上 下
22 / 53
過去作品<抜粋版>

(22)「お母さんの口説き方…」

しおりを挟む
「うっ、あっ、いいっ、もっと、もっと、あぁ、いいの、あんっ、あっ、あっ、あああぁぁ!!」

寝室に響き渡る、母の絶叫。

もうすぐ0時を迎えるというのに、身体は淫らな欲望を満たすため、男性を求め続けました。

しかし、私の傍に、男性はおりません。

(はぁ、はぁ、また、イッちゃった…。)

覚えているだけで、もう5回は登り詰めていました。

(こんなにしたら、身体がおかしくなっちゃう…。けど、まだ、やめたくない…。)

その日は夫が出張でした。

そして息子も、不在でした。

「もう少しだけ、頑張ってね…。」

1人だけの寝室で、あるモノに語り掛けます。

そして、そのモノに軽くキスをして、また私の秘めた部分の奥深くに沈めていきました。

『昨夜は7回もしてしまいました。けど、やっぱり寂しいですね。』

翌朝、SNSに投稿すると、それを待っていたかのように大量のメッセージが届きました。

『息子だけでは本当の喜びは見つかりませんよ。』

『貴女はようやく気づいたのですよ。』

『新しい喜びを求めてください。』

『息子だけ彼女がいるのは不公平ですよ。』

そして、一番多かったメッセージがこちらです。

『付き合ってください。』

以前の私なら、挨拶程度にお相手をして、SNS上でのお友達、で終わらせるはずでした。

しかし、帰らない息子、そしてその原因となっている若い娘の存在が、私の理性を壊していました。

『どういう方かわかりませんので、まずは色々知ってから、考えさせてくださいね。』

交際を申し込んできた方々には、ほぼ同じようなお返事をしました。

その日を境に、DMの通数は数倍に跳ね上がりました。

『おはよう、恵子さん。』

朝の挨拶に始まり、寝る直前まで、複数の男性と連絡を交わす日々でした。

中でも熱心な方は、事あるごとに連絡をしてくれます。

私が忙しくて返信をしなくても、次々と話題を提供してくれます。

『今日はこんなランチでしたよ。是非、恵子さんとご一緒したいですね。』

『恵子さんはお酒は好きですか?自分のお気に入りは〇〇なんですよ。』

『今は出張で函館にいます。この夜景を恵子さんと一緒に観たいですね。』

もちろん、卑猥なメッセージも送ってくる方も、中にはたくさんおりました。

しかし、色々なエピソードや写真を添えて送られてくる方のメッセージに、嫉妬で荒んでいた心は、徐々に癒されていきました。

彼らに対しては、もう一つある感情が芽生え始めます。

(どんな人なんだろう…。会って、みたい、な…。)

そしてその感情の芽生えをきっかけに、私はその方々を自然と求めるようになっていきました。

(今日は将希さん、連絡遅いな…。)

(Bさんは昨日遅かったみたいだけど、体大丈夫かな?)

(武美君ったら、またこんな時間にメッセージして…。模試はどうなってるのよ…。)

(和彦さんって、地元は四国なんだ?今度一緒に行こうって…。私、結婚してるのに…。)

新着メッセージの通知が届くたび、心が躍ります。

(あっ、〇〇さんだ!)

お仕事中も、欠かさずにチェックし、おトイレに行くふりをしてお返事をするほどになっていました。

まるで、お付き合いを始めたカップルのようでした。

実際、周囲からは浮ついているように見えていたのかもしれません。

「恵子ちゃん、男でも出来た?」

特にそういうことに敏感な梶田さんからは、何度も質問をされた記憶があります。

「えっ、どうしてですか?」

「最近、よく何度もトイレに行くから。男と連絡取り合ってるのかなと思ってね。」

(この人、いつもいつも、鋭すぎる…。)

