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十三章Eクラスの団結
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俺が誰もいなさそうな周りに声をあげると、その人物は観念したのか近くの木の陰から姿を見せた。
「さすがですね。新矢崎財閥の精鋭部隊の刺客達をあっさりやり過ごせる実力。お見事です」
現れたのは高身長で黒装束を身にまとった茶髪に黒目のオールバックイケメンだった。腰や両肩のホルスターには拳銃やナイフが装備されており、体つきも軍人レベルに鍛えている細マッチョな男。顔は四天王並の優男なのに体つきは見事な鍛え方で無駄な筋肉は一切ない。漂う雰囲気は隠れていた時は鋭い殺気も混じっていたが、今は人当たりの良さそうな物腰の柔らかい好青年風といったものか。
女が騒ぎそうな見た目にちょっとイラっとした俺は未だにイケメン嫌いなようだ。
「……あんたも俺を殺しにきたのか。まあ、それが新矢崎財閥共からの指令なんだろうからそうなんだろうけど」
ヤレヤレこれから戦闘かと面倒くさそうにため息を吐くと、男は少し苦みを含んだ笑みを浮かべた。
「最初は……そうでしたね」
「最初は?」
曰くありげな言い方に俺は今はそうではないのかと察する。
「あなたの実力をこの目で見て知りたかったのです。あなたが本当にあの新矢崎財閥の野望を打ち砕く程の実力があるのかどうかを。もし、先ほどの刺客程度で後れをとっていたのなら、私自らあっさりと殺していたでしょう。ですが、その心配もなさそうです」
それを息を吸うかの如くできるとでも言わんばかりに顔面真横に風がなびく。俺の顔面真横の幹枝にナイフがすとんと突き刺さっていた。なるほど。油断している俺でさえ反応できるかわからない速さだ。口先だけではなさそうだ。
「……その発言、結構自分が強いってわかってんだな」
今の速さを見ればおのずと実力を把握できた。結構強いレベルどころか四天王レベルって所か。まあ、今の俺なら勝てないことはないが、手こずりはするだろう。今、メンタル絶不調だし。
「これでも組織内では三本指に入るほどの実力なんですよ。でなければ幹部である私自ら暗殺指令に呼ばれませんから」
「という事はそれだけ俺の実力を警戒しているって事か」
「その通り。あなたは今一番組織内で高値で懸賞首がかけられていますよ。当然、あなたの一族も」
俺だけじゃなく家族もか。架谷一族は全員それなりに修羅場を潜り抜けてきているので心配はしていないが、後でとりあえず家族全員に報告はしておくか。家の周りは刺客ばかりなので気づいているとは思うがね。
「白井さんてよほど俺ら一家が怖いんだなぁ。そんなあんたは幹部クラスなんだ」
「組織内での実力ナンバー2って所でしょうか。ドーピングなどに頼らず人間を捨てずにこの実力を得たので、組織内では一目置かれている方です。ちなみにナンバーワンはあなたが過去に戦ったシュワちゃんと呼ばれた男ですよ」
「お、シュワちゃんがナンバーワンなんだ。さすが殺しの世界チャンピオンだなんだとか言ってただけの事はあるな」
「しかし、今はどの幹部も人間を捨てたレベルで強くなってきているので、強さのレベルは変わっているでしょう」
あの理事長は直に斃されたが、バカ社長は霊薬の血のおかげで人間レベルを超えた強さになっちまったもんな。そんな奴がゴロゴロ増えたら裏社会の勢力図もがらりと変わるんだろう。今じゃ誰が一番強いかなんて青龍会クラスでもわからないかもしれない。
「いいの?そんな事べらべらしゃべっても。聞かれてんじゃないの?」
「今は発信機も盗聴器もそういう類の物は全て取り除いているので大丈夫ですよ。今この場に私とキミ以外の人の気配はしませんし、追手も私以外は全て先ほどのゴキおもちゃで脱落したようです。矢崎財閥に情報が新しく送られる事はありませんから安心してください」
「じゃあ、俺を殺しに来たわけではなさそうだな。それで他になんの用で?」
「あなたに、頼みがあるのです」
「頼み?」
男は真摯な態度で俺を見つめた。
「新矢崎財閥を壊滅させてほしいのはもちろんの事、開星学園にいた一人の生徒の真実を知るために協力してほしいのです」
「開星にいた一人の……生徒?」
男の目は強い決意などが宿っている。しかも、組織の壊滅を願っているのかこの男。
「開星に……私が唯一大切に思っていた生徒がいたんです。その生徒のおかげで私は……自分のしてきた事に疑問を持つことができた……ううん、この暗殺業や組織がおかしいんじゃないかと気づけた」
「ふむ……その生徒のおかげで娑婆の世界に気づかせてくれた恩人てわけだ」
いろいろ事情がありそうだ。自分の組織や暗殺業に疑問を持ち始めたって事は、組織のやり方が気に食わなくて俺に壊滅してほしいんだろうかね。言われるまでもなく矢崎も白井もぶっ潰す予定だがよ、その生徒とやらが気になるな。こいつの言っている事が本当だったらの話だが。
「ていうかそもそも、あんたそちら側の人間なんだろ。そちらさんへ盛大な裏切りになっちまうけどいいわけ?」
「元々、私は好きでこの組織にいたわけではありませんよ。最近では殺しも組織の存在も嫌気がさしていたくらいです。気が付いたらこの世界にいて、暗殺者として育った身。うんざりしていました」
「ふぅん……そうなのか。暗殺者として……か」
やっぱりそういう人も中にはいるのか。小さい頃から知らずに組織に攫われて暗殺者として教育されてきたってパターンだろうかね。世の中の楽しい事を何も知らずに暗殺を生業にさせられているってひどく悲しい人生だ。
当然この男とは出会ったばかりだし、組織の人間という事で簡単には信用できないので、これからの行動で判断させていただく。俺を殺そうとする他に騙そうとする奴なんて新矢崎の奴らにはゴロゴロいるはずなので、警戒は怠らない。疑心暗鬼にさせて同士討ちを狙ったりとか、そういう二次元であるあるパターンはよく見てきたからな。
「どうしてそれを俺に頼むんだ?他に適任がいるんじゃないのか」
「我々の幹部らと何度か戦った事もあり、その人間離れした規格外の強さ。あなた以外に考えられない。もちろん、あなたの人格や人間性を考慮しての事です」
「随分と俺を買ってくれるんだな」
「あなたが開星でのEクラスだったというのも理由の一つです」
「さすがですね。新矢崎財閥の精鋭部隊の刺客達をあっさりやり過ごせる実力。お見事です」
現れたのは高身長で黒装束を身にまとった茶髪に黒目のオールバックイケメンだった。腰や両肩のホルスターには拳銃やナイフが装備されており、体つきも軍人レベルに鍛えている細マッチョな男。顔は四天王並の優男なのに体つきは見事な鍛え方で無駄な筋肉は一切ない。漂う雰囲気は隠れていた時は鋭い殺気も混じっていたが、今は人当たりの良さそうな物腰の柔らかい好青年風といったものか。
女が騒ぎそうな見た目にちょっとイラっとした俺は未だにイケメン嫌いなようだ。
「……あんたも俺を殺しにきたのか。まあ、それが新矢崎財閥共からの指令なんだろうからそうなんだろうけど」
ヤレヤレこれから戦闘かと面倒くさそうにため息を吐くと、男は少し苦みを含んだ笑みを浮かべた。
「最初は……そうでしたね」
「最初は?」
曰くありげな言い方に俺は今はそうではないのかと察する。
「あなたの実力をこの目で見て知りたかったのです。あなたが本当にあの新矢崎財閥の野望を打ち砕く程の実力があるのかどうかを。もし、先ほどの刺客程度で後れをとっていたのなら、私自らあっさりと殺していたでしょう。ですが、その心配もなさそうです」
それを息を吸うかの如くできるとでも言わんばかりに顔面真横に風がなびく。俺の顔面真横の幹枝にナイフがすとんと突き刺さっていた。なるほど。油断している俺でさえ反応できるかわからない速さだ。口先だけではなさそうだ。
「……その発言、結構自分が強いってわかってんだな」
今の速さを見ればおのずと実力を把握できた。結構強いレベルどころか四天王レベルって所か。まあ、今の俺なら勝てないことはないが、手こずりはするだろう。今、メンタル絶不調だし。
「これでも組織内では三本指に入るほどの実力なんですよ。でなければ幹部である私自ら暗殺指令に呼ばれませんから」
「という事はそれだけ俺の実力を警戒しているって事か」
「その通り。あなたは今一番組織内で高値で懸賞首がかけられていますよ。当然、あなたの一族も」
俺だけじゃなく家族もか。架谷一族は全員それなりに修羅場を潜り抜けてきているので心配はしていないが、後でとりあえず家族全員に報告はしておくか。家の周りは刺客ばかりなので気づいているとは思うがね。
「白井さんてよほど俺ら一家が怖いんだなぁ。そんなあんたは幹部クラスなんだ」
「組織内での実力ナンバー2って所でしょうか。ドーピングなどに頼らず人間を捨てずにこの実力を得たので、組織内では一目置かれている方です。ちなみにナンバーワンはあなたが過去に戦ったシュワちゃんと呼ばれた男ですよ」
「お、シュワちゃんがナンバーワンなんだ。さすが殺しの世界チャンピオンだなんだとか言ってただけの事はあるな」
「しかし、今はどの幹部も人間を捨てたレベルで強くなってきているので、強さのレベルは変わっているでしょう」
あの理事長は直に斃されたが、バカ社長は霊薬の血のおかげで人間レベルを超えた強さになっちまったもんな。そんな奴がゴロゴロ増えたら裏社会の勢力図もがらりと変わるんだろう。今じゃ誰が一番強いかなんて青龍会クラスでもわからないかもしれない。
「いいの?そんな事べらべらしゃべっても。聞かれてんじゃないの?」
「今は発信機も盗聴器もそういう類の物は全て取り除いているので大丈夫ですよ。今この場に私とキミ以外の人の気配はしませんし、追手も私以外は全て先ほどのゴキおもちゃで脱落したようです。矢崎財閥に情報が新しく送られる事はありませんから安心してください」
「じゃあ、俺を殺しに来たわけではなさそうだな。それで他になんの用で?」
「あなたに、頼みがあるのです」
「頼み?」
男は真摯な態度で俺を見つめた。
「新矢崎財閥を壊滅させてほしいのはもちろんの事、開星学園にいた一人の生徒の真実を知るために協力してほしいのです」
「開星にいた一人の……生徒?」
男の目は強い決意などが宿っている。しかも、組織の壊滅を願っているのかこの男。
「開星に……私が唯一大切に思っていた生徒がいたんです。その生徒のおかげで私は……自分のしてきた事に疑問を持つことができた……ううん、この暗殺業や組織がおかしいんじゃないかと気づけた」
「ふむ……その生徒のおかげで娑婆の世界に気づかせてくれた恩人てわけだ」
いろいろ事情がありそうだ。自分の組織や暗殺業に疑問を持ち始めたって事は、組織のやり方が気に食わなくて俺に壊滅してほしいんだろうかね。言われるまでもなく矢崎も白井もぶっ潰す予定だがよ、その生徒とやらが気になるな。こいつの言っている事が本当だったらの話だが。
「ていうかそもそも、あんたそちら側の人間なんだろ。そちらさんへ盛大な裏切りになっちまうけどいいわけ?」
「元々、私は好きでこの組織にいたわけではありませんよ。最近では殺しも組織の存在も嫌気がさしていたくらいです。気が付いたらこの世界にいて、暗殺者として育った身。うんざりしていました」
「ふぅん……そうなのか。暗殺者として……か」
やっぱりそういう人も中にはいるのか。小さい頃から知らずに組織に攫われて暗殺者として教育されてきたってパターンだろうかね。世の中の楽しい事を何も知らずに暗殺を生業にさせられているってひどく悲しい人生だ。
当然この男とは出会ったばかりだし、組織の人間という事で簡単には信用できないので、これからの行動で判断させていただく。俺を殺そうとする他に騙そうとする奴なんて新矢崎の奴らにはゴロゴロいるはずなので、警戒は怠らない。疑心暗鬼にさせて同士討ちを狙ったりとか、そういう二次元であるあるパターンはよく見てきたからな。
「どうしてそれを俺に頼むんだ?他に適任がいるんじゃないのか」
「我々の幹部らと何度か戦った事もあり、その人間離れした規格外の強さ。あなた以外に考えられない。もちろん、あなたの人格や人間性を考慮しての事です」
「随分と俺を買ってくれるんだな」
「あなたが開星でのEクラスだったというのも理由の一つです」
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