかー!?」

立花「元気で熱も下がりました。では。」

五十嵐「待て待て待て待て!? なんで!? 部長に対して冷たくない!?」

立花「仏の顔も三度までって言うでしょ? 四度目はありません。では。」

五十嵐「だぁぁぁ!? 待て待て待て! 俺だけ仲間外れにすんなよ!? 質問させてくれよ! なぁ、立ばーーー」


 立花は五十嵐の言葉を遮り、通話を切る。


立花「はぁ...先輩たちは、元気通り越してうるさいな。声聞いてたら、嫌でも元気になってくるよ。」

立花「...あんな先輩たちと一緒にいるんだし、一人が退屈に感じるのは当たり前か。」

立花「ゲームしようと思ってたけど、風邪ぶり返したら嫌だし、今日は大人しくしてるか~。」



ーーー



 時刻は午後7時を過ぎ、部活動を終えた生徒たちがゾロゾロと帰宅していく。
遊部の部室内は、未だに電気が付いており、不知火は机に教科書とノートを広げ、嫌そうな顔をしながらテスト勉強をしている。


不知火「...あ、あの、冬華...。」

笹原「なに?」

不知火「え、えっと...もう、7時過ぎだし、そろそろーーー」

笹原「え? 何言ってるの? 今日は8時まで勉強だよ?」

不知火「は、8時!? あと、一時間も...!?」

笹原「もう7時過ぎてるし、一時間もないよ。ほらほら、ラストスパート頑張ろ!」

不知火「ね、ねぇ...今日は、もういっぱい勉強したから...。そ、そろそろ...ね?」

笹原「ダメ。夏帆は帰っても勉強しないでしょ?」

不知火「す、する! ちゃんとするから!」

笹原「ホントに?」

不知火「ホントに!」

笹原「ホントに?」

不知火「ホント!」

笹原「夏帆、私の目を見て。真っ直ぐちゃんと見て。ホントに、家で勉強する?」

不知火「ホ、ホントに...。」

笹原「ホントに?」

不知火「......し、しません...。」

笹原「よーしよし、よく正直に言ったね! いい子いい子! 正直に言うことは、いいことだよ!」

不知火「そ、それじゃ...!」

笹原「家で勉強しないなら、部室でやるしかないね! さぁ、頑張ろ頑張ろ!」

不知火「と、冬華の鬼ぃぃぃ!!」


 勉強を監視している笹原の後ろでは、暁たちがUNOを楽しんでいる。


暁「諦めろよ、夏帆。今までサボってたお前が悪い。」

五十嵐「お前、そのまんまで将来どうすんだ? 決まってないならないで、勉強しとけば選択の幅は増えるんだから、しないよりしておいた方がいいぞ~。」

百瀬「部長の言う通りですよ、夏帆ちゃん。頑張ってくださいね。」

暁「はい、ドローフォー! 地獄へ落ちろ!」

五十嵐「バカめが! そんなもの効くわけがないだろ! ドローフォー返し!!」

百瀬「うふふ、残念。私も、ドローフォーで。」

暁「嘘でしょ!? ぎゃぁぁぁ!? こんなことってありかよぉぉぉ!?」

不知火「ねぇ、冬華? 冬華も遊びたいでしょ? 遊びたいよね? ここは遊部だし、勉強よりも遊んだ方が、部室も喜ぶと思うんだ。今日はいっぱい勉強したし、私たちもーーー」

笹原「ダーメ♡ 私は、心を鬼にすると決めたの♡ さぁ、誘惑に負けないように、集中しましょうね~。」

不知火「い、いや...! もうこれ以上、頭に入らない...無理...!」

笹原「夏帆ちゃんや...限界というものは、超えるものなのですよ? さぁ、続けなさい。」

不知火「うぅ...! 誰でもいいから、助けてぇぇぇぇ!!」
















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