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愛無し彼氏
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電気代や水道代、普段の食費等でこの前お母さんに送金してもらった10万円は半分くらい使ってしまった。
…給料日まであと三週間。
…まぁ何とか持つ、か…。
そう思い悩みながら、しばらく通帳と睨めっこをする。
あ、でも、柳瀬さんと食事に行く約束しちゃったからな…なるべく安くて美味しいお店にしよう。
そう思っていると…
「…!」
ふいに、玄関でガチャ、と鍵を開けるような音がしたから。
…あれ、もしかして…。
そう思って、鞄の中に通帳を仕舞って、リビングの入口に目を遣ると…
「やっほー鏡子ちゃん!」
「!」
何故か、夜の11時という時間帯に、広喜くんが突然やって来た。
「っ、え、どうしたの広喜くん!」
ってか酒!酒臭い!
絶対これお酒いっぱい飲んだでしょ!
そう思って思わず顔をしかめると、そんなあたしに構わずに広喜くんが上機嫌で言った。
一つの茶封筒を、ポケットから取り出して。
「今日は!鏡子ちゃんにプレゼントがありまーす!」
「?…何?」
「あいコレ!50万!」
「!…え、」
そう言って渡されたのは、お金が入っているらしいそれ。
恐る恐る中身を見てみると、広喜くんが言った通り、そこには本当にお金が入っていて…。
え、マジじゃん!
予想外の出来事に思わず目を丸くしたあたしは、びっくりしながら広喜くんに言った。
「っ、何これ!どうしたの!?突然こんな大金っ…」
だって先週は、あんなにお金無さそうだったのに…!
あたしがそう聞くと、上機嫌のまま広喜くんが言った。
「びっくりだろ?それ、俺がちゃんと働いて稼いできた金だから!」
「!…え、」
「あと何十万だっけ?んー…まぁいいや。鏡子、今日泊めて」
「…それは構わないけど」
あたしは広喜くんの言葉にそう返事をしながら、なんとなく、手元のお金に視線を落とす。
…働いて稼いだお金、って…言うけど…本当かな。なんか、信じられないな…。
だってこの前、広喜くんの浮気現場を目撃してるわけだし…これ、もしかしてその子を騙して貰ったお金、かも…。
たった一週間で、広喜くんがちゃんと働いてお金を稼いでくるなんて…あたしには思えない。
あたしは独り静かにそう思うと、広喜くんに言った。
「…これ、受け取れないよ」
「っ、はぁ!?何で!」
「あたしは、本当にちゃんと広喜くんが働いて稼いだお金で、返してほしい」
「っ、」
あたしはそう言うと、ハイ、とその茶封筒を広喜くんに返す。
だけど、あたしの言葉に納得がいかないらしい広喜くんは、あからさまな不機嫌な態度で言った。
「…何だそれ。俺が働いてないって言いてぇの?」
「そういうわけじゃ…だって広喜くんいつもバイト続かないし、だからその50万だって何か怪しいっていうか…」
「怪しくねーよ。ちゃんと働いてきたっつってんだろーがよ、」
「!」
広喜くんの低い声、乱暴な言葉に思わずあたしは肩をビク、と震わせる。
でも、それでもこのお金はなんか受け取れない。怖い。
だからあたしは、広喜くんの顔は見れないけれど、見れないままこの際だから勇気を出して言った。
「っ、結婚するなら、広喜くんにはこれからちゃんとしてほしいの!バイトが1ヶ月も続かないなんてのは困るの!」
「!」
「それにっ…この際だから言うけど、あたしの財布から勝手にお金を抜き取るのもやめてほしい!あたしだって毎日いっぱいいっぱいなんだから!」
