上 下
19 / 36

19.その後の侯爵家(ジュリー視点)

しおりを挟む


「何よ!このパサパサな魚は!パンももっと外はサクサク中はフワフワに焼きなさいよっ!!」


「すっすみませんジュリー様…今までほとんど掃除しかした事なくて…」


「ほんっと役立たずねぇ!給料分ちゃんと働きなさいよ…」


「お給料分………」



目障りな姉と、生意気な使用人達が出て行ってからもうすぐ4ヶ月。


日に日に不満は溜まっていく。


シェフも出て行ってしまい、今まで掃除係をしていた使用人が食事を作るようになったが、これが本当に食べられた物では無い。


掃除をする者もいなくなり、部屋はどんどん汚くなる。


ベットメイクなんて最後にされたのはいつだろうか。


私の身の回りの世話をするメイドも足りなくなり、私の美しい髪も何だかゴワゴワする…


何でこうも何もかも上手くいかないのよ…!!



「ちょっと!オディロン!ちゃんと貴方使用人募集しているのでしょうね!?サボっているんじゃないの!?」


オディロンにはさっさと次の優れた使用人を探すように言っている。


「いいえ、探してはいますが中々条件に合う人材が見つからないのです。それにこれだけ使用人が少ないと私も忙しくて。すみません、ジュリー様」


「オディロン、貴方そう言いながら最近全然屋敷に居ないじゃない!遊び歩いているなら、掃除や食事の用意をしなさいよ!」


すると、オディロンが少し笑って答えた。


「はははっ。ジュリー様は可笑しな事をおっしゃられますね。私が屋敷にいないのは、今までフレミア様がされていた仕事をしているからです。領地の視察、外交、土地の開発状況の確認、各地方の長との話し合い……その他数えきれぬ仕事です。勿論ジュリー様も知っていますよね?」


(そ、そんなに多くの仕事をフレミアお姉様は1人でしていたの…!?)


「あ、あぁそうだったわね。まぁそれなら…しっ仕方の無い事ね。少しでも多くのお金を領民達から集めるのよ。分かったわね!?あ!あと……ワルヤーク伯爵家のアボン様から手紙は届いていないかしら??」


「お金の管理は侯爵夫人がされていますので…。アボン様からの手紙でしょうか。届いていませんでしたよ。では、まだ仕事が残っておりますので失礼します」

静かに扉が閉められる。


(どうしてっ!?どうしてアボン様から手紙が届かないのっ!?あれだけ私に会いたいとか、貴女の事を考えるだけで夜も眠れないとか言っていた癖に…!)


姉様の手紙を奪い取った日にすぐアボン様へ手紙を送ると数日で返事が来た。
なんと素敵な宝石と共に。
それから私に似合いそうだと言ってドレスや宝石をたくさん送ってくださった。

そして私に直接会いに来てくださり、私と婚約したいとすら言ってくださった。

あの素敵な黒い瞳に見つめられ手を握られ、私も貴方の妻になりたいと返事をした。


しかし。
ワルヤーク伯爵がアボン様と私の婚約を認めないと言っているらしいのだ。
流石に伯爵に無断で結婚する事はできない。
ワルヤーク伯爵には借金があって、それを返すと言っている隣国の裕福な貴族令嬢とアボン様を結婚させると言っているらしい。

アボン様は涙ながらに仰った。

「できるなら貴女と駆け落ちしたい。愛していない女性の所へ行くなんて辛いが、ジュリー様に迷惑をかけたく無いから今日はお別れのご挨拶に参ったのです」


(伯爵は何という悪魔なの!お金でアボン様を売るなんて…!しかもその金持ちの女もどうせアボン様の容姿が素敵だから我儘言ったのね…!!醜い女!私がそんな事させないっっ!!)


「アボン様、借金はいくらですか?」

「借金かい?2500万ドリーもあるのだ……恥ずかしながら…」


(にっ2500万ドリー!?高すぎるわ…!でも…2500万ドリーならギリギリこの家にあったハズ…!)


「アボン様ッッ!!借金ならうちが払いますわ!!侯爵家ですもの。そのくらいはした金ですわ。ちょっと待っててください!」

…勿論はした金などでは無いが、アボン様を手に入れる為なら安いものだ。


2500万ドリーを持ってきてアボン様に渡す。


「ほ、本当かい…!?あぁありがとう!ジュリー様、貴女は女神のようだ!家に帰って父を説得して借金を精算したらすぐに結婚しましょう!」






そう言っていたのに。
あの日から全く連絡が無いまま一月が過ぎた。



(何でなの!?お姉様は醜草騎士と幸せそうなのに…!!絶対私の方が素敵な男性と結婚するのだから!!!そういえばあと数日で建国祭ね…。アボン様も来るだろうし…あ、もしかして建国祭で正式にプロポーズ予定なのかしら!?ふふ!私が美丈夫と名高いアボン様に愛されてると知ったらお姉様は悔しがるわね!!!建国祭が楽しみだわ……!!)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はモブ扱いで結構です

さーちゃん
恋愛
みなさん、はじめまして。 私、リュミエル・フォーレリクスといいます。 この国──パルヴァンにおいて、第二王子殿下の護衛騎士を任されています。女性でも、実力があれば身分に関係なく重用するという完全実力主義なお国柄なためか、気がついたら今の立場です。なんでこうなった。 それはそうと。この世界、とある乙女ゲームの舞台だったんです。 ええ、そうです。“乙女ゲーム”です。『スピリチュアル・シンフォニー~宝珠の神子は真実の愛を知る~』というタイトルでした。  その“ゲーム”も、つい先頃終わり、平穏が戻ってくると思っていたのですが……………どうにも、王候貴族との関わりは避けられそうにないようです。 え?普通は憧れるものじゃないかって? 私は平々凡々な生活をしたいのです。それに結婚願望もありませんので問題ありません。護衛騎士な時点でもう平穏じゃなくなっているのに、これ以上悪目立ちしたくありません。 なのに。それなのに………!何故に私は隣国の王子様に熱烈なアプローチをされているのでしょうか。 この王子殿下、前作のゲームの攻略対象だった方ですよね?そもそもついこの間、とある騒動を解決するにあたって協力しましたもんね! 疑問なのは何故に我が主の兄君──王太子殿下から「お前のことを単なる騎士だと思ったことはない」なんて言われるのでしょうか。 その他あちこちからやたら口説かれていると感じるのは気のせいであって下さい。スカウト的なものだと思いたいです。まあ、それも迷惑なのですが。 みなさん、私は単なるモブ扱いでいいんです。 お願いですから、他のご令嬢とくっついて下さい。そうでなくても周囲の方々からの嫉妬の視線やら嫌がらせやらが鬱陶しいので。 これは前世の経験を活かして、王族専任の護衛をこなす自称モブな少女騎士が、主である王子の兄や、貴族令息たちに構い倒される物語です。 前作『悪役令嬢らしくヒロインに嫌がらせをしているのですが、王太子殿下にリカバリーされている件』のスピンオフです。 一応、種類としては恋愛にしましたが、またファンタジー色が強いかもしれません。 ※今回は流血沙汰な表現とかが入る予定。たぶん、エロは無いです。

元稀代の悪役王女ですが、二度目の人生では私を殺した5人の夫とは関わらずに生き残りたいと思います

景華
恋愛
リザ・テレシア・ラブリエラは1度目の人生で殺された。 夫達以外の一人の男性を愛してしまった彼女の、5人の夫の手によって。 首謀者は不明。 五人の夫もその場で命を絶ち、地獄絵図と化した。 “もう一度だけチャンスを上げましょう。真実の愛を見つけて、どうか幸せに” という謎の声に導かれ、リザは人生を巻き戻され、二度目のリザを生きることに。 「人生のやり直し、ね」 なんとか18歳まで生きてきたものの、二度目の人生には異性の求婚、求愛の言葉が「ピー」という自主規制音になってしまう、【プロポーズ無効化スキル】なんてものが備わっていた!? 加えて婚約者候補として、一度目の人生の夫のうち4人と会うことになったり、閨授業の講師として残りの一人の夫が来ることになったり、「いきなり詰んだ……!!」な状態に。 二度目の人生こそ生き残るため。 そして幸せになるため。 幼馴染で護衛騎士のセイシスを連れて、婚約者候補達のフラグを折ろうと奮闘する。 自分を殺すことをたきつけた首謀者であろう5人の一度目の人生の夫の中の一人は誰なのか。 そして一度目の人生、彼女がただ一人本気で愛してしまった男とは? 元悪役王女の、生き残りと国の存亡を駆けた謎解きやりなおし恋愛ファンタジー!! 小説家になろう、カクヨムでも公開中。

【完結】これからはあなたに何も望みません

春風由実
恋愛
理由も分からず母親から厭われてきたリーチェ。 でももうそれはリーチェにとって過去のことだった。 結婚して三年が過ぎ。 このまま母親のことを忘れ生きていくのだと思っていた矢先に、生家から手紙が届く。 リーチェは過去と向き合い、お別れをすることにした。 ※完結まで作成済み。11/22完結。 ※完結後におまけが数話あります。 ※沢山のご感想ありがとうございます。完結しましたのでゆっくりですがお返事しますね。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい

マルローネ
恋愛
サンマルト王国の王子殿下のフリックは公爵令嬢のエリザに婚約破棄を言い渡した。 理由は幼馴染との「真実の愛」に目覚めたからだ。 エリザの言い分は一切聞いてもらえず、彼に誠心誠意尽くしてきた彼女は悲しんでしまう。 フリックは幼馴染のシャーリーと婚約をすることになるが、彼は今まで、どれだけエリザにサポートしてもらっていたのかを思い知ることになってしまう。一人でなんでもこなせる自信を持っていたが、地の底に落ちてしまうのだった。 一方、エリザはフリックを完璧にサポートし、その態度に感銘を受けていた第一王子殿下に求婚されることになり……。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~

柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。 大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。 これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。 ※他のサイトにも投稿しています

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた-- 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は-- ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

処理中です...