23 / 53
過去作品<抜粋版>
(23)「お母さんのゆめ…」
しおりを挟む
(え…。)
血の気が引いていくのがはっきりわかりました。
「うそ、でしょ…。」
駅のトイレで1人呟きます。
私の手には、妊娠検査薬が握られていました。
その検査薬は、結果を突き付けるように、くっきりと赤い線が浮き出ていました。
心当たりは、もちろんありました。
駅のトイレで試薬を使った訳は一刻も、早く安心を得たかったからでした。
しかし、結果は全くの逆でした。
(ゆうちゃん…。)
真っ先に浮かんだのは、息子の顔でした。
もし、赤い線を浮かび上がらせる元になっているのが彼だったら、こんな気分にはなっていなかったと思います。
ただ、実の息子の子を宿してしまった不安感はあったと思います。
しかし、現実は彼への謝罪の念だけでした。
(お母さん、別の人の赤ちゃんを…。)
間違いであって欲しい。
そう願いながら、別の検査キットを購入し、自宅で試しましたが、結果は同じでした。
(ずっと気付かなかったなんて…。本当に私は馬鹿ね…。)
息子の彼女に嫉妬し、他の男性に救いを求めた結果が、目の前の赤い線でした。
(夫を裏切って、そしてゆうちゃんまで裏切った…。その報いね…。)
不貞の結末が、幸福であるとは思っていませんでした。
ただ、それがわかっていても、そこに救いを求めるしかありませんでした。
連絡を取り合っただけの男性はもう数え切れないほどおりました。
実際にお会いした方も30人は超えていたと思います。
そしてその中の3分の1の方々と、身体を交えました。
ただ、これだけでしたら、こんな事になっていなかったと思います。
(あの人に会わなかったら…。)
彼は、私にとって特別過ぎました。
初めて女の喜びを教えてくれたのは息子でした。
その喜びを遥かに超える快楽を、彼は私に刻み込みました。
もちろん、様々な快楽で私を狂わせた方は他にもおります。
若い男性の激しい交わり、成熟した大人のゆったりとした抱擁、サディスティックな刺激、そして言葉には出来ない壮絶な出会い。
どれも数年前までの私には刺激的過ぎるものでした。
(けど、和彦さんは、特別だった…。)
身体すべてが蕩けてしまうようなキス、果てしなく続くと思わされるほどの精力。
そして、何よりも私を魅了したものは、息子よりも力強く、そして大きい、男性そのものでした。
(もうこんなに予定日を過ぎていたのに全く気付いていなかった…。)
彼の部屋のカレンダーを見るまで、私は全く気付いていませんでした。
それほどまでに私は和彦さんに夢中でした。
夢中にされられていました。
息子を寝取られ、その心の隙間に入り込んだ男性が、息子以上の魅力を持っていたら、こんなことになるのはもはや必然だったのかもしれません。
「和彦さん…。私、産みたいの…。」
そう呟いて、我に返ります。
(だめよ、私には夫がいるの…。それに、ゆうちゃんだって…。)
そこまで考えて、ふと気づきました。
(けど、本当にそうなの…。女として、もう必要とされていないじゃない…。だったら、このままあの人のところに行った方が…。私は、幸せ?)