「は?それ俺じゃねぇし、」
「広喜くんじゃないなら誰なの!?会社の人達はそんなことしないよ!」
「…っ、」
あたしはそこまで言うと、やっと吐き出せた心のモヤモヤに、少しだけスッキリする。
…だけど、それも束の間。
あたしは本気で広喜くんを怒らせてしまったようで、次の瞬間、左頬に突然張り手が飛んできた。
「っ…!?」
一瞬、何をされたのかわからなかったけれど、広喜くんに殴られたんだとわかるまでに時間はかからなかった。
じんじんと痛み出す左頬をあたしが抑えるように手で触れると、そんなあたしに広喜くんが言った。
「さっきから聞いてれば言いたいこと言ってくれるじゃん。お前そんなに言う奴だっけ。それとも、俺からプロポーズされたからってもしかして調子に乗ってる?」
「そ、そんなんじゃ…」
「これ以上好き勝手言ってみろ。俺に逆らうならもう喋れなくするぞ、」
「!…っ、」
広喜くんはそう言って、真剣な顔で、また片手を振り上げるから。
そんな広喜くんにさすがに恐怖が頂点に達したあたしは、思わずギュッと目を瞑って、広喜くんに言った。
「っ…ごめんなさい!」
「…」
「もう、言わないから。広喜くんに従うから。殴るのだけはやめて、お願い」
これ以上は、全部が全部、痛い。
あたしが謝ると、広喜くんは満足そうに片手を下ろして、今度はとんでもない言葉を口にした。
「そ?じゃあ鏡子、早速だけど、お前から借りた金、あれ全部チャラにして」
「!!…えっ」
「えっ、て。何、なんかまだ文句ある?いいよ、聞いてやるよ」
その代わり、と。
また片手を上げるから、殴られるのが怖くて、嫌で嫌で、あたしは納得がいかないながらも、その言葉に渋々頷く。
「……わかった」
別れた方がいい。
のに…別れない、のは…広喜くんに大金を貸したままだから、っていうのもあったんだけど。
うまく、ずっと、丸め込まれている気がする。
愛されているような気がしない。
そう思っていると…
「鏡子、シよ?せっかく俺来てるんだから」
「えっ、や、ちょっと待っ…!」
「待ってとか無し。俺ら夫婦なんだから」
そう言って、乱暴に掴まれた腕。
仕事で、疲れてるのに。
広喜くんはあたしの返事を聞く耳持たず、そのまま寝室まであたしを引っ張った…。
…給料日まであと三週間。
…まぁ何とか持つ、か…。
そう思い悩みながら、しばらく通帳と睨めっこをする。
あ、でも、柳瀬さんと食事に行く約束しちゃったからな…なるべく安くて美味しいお店にしよう。
そう思っていると…
「…!」
ふいに、玄関でガチャ、と鍵を開けるような音がしたから。
…あれ、もしかして…。
そう思って、鞄の中に通帳を仕舞って、リビングの入口に目を遣ると…
「やっほー鏡子ちゃん!」
「!」
何故か、夜の11時という時間帯に、広喜くんが突然やって来た。
「っ、え、どうしたの広喜くん!」
ってか酒!酒臭い!
絶対これお酒いっぱい飲んだでしょ!
そう思って思わず顔をしかめると、そんなあたしに構わずに広喜くんが上機嫌で言った。
一つの茶封筒を、ポケットから取り出して。
「今日は!鏡子ちゃんにプレゼントがありまーす!」
「?…何?」
「あいコレ!50万!」
「!…え、」
そう言って渡されたのは、お金が入っているらしいそれ。
恐る恐る中身を見てみると、広喜くんが言った通り、そこには本当にお金が入っていて…。
え、マジじゃん!
予想外の出来事に思わず目を丸くしたあたしは、びっくりしながら広喜くんに言った。
「っ、何これ!どうしたの!?突然こんな大金っ…」
だって先週は、あんなにお金無さそうだったのに…!
あたしがそう聞くと、上機嫌のまま広喜くんが言った。
「びっくりだろ?それ、俺がちゃんと働いて稼いできた金だから!」
「!…え、」
「あと何十万だっけ?んー…まぁいいや。鏡子、今日泊めて」
「…それは構わないけど」
あたしは広喜くんの言葉にそう返事をしながら、なんとなく、手元のお金に視線を落とす。
…働いて稼いだお金、って…言うけど…本当かな。なんか、信じられないな…。
だってこの前、広喜くんの浮気現場を目撃してるわけだし…これ、もしかしてその子を騙して貰ったお金、かも…。
たった一週間で、広喜くんがちゃんと働いてお金を稼いでくるなんて…あたしには思えない。
あたしは独り静かにそう思うと、広喜くんに言った。
「…これ、受け取れないよ」
「っ、はぁ!?何で!」
「あたしは、本当にちゃんと広喜くんが働いて稼いだお金で、返してほしい」
「っ、」
あたしはそう言うと、ハイ、とその茶封筒を広喜くんに返す。
だけど、あたしの言葉に納得がいかないらしい広喜くんは、あからさまな不機嫌な態度で言った。
「…何だそれ。俺が働いてないって言いてぇの?」
「そういうわけじゃ…だって広喜くんいつもバイト続かないし、だからその50万だって何か怪しいっていうか…」
「怪しくねーよ。ちゃんと働いてきたっつってんだろーがよ、」
「!」
広喜くんの低い声、乱暴な言葉に思わずあたしは肩をビク、と震わせる。
でも、それでもこのお金はなんか受け取れない。怖い。
だからあたしは、広喜くんの顔は見れないけれど、見れないままこの際だから勇気を出して言った。
「っ、結婚するなら、広喜くんにはこれからちゃんとしてほしいの!バイトが1ヶ月も続かないなんてのは困るの!」
「!」
「それにっ…この際だから言うけど、あたしの財布から勝手にお金を抜き取るのもやめてほしい!あたしだって毎日いっぱいいっぱいなんだから!」
「は?それ俺じゃねぇし、」
「広喜くんじゃないなら誰なの!?会社の人達はそんなことしないよ!」
「…っ、」
あたしはそこまで言うと、やっと吐き出せた心のモヤモヤに、少しだけスッキリする。
…だけど、それも束の間。
あたしは本気で広喜くんを怒らせてしまったようで、次の瞬間、左頬に突然張り手が飛んできた。
「っ…!?」
一瞬、何をされたのかわからなかったけれど、広喜くんに殴られたんだとわかるまでに時間はかからなかった。
じんじんと痛み出す左頬をあたしが抑えるように手で触れると、そんなあたしに広喜くんが言った。
「さっきから聞いてれば言いたいこと言ってくれるじゃん。お前そんなに言う奴だっけ。それとも、俺からプロポーズされたからってもしかして調子に乗ってる?」
「そ、そんなんじゃ…」
「これ以上好き勝手言ってみろ。俺に逆らうならもう喋れなくするぞ、」
「!…っ、」
広喜くんはそう言って、真剣な顔で、また片手を振り上げるから。
そんな広喜くんにさすがに恐怖が頂点に達したあたしは、思わずギュッと目を瞑って、広喜くんに言った。
「っ…ごめんなさい!」
「…」
「もう、言わないから。広喜くんに従うから。殴るのだけはやめて、お願い」
これ以上は、全部が全部、痛い。
あたしが謝ると、広喜くんは満足そうに片手を下ろして、今度はとんでもない言葉を口にした。
「そ?じゃあ鏡子、早速だけど、お前から借りた金、あれ全部チャラにして」
「!!…えっ」
「えっ、て。何、なんかまだ文句ある?いいよ、聞いてやるよ」
その代わり、と。
また片手を上げるから、殴られるのが怖くて、嫌で嫌で、あたしは納得がいかないながらも、その言葉に渋々頷く。
「……わかった」
別れた方がいい。
のに…別れない、のは…広喜くんに大金を貸したままだから、っていうのもあったんだけど。
うまく、ずっと、丸め込まれている気がする。
愛されているような気がしない。
そう思っていると…
「鏡子、シよ?せっかく俺来てるんだから」
「えっ、や、ちょっと待っ…!」
「待ってとか無し。俺ら夫婦なんだから」
そう言って、乱暴に掴まれた腕。
仕事で、疲れてるのに。
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