「息子ですよ。大学の事で色々あって…。」

「そうなんだ…。それならいいけど…。何かあったら相談するんだよ?」

「はい、そのときがあったら、ですけどね。」

ただ、よくよく考えるとこの時に相談をしていたら、人生は大きく変わっていたのかもしれません。

もちろん、当時はその事を話すつもりは微塵もありませんでした。

(本当に男の人と連絡取り合ってるなんて言ったら、何を言われるか…。しかも、こんなにたくさんの人と…。)

頻繁に連絡を取り合っている人だけでも6人はいました。

数回のメッセージを交わしただけの人を含めると、30人は優に超えていました。

今後も継続する事を考えるともっと増えていくのは確実でした。

今更ですが、異常な事でした。

しかし、ずっと息子だけを見続けてきた私には、それが非常に心地よい世界でした。

(ゆうちゃんとは相思相愛だけど、やっぱり私から尽くすことが圧倒的に多いから…。)

逆に、SNSで知り合った男性の皆さんは、無償で私に愛を注いでくれているように感じました。

もちろん、無償、のはずがないことも薄々は気付いていましたが、それが気にならないほど、皆さんは優しく接してくれました。

そしてついに、一線を越える日がやってきました。

『そろそろ恵子さんと話してみたいです。僕はいつでも大丈夫だから、ここに連絡してね。』

そこにはLINEと携帯番号が書かれていました。

(ずっと連絡してくれてる人だし、もういいかな…。誠実な人みたいだから…。)

彼は、〇〇(SNSでの名前)と言いました。

最初は緊張のあまり、何も話せませんでしたが、彼自身が営業マンということもあり、優しく会話を誘導してくれました。

気付いたときには1時間以上経っていてびっくりした事を覚えています。

そしてここから彼との交際は急激に進展していくことになります。

朝と夜、そして彼が営業の合間の移動をするとき、必ず私に連絡をくれました。

私も、周囲に人がいないときには必ず電話に応じていました。

恋人、という関係にはありませんでしたが、私の中では、それに近い存在になっていきました。

それからほどなくして、彼からのお誘いがありました。

「えっ、けど…。まだ会ったこともないのに、ホテルなんて…。」

「えっ、ホテル?」

「だって、2人きりって言うので…。えっ、あっ、ごめんなさい!私の勘違いよね?」

「ふふっ、勘違い、じゃないですよ。もちろん、そこに行けたら僕は最高に嬉しいですよ。」

「…。」

「どうします?まだ、やめときます?」

「じゃあ、会ってから、どうするかは…。それでも良かったら…。」

ホテルはともかく、会ってみたいという欲求には、もう勝てませんでした。

そして数日後、ついに彼とお会いしました。

「ヒデと呼んでください。」

そう名乗った彼と、私はある場所へ向かい、そして、一つになりました。

ただ、この日の出会いは、身体こそ満たされたものの、心まで満たしてくれるものではありませんでした。

そのことが、余計に私の欲望を膨れあがらせたのだと思います。

(こんなに優しくしてもらっているのに、〇〇さんにも会わないのは失礼よね…。)

(あの子も、私と会わなかったら受験に失敗するかもしれないし…。)

そんな理由を作りながら、私は次々と、見知らぬ男性との逢瀬を繰り返すことになりました。

(全部、ゆうちゃんが悪いの…。あんな娘と一緒にいるから…。お母さん、こんなにモテるんだからね…。)

最初はそんな思いで抱かれていました。

ただ、いつしかそれが単なる言い訳であることに気付きました。

(私は、こんな風にされることが大好きなんだ…。)

今もお付き合いしている人を身体の奥深くで受け止めた瞬間、そう実感しました。

『それが本当の恵子さんなのですよ。』

(…。そう思います…。)

パスワード⑤ 【 o 】
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

騎士と戦乙女が真の儀式を演じるまで

BL / 連載中 24h.ポイント:384pt お気に入り:105

僕らに宇宙は狭すぎる

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:33

妻が座っていた~浮気?とバレた僕と彼女の奇妙な18週間

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:626pt お気に入り:22

終われない人々の国

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1

闇天

ホラー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:8

とある母娘の話

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:4

夫と愛人が私を殺す計画を立てているのを聞いてしまいました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:639pt お気に入り:84

処理中です...