そう考えてしまった瞬間から、私の気持ちはもう彼へ向かっていました。
(和彦さんとなら、年齢も釣り合うよね。)
(この前だって、妻と偽って、取引先のパーティに出席したじゃない。)
(美沙ちゃんは若いし、きっと長くは続かないはずよ。)
(それに、一番愛しているって言ってくれたじゃない…。)
心の中は、自分に都合の良いことで埋め尽くされていきました。
(離婚は大変だけど、その瞬間だけの辛抱だから…。あとはずっと幸せが、待ってるの。)
「和彦さん、ずっと一緒に暮らしたいの。あなたの赤ちゃん、産ませて欲しいの。」
一旦進み始めた気持ちは、もう留まることはありませんでした。
血の気が引いていくのがはっきりわかりました。
「うそ、でしょ…。」
駅のトイレで1人呟きます。
私の手には、妊娠検査薬が握られていました。
その検査薬は、結果を突き付けるように、くっきりと赤い線が浮き出ていました。
心当たりは、もちろんありました。
駅のトイレで試薬を使った訳は一刻も、早く安心を得たかったからでした。
しかし、結果は全くの逆でした。
(ゆうちゃん…。)
真っ先に浮かんだのは、息子の顔でした。
もし、赤い線を浮かび上がらせる元になっているのが彼だったら、こんな気分にはなっていなかったと思います。
ただ、実の息子の子を宿してしまった不安感はあったと思います。
しかし、現実は彼への謝罪の念だけでした。
(お母さん、別の人の赤ちゃんを…。)
間違いであって欲しい。
そう願いながら、別の検査キットを購入し、自宅で試しましたが、結果は同じでした。
(ずっと気付かなかったなんて…。本当に私は馬鹿ね…。)
息子の彼女に嫉妬し、他の男性に救いを求めた結果が、目の前の赤い線でした。
(夫を裏切って、そしてゆうちゃんまで裏切った…。その報いね…。)
不貞の結末が、幸福であるとは思っていませんでした。
ただ、それがわかっていても、そこに救いを求めるしかありませんでした。
連絡を取り合っただけの男性はもう数え切れないほどおりました。
実際にお会いした方も30人は超えていたと思います。
そしてその中の3分の1の方々と、身体を交えました。
ただ、これだけでしたら、こんな事になっていなかったと思います。
(あの人に会わなかったら…。)
彼は、私にとって特別過ぎました。
初めて女の喜びを教えてくれたのは息子でした。
その喜びを遥かに超える快楽を、彼は私に刻み込みました。
もちろん、様々な快楽で私を狂わせた方は他にもおります。
若い男性の激しい交わり、成熟した大人のゆったりとした抱擁、サディスティックな刺激、そして言葉には出来ない壮絶な出会い。
どれも数年前までの私には刺激的過ぎるものでした。
(けど、和彦さんは、特別だった…。)
身体すべてが蕩けてしまうようなキス、果てしなく続くと思わされるほどの精力。
そして、何よりも私を魅了したものは、息子よりも力強く、そして大きい、男性そのものでした。
(もうこんなに予定日を過ぎていたのに全く気付いていなかった…。)
彼の部屋のカレンダーを見るまで、私は全く気付いていませんでした。
それほどまでに私は和彦さんに夢中でした。
夢中にされられていました。
息子を寝取られ、その心の隙間に入り込んだ男性が、息子以上の魅力を持っていたら、こんなことになるのはもはや必然だったのかもしれません。
「和彦さん…。私、産みたいの…。」
そう呟いて、我に返ります。
(だめよ、私には夫がいるの…。それに、ゆうちゃんだって…。)
そこまで考えて、ふと気づきました。
(けど、本当にそうなの…。女として、もう必要とされていないじゃない…。だったら、このままあの人のところに行った方が…。私は、幸せ?)
そう考えてしまった瞬間から、私の気持ちはもう彼へ向かっていました。
(和彦さんとなら、年齢も釣り合うよね。)
(この前だって、妻と偽って、取引先のパーティに出席したじゃない。)
(美沙ちゃんは若いし、きっと長くは続かないはずよ。)
(それに、一番愛しているって言ってくれたじゃない…。)
心の中は、自分に都合の良いことで埋め尽くされていきました。
(離婚は大変だけど、その瞬間だけの辛抱だから…。あとはずっと幸せが、待ってるの。)
「和彦さん、ずっと一緒に暮らしたいの。あなたの赤ちゃん、産ませて欲しいの。」
一旦進み始めた気持ちは、もう留まることはありませんでした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
82
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる