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21.義母の過去2(義母視点)
しおりを挟む※出産妊娠、子どもの事で不快な表現が出てきます。苦手な方はご注意ください。
「旦那様、失礼します。ローズです」
「何だ?お前を呼んでいないぞ」
部屋に入ると、侯爵がぶっきらぼうに返事をする。
「そんな冷たい事仰らないでください。今日は良き知らせを持ってきたのです」
「勿体ぶらずに早く言え」
相変わらずな態度。
この人はいつもそうだ。気まぐれに夜に呼びつけ、行為をしてサッサと出て行かされる。
(本当に不器用な人。でも大丈夫…。私は貴方を分かってあげているわ)
「できたのです。子どもが!勿論、貴方と私の子どもですわ!」
そう言ってお腹に目をやり、お腹をさすって侯爵に視線を戻すと…
そこには鬼の形相をした侯爵がいた。
「何だと!?チッ。お前には子どもが出来ないのだと思っていたが…誤算だったな」
「……へっ?」
なぜ…?やっと…やっと子どもができたのに…なぜ喜んでいないの…?
「出ていけ」
そう言って侯爵が近くに置いてあった硬貨の入った袋を床に投げて寄越した。
でていけ……??
「あ、貴方の子がここにいるのですよ…?なぜ?貴方は15年間ずっと私の事を愛してくださったではないですか…!坊っちゃまの家庭教師になりたいと言った時もすぐに叶えてくださった!」
「愛して…??ふふっっはーーっはっは!!何を言っているんだ?ただの使用人を愛するだと!?寝言は寝て言え!息子の家庭教師も、前家庭教師がお前と同じように子どもができたとか言ったから追い出した所で丁度良かっただけだ」
……私と同じように……??
子どもができた………??
呆然とする私に更に冷たい声が注がれる。
「分かったら侯爵家を出て行け。2度と顔を見せるなよ」
そう言われ、部屋を出て行くしかなかった。
部屋から出ると、侯爵夫人がいた。
「あら、その顔。お腹に子どもができたのに出て行けと捨てられたような顔ね?」
……わざわざ嫌味を言いにきたのか…。
今まで私たちの関係に気付きながら何も言ってこなかった癖に……
「ふふ、図星でしょう?あの人ったら最低よね。私も大っ嫌いだわ。見るだけで虫唾が走るのよ。でも、貴女が夜の相手を代わってくれていたからとても助かったわ」
ど、どう言う事……!?
「貴女を専属のメイドに推薦したのも私よ。思った通り良い娼婦となってくれたわ」
「しょっ……」
「私は貴女に感謝しているのよ。私も鬼では無いわ。日も暮れて来たし今日はゆっくり休んで明日にこの屋敷を出て行きなさい」
そう言って大金の入った袋を投げて寄越した。
「退職金よ」
そう言い捨て廊下を去って行く彼女の後ろ姿をただ睨みつけた。
……タダで済ませるものですか……
その日、皆が寝静まった頃を見量って坊っちゃまの部屋へ行った。
「うーん…誰だっ!?って…ローズか…びっくりさせないでくれよ…こんな夜更けにどうしたんだ?」
「坊ちゃま…ローズは今日限りでこの屋敷を出ていかなければなりません…最後に…どうか抱いてくれませんか…」
「ど、ど、どうしたんだよ…いや僕も妻が妊娠中だしちょっとマズイんじゃ……」
「奥様が妊娠中で我慢しているでしょう……?ローズの最後のお願いです」
「ちょっと、待ったっ!あーー!」
そう言って坊っちゃまの上に乗り、服を脱がせると観念して私に抱かれた。
侯爵夫人も、坊っちゃまの嫁もまさか最後に息子や旦那に手を付けられると思わなかっただろう。
ざまぁみろ…
そして次の日の早朝、侯爵家を出た。
侯爵が死に、坊っちゃまが侯爵になった時に必ずここへ帰ってくる…。
そう心に決めて……。
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