20 / 36
20.義母の過去1(義母視点)
しおりを挟む私はバラレンド侯爵夫人、ローズ。
私は今窮地に立たされている。
「奥様、使用人や領地の警護団へ払う給金が足りません」
「奥様、先月購入した高級ブティック店から催促の文が届いています」
「奥様、領民達がそんなに税を払えないと訴えています」
……どうしてなのっ!?
初めの1ヶ月くらいは税を引き上げた分や使用人が減った分、収入が増えた。
しかし料理をしたり洗濯する使用人がいない為毎日外食したり、ドレスも使い捨てをしていたらあっという間にお金は無くなってしまった。
しかも次の月には、身体を壊したやら税が高すぎて払えないやら騒ぐ領民が増え、税を引き上げたのにも関わらず収入が増えなかった。
それでもこんなにお金が無いのはおかしい…。
蓄えは元々それなりにあったはずだ。
もしかしてフレミアの奴、お金を持って逃げたのか…!?
「オディロン!フレミアが金を盗んでいないか調べなさい!!」
執事に叫ぶと、執事は
「フレミア様は1ダリーも持って行っていませんよ。奥様も見たでは無いですか、金庫にある紙幣の山を」
確かに、フレミアが出て行ってからすぐに持ち逃げされていないか金庫を確認した。
「では!!なぜこんなにも金が無いのだ!?」
「あれ?ご存知無かったのですか?ジュリー様ですよ。ジュリー様がアボン様に2500万ダリーを渡してしまったのです」
「にっ2500万ダリーッッ!?」
侯爵家の今ある全財産だ。
いつのまに……!?
「どっどっどういう事っっ!?いつそんな事を!!なぜオディロンはジュリーを止めなかったのだ!」
「奥様が了承していると思ったのですよ。確か1ヶ月程前だったと思います」
「もう良いわっっ!!ジュリーを呼びなさい!!」
「かしこまりました」
オディロンが礼をして出て行く。
……ここまで上手く行ってたのになぜこんな事になってしまったのだろうか……
ーーーーー約30年前
私は元々は今は無き貧乏男爵家の三女だった。
跡を継ぐ事も無ければ、今にも潰れかけの男爵家の三女を望む貴族はいなかった。
そんな私が生き残る為には、平民だが金持ちの商人の元へ嫁ぐか、貴族の屋敷へ奉公へ行くかのどちらかだった。
平民なんかに嫁ぎたくない。
高位貴族の家へ奉公へ行き、貴族との繋がりを広げそこで良い人と出逢おう。
産まれが良いと言うだけで苦労もしていない女達なんかに負けたく無い。
実家には使用人が少なかったので一通り家事はできたし、何かを暗記する事や読み書き計算も割と得意だったので、侯爵家の使用人として働く事が決まった。
"ここで何としてでも這い上がって見せる…!!"
そう決意して働き始めた。
侯爵は中々難しい人だったが、褒めたたえおだてて自分を卑下する様にしていたら気に入って貰え、ただの使用人から専属のメイドになった。
そして身体の関係も持つようになった。
(ふふ、侯爵夫人は目の前ね…手始めに息子を手玉に取っておこうかしら)
そう思い侯爵に坊っちゃまの教育係りになりたいとねだると、すんなりとなる事ができた。
10歳の少年を少しずつ少しずつ私色に染めるのは楽しかった。
「私だけが貴方の味方」
「貴方には私が必要」
「貴方は私がいないと何もできない」
毎日そう言って抱きしめていた。
父親である侯爵に暴言暴力を振るわれている傷付いた少年はすぐに私を心の拠り所としたものだ。
侯爵も、息子も私に夢中。
もうこの侯爵家は私のものだ。
そう思っていたが、ある女が来た事で全てが狂い始める。
坊ちゃまが結婚し屋敷に来た女だ。
前侯爵夫人は気が弱く、私と侯爵の関係に薄々気付きながら何も出来なかったが、この女は偉そうに何かと私と侯爵の関係を怪しんだ。
そんな中、私の妊娠が分かった。
勿論、侯爵との子どもだ。
坊っちゃまとは身体の関係は無かった。
私が侯爵家へ来てから侯爵と関係を持ち始めて約15年…。
今まで子どもは1度もできた事が無かったがまさか今妊娠するなんて…!!
しかしこれで侯爵夫人を追い出し、私が侯爵夫人…!?
そうなればついでに憎たらしい坊ちゃまの嫁も追い出してやるわ!!
ふふっ!侯爵もきっと大喜びされるわっ!!
そう思い嬉々として侯爵に妊娠を報告しに行くと、想像と違った答えが返ってきたのだった。
74
お気に入りに追加
8,064
あなたにおすすめの小説
私はモブ扱いで結構です
さーちゃん
恋愛
みなさん、はじめまして。
私、リュミエル・フォーレリクスといいます。
この国──パルヴァンにおいて、第二王子殿下の護衛騎士を任されています。女性でも、実力があれば身分に関係なく重用するという完全実力主義なお国柄なためか、気がついたら今の立場です。なんでこうなった。
それはそうと。この世界、とある乙女ゲームの舞台だったんです。
ええ、そうです。“乙女ゲーム”です。『スピリチュアル・シンフォニー~宝珠の神子は真実の愛を知る~』というタイトルでした。
その“ゲーム”も、つい先頃終わり、平穏が戻ってくると思っていたのですが……………どうにも、王候貴族との関わりは避けられそうにないようです。
え?普通は憧れるものじゃないかって?
私は平々凡々な生活をしたいのです。それに結婚願望もありませんので問題ありません。護衛騎士な時点でもう平穏じゃなくなっているのに、これ以上悪目立ちしたくありません。
なのに。それなのに………!何故に私は隣国の王子様に熱烈なアプローチをされているのでしょうか。
この王子殿下、前作のゲームの攻略対象だった方ですよね?そもそもついこの間、とある騒動を解決するにあたって協力しましたもんね!
疑問なのは何故に我が主の兄君──王太子殿下から「お前のことを単なる騎士だと思ったことはない」なんて言われるのでしょうか。
その他あちこちからやたら口説かれていると感じるのは気のせいであって下さい。スカウト的なものだと思いたいです。まあ、それも迷惑なのですが。
みなさん、私は単なるモブ扱いでいいんです。
お願いですから、他のご令嬢とくっついて下さい。そうでなくても周囲の方々からの嫉妬の視線やら嫌がらせやらが鬱陶しいので。
これは前世の経験を活かして、王族専任の護衛をこなす自称モブな少女騎士が、主である王子の兄や、貴族令息たちに構い倒される物語です。
前作『悪役令嬢らしくヒロインに嫌がらせをしているのですが、王太子殿下にリカバリーされている件』のスピンオフです。
一応、種類としては恋愛にしましたが、またファンタジー色が強いかもしれません。
※今回は流血沙汰な表現とかが入る予定。たぶん、エロは無いです。
元稀代の悪役王女ですが、二度目の人生では私を殺した5人の夫とは関わらずに生き残りたいと思います
景華
恋愛
リザ・テレシア・ラブリエラは1度目の人生で殺された。
夫達以外の一人の男性を愛してしまった彼女の、5人の夫の手によって。
首謀者は不明。
五人の夫もその場で命を絶ち、地獄絵図と化した。
“もう一度だけチャンスを上げましょう。真実の愛を見つけて、どうか幸せに”
という謎の声に導かれ、リザは人生を巻き戻され、二度目のリザを生きることに。
「人生のやり直し、ね」
なんとか18歳まで生きてきたものの、二度目の人生には異性の求婚、求愛の言葉が「ピー」という自主規制音になってしまう、【プロポーズ無効化スキル】なんてものが備わっていた!?
加えて婚約者候補として、一度目の人生の夫のうち4人と会うことになったり、閨授業の講師として残りの一人の夫が来ることになったり、「いきなり詰んだ……!!」な状態に。
二度目の人生こそ生き残るため。
そして幸せになるため。
幼馴染で護衛騎士のセイシスを連れて、婚約者候補達のフラグを折ろうと奮闘する。
自分を殺すことをたきつけた首謀者であろう5人の一度目の人生の夫の中の一人は誰なのか。
そして一度目の人生、彼女がただ一人本気で愛してしまった男とは?
元悪役王女の、生き残りと国の存亡を駆けた謎解きやりなおし恋愛ファンタジー!!
小説家になろう、カクヨムでも公開中。
【完結】これからはあなたに何も望みません
春風由実
恋愛
理由も分からず母親から厭われてきたリーチェ。
でももうそれはリーチェにとって過去のことだった。
結婚して三年が過ぎ。
このまま母親のことを忘れ生きていくのだと思っていた矢先に、生家から手紙が届く。
リーチェは過去と向き合い、お別れをすることにした。
※完結まで作成済み。11/22完結。
※完結後におまけが数話あります。
※沢山のご感想ありがとうございます。完結しましたのでゆっくりですがお返事しますね。
有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい
マルローネ
恋愛
サンマルト王国の王子殿下のフリックは公爵令嬢のエリザに婚約破棄を言い渡した。
理由は幼馴染との「真実の愛」に目覚めたからだ。
エリザの言い分は一切聞いてもらえず、彼に誠心誠意尽くしてきた彼女は悲しんでしまう。
フリックは幼馴染のシャーリーと婚約をすることになるが、彼は今まで、どれだけエリザにサポートしてもらっていたのかを思い知ることになってしまう。一人でなんでもこなせる自信を持っていたが、地の底に落ちてしまうのだった。
一方、エリザはフリックを完璧にサポートし、その態度に感銘を受けていた第一王子殿下に求婚されることになり……。
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~
柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。
大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。
これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。
※他のサイトにも投稿しています
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる