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一章最低最悪な出会い
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「へへへやりー。お兄ちゃん、こうでもしないと一生キスできないだろうと思って奪っちゃった」
「っ……み、未来っ!!」
俺は柄にもなく狼狽えて未来を睨みつけてしまった。
「お兄ちゃん顔真っ赤~」
「うるせっ。お前も同じ顔色だろ」
「私は嬉しいからだもーん」
「……初めてだったんだけど」
「お兄ちゃんの初めて欲しかったから私は大満足」
「ハア……実の兄にお前というヤツは……」
生娘じゃあるまいしキスくらいどうってことはないが、実の妹に奪われた事は衝撃的である。
本当にウカウカしていたら、この先は実の妹に貞操を奪われてしまうかもしれない。近親相姦……はないとは思うが、このままいけば妹の押しに負けてしまうかもしれない。そんでもって知らんうちに既成事実なんて作られてはたまったものではない。
やはりこれからは女相手にはちゃんと警戒しよう。女は怖い。女は策士。二次元女しか信じない。そう決めた俺なのであった。
そして、三か月後の春――……
桜吹雪が舞う中で、俺は真新しい制服に袖を通しつつ嫌な予感しか感じない開星学園の門を叩いたのであった。
ウン十万はするらしいこのクソ高い制服がタダで助かった。黒いブレザーとスラックスに黒い縞模様のネクタイ。胸元には校章のマーク。シャツは薄い青色。金持ち学園らしく生地が高級そうだ。糞真面目に着ていたら堅苦しいのでもちろん着崩している。
「架谷君?架谷君なの!?」
リュック背負ってスラックスの両ポケットに両手を突っ込みながら職員室に入ると、顔合わせにやってきた教師は俺の姿を見るなり驚いた表情をした。
長いモスグリーンの髪をサイドによせて三つ編みをした眼鏡の……あれ、この顔はどこかで見たことが……
「もしかして……佐伯先生?」
俺はふと思い当たった。
「やっぱり架谷君なのね。まさか編入生が架谷君だったなんてびっくりしました。中学の卒業以来ですね」
中学の時に世話になった女教師だ。
名前は佐伯万里江で20代半ばだったはず。
見た目は童顔。とても20半ばに見えない小柄な背格好で、身長が150前後しかない。中学の同じクラスの男子達からは眼鏡ロリ教師だとか、巨乳ロリだとか、隠れてそう呼ばれていた。
本人も童顔と身長の事は気にしているため、少しでも大人に見られるよう眼鏡をかけているが、その見た目としっかり者のようで隙がある部分がバカ共の餌食になりそうなので、時々助けてあげたりした。
「先生も元気そうで。あんな田舎の中学からここへ赴任してきているなんて驚いたよ」
「いろいろ事情があったのです。架谷君も元気そうで嬉しいです」
先生の身長はあの頃と変わっておらず、目線は下の方になってしまう。そんな先生も身長が高めの俺に対しては仕方がないにしても、どうしても上目遣いになってしまう事に苦労している。やっぱり俺と先生は教師と生徒には見えないかも。
「随分身長が伸びたのね」
「まぁ……成長期なんで」
「中学の頃……あなたには助けてもらってばかりでしたから、また再会出来て先生は嬉しいです。どう?あれから少しは数学の勉強はしている?」
「んー……数学というより掛け算程度ならまぁ……。なんていうか~数学は俺としてはクマ数匹をいっぺんに相手にするより難しいっていうか……」
三平方のてーり?因数分解?サインコサインタンゼント?なんだそれ、おいしいの?ってカンジ。
「もう……そのあなたの例えだと全然勉強していない様子ですね。相変わらずなんですから」
「ははは……俺、マジ数学わけワカメなんで、万里ちゃんせんせーまたよろしくおねげーします」
佐伯先生との再会に、俺はふと中学時代を思い返した。
あの頃は小坊の時よりかは弱虫もなくなってマシになったが、まだまだガキだった俺は不良とよくケンカをしていた。で、じいちゃんに怒られるまでがパターン化していた。
やり過ごせばいいものを、つい相手をしてしまう所がガキだったんだろうと思う。そこをじいちゃんにもよく突っ込まれてケンカして、一時期反抗期にもなったりした。
あの時の俺はいろいろ悩んでバカやって、警察のお世話にもなって、先生にもいろいろ迷惑かけたなあ。
佐伯先生……いや万里ちゃん先生か。年上に思えないからか、クラスメートの女子達からはそんなあだ名で呼ばれていたっけ。彼女と出会ったのは中学一年の春のことだった。
俺は中学に入学して間もない頃、それぞれが友達という名のグループが出来ているのに俺は完全にそれに乗り遅れてしまっていた。つまりは入学早々にボッチになってしまっていたのだ。グループを作れとか、昼休みの時間のメシタイムとか、俺は常に独り。
クラスのみんなは早々に仲間同士で昼飯を楽しげに食っている中で、取り残される俺はどうしたものかと思う。小学校の頃は給食の時間は班ごとに分かれて嫌々一緒に食っていたが、中学は好きな者同士のグループで机を合わせて食うのが主流らしい。カルチャーショックとはこの事だ。
ずっとボッチだったから友達を作るなんて俺としては今更ながら難しい。まあ、ボッチでも別にいいんだがね。慣れてるし。
大体友達ってどうやって作るんだっけ?今まで友達なんていなかったからワカンネ。キモオタに友達なんてネットでしかいねーんだわ。
保育園の頃は妹とよくいたし、小学校の頃はほとんど女子か神山さんが自分に話しかけてきてくれたし、今まで孤独でもなんとかやってこれたし、別に友達なんていなくてもいいかな~なんて思っていた。
だから今後も別にそれでいいや。群れるの好きじゃないから。んでもって、部活は何か必ず入らなきゃいけなかったんだっけ。スポーツは好きなんだけど、仲間意識とかチームワークとかある系統のスポーツは難しいよなぁ。
俺、一匹狼だし。協調性ないし。中学にも帰宅部とかありゃいいのに。帰ったら自主練したいよ。
とりあえず楽そうなゲーム研究会とやらに入ってみよう。ゲームはメジャーなものから格ゲーとパワプロとウイレレ系が好きだし、マイナーなのも知ってる。最近はロープレやホラゲーもやるようになってきて範囲は広い方だ。ついでに内緒でスマホのエロゲアプリも少しやってたりな。キモオタゲーマーまっしぐらだ。
しかし、じいちゃんがげーむばかりするでないとか怒鳴って来たので、一日せいぜい二時間しかできないのが辛い。俺だってたまにはゲームの世界に浸りたい時もあるんだ。ゲームの世界の勇者になりたいんだ。で、二次元のぴちぴちギャルにぱふぱふしてもらいてーんだ。
ってことで、相変わらず入学してからボッチな俺は、教室を出た中庭で弁当を食う事にした。教室でみんな仲間内で食ってる中で、一人で無念無想しながら食うなんて上級テクニックを俺は持ち合わせちゃいない。寂しくないと言ったらウソであるからな。
朝早く起きて作った弁当は、某モンスターをゲットするアニメのチューチュー言うアイツを真似たキャラ弁だ。これでも料理は小学校時代から得意で掃除洗濯も好きな方である。我ながら女々しい特技だ。恥ずかしい。
母ちゃんが家事全般ドヘタでドジなため、小学校低学年時代から毎日俺がやらなきゃとか思ってたら必然と料理スキルがあがっていた。ちなみに裁縫や刺繍や編み物だって十八番である。ばあちゃんから教わったがな。
じいちゃんから格闘を習う前までは、家事と裁縫が好きな女々しい奴だったから、今となっちゃ黒歴史である。
今は裁縫とかはやらなくなってしまったが、妹が可愛いマスコットやマフラーがほしいとか言えばコソコソ作ってあげているくらいか。妹が俺の出来を見て、ネットで販売したら間違いなく売れるよとか言ってくれるが、俺はそんな女々しいモノを売りたい趣味はないのでやめておく。欲しいゲームのためにお小遣いに困ったらやるかもしれないが。
『ふむ、我ながらいい出来だな。もぐもぐ』
朝練後に作った弁当は短時間で仕上げた物の割にはいい方だ。インスタとやらにあげても遜色はないだろう。いいねたくさんもらえそうだ。
寝る前に俺が家族全員の朝食と弁当の仕込みをしている。夕方はばあちゃん担当。自主練の後にやっている事だから少しきついが、これもじいちゃん曰く『修行だと思え』と言われた。おかげで修行でクタクタな時はゲームができないのが不満である。
しばらく弁当を食いながらスマホでエロゲアプリをしていると、向こうで数人の気配を感じ取った。
修行で得た「空間認識能力」で。
そしてその中に含まれる「気配探知」と「殺気」と「口唇術」もそれなりに訓練させられた。数匹のクマとの戦闘やじいちゃんとの修行で五感が鍛えられたため、遠く離れている人間や動物の動き、もしくは壁を隔てている向こう側の空間や位置や方向などを素早く把握して認識できるようになった。
おかげで寝ていても気配を研ぎ澄ませられるようになったので、誰かが近づくようならすぐに目を醒まして不意をつけるようになった。
しかし、相手が俺以上の強さを持つ手練れや、気配に聡い者だとその限りではない。俺でさえ気づけない事もあるし、思わぬことで驚いたり、油断していたり、集中力を欠いていると気配探知できない事もある。
そんな今はリラックスしているせいか眼で凝視してはいないが、足音や空気の流れや声の声質等で大まかに様子を把握する事はできる。
向こうの裏庭の壁際にざっと六人程だろう。多分動きや下卑た笑い声からするとここら辺を牛耳る不良共か。その不良五人が一人を取り囲み……む。これは俺が小学校時代に経験したあれか。フクロにされているのか。
ちっ……どこに行っても威張る勘違いバカはいるようで面倒くせぇな。
仕方ない。俺も経験者だし、放ってはおけない。俺にもちゃんと両親の固有スキル「お人好しの血」が引き継がれている様だ。
『す、すいません!どうか、ゆる、ゆるじ……ぐっ、あ』
『許すはずねぇだろ?焼きそばパン買って来いって言ってたのになんでコッペパン買ってくんだよ!ざけんなよォ!』
「っ……み、未来っ!!」
俺は柄にもなく狼狽えて未来を睨みつけてしまった。
「お兄ちゃん顔真っ赤~」
「うるせっ。お前も同じ顔色だろ」
「私は嬉しいからだもーん」
「……初めてだったんだけど」
「お兄ちゃんの初めて欲しかったから私は大満足」
「ハア……実の兄にお前というヤツは……」
生娘じゃあるまいしキスくらいどうってことはないが、実の妹に奪われた事は衝撃的である。
本当にウカウカしていたら、この先は実の妹に貞操を奪われてしまうかもしれない。近親相姦……はないとは思うが、このままいけば妹の押しに負けてしまうかもしれない。そんでもって知らんうちに既成事実なんて作られてはたまったものではない。
やはりこれからは女相手にはちゃんと警戒しよう。女は怖い。女は策士。二次元女しか信じない。そう決めた俺なのであった。
そして、三か月後の春――……
桜吹雪が舞う中で、俺は真新しい制服に袖を通しつつ嫌な予感しか感じない開星学園の門を叩いたのであった。
ウン十万はするらしいこのクソ高い制服がタダで助かった。黒いブレザーとスラックスに黒い縞模様のネクタイ。胸元には校章のマーク。シャツは薄い青色。金持ち学園らしく生地が高級そうだ。糞真面目に着ていたら堅苦しいのでもちろん着崩している。
「架谷君?架谷君なの!?」
リュック背負ってスラックスの両ポケットに両手を突っ込みながら職員室に入ると、顔合わせにやってきた教師は俺の姿を見るなり驚いた表情をした。
長いモスグリーンの髪をサイドによせて三つ編みをした眼鏡の……あれ、この顔はどこかで見たことが……
「もしかして……佐伯先生?」
俺はふと思い当たった。
「やっぱり架谷君なのね。まさか編入生が架谷君だったなんてびっくりしました。中学の卒業以来ですね」
中学の時に世話になった女教師だ。
名前は佐伯万里江で20代半ばだったはず。
見た目は童顔。とても20半ばに見えない小柄な背格好で、身長が150前後しかない。中学の同じクラスの男子達からは眼鏡ロリ教師だとか、巨乳ロリだとか、隠れてそう呼ばれていた。
本人も童顔と身長の事は気にしているため、少しでも大人に見られるよう眼鏡をかけているが、その見た目としっかり者のようで隙がある部分がバカ共の餌食になりそうなので、時々助けてあげたりした。
「先生も元気そうで。あんな田舎の中学からここへ赴任してきているなんて驚いたよ」
「いろいろ事情があったのです。架谷君も元気そうで嬉しいです」
先生の身長はあの頃と変わっておらず、目線は下の方になってしまう。そんな先生も身長が高めの俺に対しては仕方がないにしても、どうしても上目遣いになってしまう事に苦労している。やっぱり俺と先生は教師と生徒には見えないかも。
「随分身長が伸びたのね」
「まぁ……成長期なんで」
「中学の頃……あなたには助けてもらってばかりでしたから、また再会出来て先生は嬉しいです。どう?あれから少しは数学の勉強はしている?」
「んー……数学というより掛け算程度ならまぁ……。なんていうか~数学は俺としてはクマ数匹をいっぺんに相手にするより難しいっていうか……」
三平方のてーり?因数分解?サインコサインタンゼント?なんだそれ、おいしいの?ってカンジ。
「もう……そのあなたの例えだと全然勉強していない様子ですね。相変わらずなんですから」
「ははは……俺、マジ数学わけワカメなんで、万里ちゃんせんせーまたよろしくおねげーします」
佐伯先生との再会に、俺はふと中学時代を思い返した。
あの頃は小坊の時よりかは弱虫もなくなってマシになったが、まだまだガキだった俺は不良とよくケンカをしていた。で、じいちゃんに怒られるまでがパターン化していた。
やり過ごせばいいものを、つい相手をしてしまう所がガキだったんだろうと思う。そこをじいちゃんにもよく突っ込まれてケンカして、一時期反抗期にもなったりした。
あの時の俺はいろいろ悩んでバカやって、警察のお世話にもなって、先生にもいろいろ迷惑かけたなあ。
佐伯先生……いや万里ちゃん先生か。年上に思えないからか、クラスメートの女子達からはそんなあだ名で呼ばれていたっけ。彼女と出会ったのは中学一年の春のことだった。
俺は中学に入学して間もない頃、それぞれが友達という名のグループが出来ているのに俺は完全にそれに乗り遅れてしまっていた。つまりは入学早々にボッチになってしまっていたのだ。グループを作れとか、昼休みの時間のメシタイムとか、俺は常に独り。
クラスのみんなは早々に仲間同士で昼飯を楽しげに食っている中で、取り残される俺はどうしたものかと思う。小学校の頃は給食の時間は班ごとに分かれて嫌々一緒に食っていたが、中学は好きな者同士のグループで机を合わせて食うのが主流らしい。カルチャーショックとはこの事だ。
ずっとボッチだったから友達を作るなんて俺としては今更ながら難しい。まあ、ボッチでも別にいいんだがね。慣れてるし。
大体友達ってどうやって作るんだっけ?今まで友達なんていなかったからワカンネ。キモオタに友達なんてネットでしかいねーんだわ。
保育園の頃は妹とよくいたし、小学校の頃はほとんど女子か神山さんが自分に話しかけてきてくれたし、今まで孤独でもなんとかやってこれたし、別に友達なんていなくてもいいかな~なんて思っていた。
だから今後も別にそれでいいや。群れるの好きじゃないから。んでもって、部活は何か必ず入らなきゃいけなかったんだっけ。スポーツは好きなんだけど、仲間意識とかチームワークとかある系統のスポーツは難しいよなぁ。
俺、一匹狼だし。協調性ないし。中学にも帰宅部とかありゃいいのに。帰ったら自主練したいよ。
とりあえず楽そうなゲーム研究会とやらに入ってみよう。ゲームはメジャーなものから格ゲーとパワプロとウイレレ系が好きだし、マイナーなのも知ってる。最近はロープレやホラゲーもやるようになってきて範囲は広い方だ。ついでに内緒でスマホのエロゲアプリも少しやってたりな。キモオタゲーマーまっしぐらだ。
しかし、じいちゃんがげーむばかりするでないとか怒鳴って来たので、一日せいぜい二時間しかできないのが辛い。俺だってたまにはゲームの世界に浸りたい時もあるんだ。ゲームの世界の勇者になりたいんだ。で、二次元のぴちぴちギャルにぱふぱふしてもらいてーんだ。
ってことで、相変わらず入学してからボッチな俺は、教室を出た中庭で弁当を食う事にした。教室でみんな仲間内で食ってる中で、一人で無念無想しながら食うなんて上級テクニックを俺は持ち合わせちゃいない。寂しくないと言ったらウソであるからな。
朝早く起きて作った弁当は、某モンスターをゲットするアニメのチューチュー言うアイツを真似たキャラ弁だ。これでも料理は小学校時代から得意で掃除洗濯も好きな方である。我ながら女々しい特技だ。恥ずかしい。
母ちゃんが家事全般ドヘタでドジなため、小学校低学年時代から毎日俺がやらなきゃとか思ってたら必然と料理スキルがあがっていた。ちなみに裁縫や刺繍や編み物だって十八番である。ばあちゃんから教わったがな。
じいちゃんから格闘を習う前までは、家事と裁縫が好きな女々しい奴だったから、今となっちゃ黒歴史である。
今は裁縫とかはやらなくなってしまったが、妹が可愛いマスコットやマフラーがほしいとか言えばコソコソ作ってあげているくらいか。妹が俺の出来を見て、ネットで販売したら間違いなく売れるよとか言ってくれるが、俺はそんな女々しいモノを売りたい趣味はないのでやめておく。欲しいゲームのためにお小遣いに困ったらやるかもしれないが。
『ふむ、我ながらいい出来だな。もぐもぐ』
朝練後に作った弁当は短時間で仕上げた物の割にはいい方だ。インスタとやらにあげても遜色はないだろう。いいねたくさんもらえそうだ。
寝る前に俺が家族全員の朝食と弁当の仕込みをしている。夕方はばあちゃん担当。自主練の後にやっている事だから少しきついが、これもじいちゃん曰く『修行だと思え』と言われた。おかげで修行でクタクタな時はゲームができないのが不満である。
しばらく弁当を食いながらスマホでエロゲアプリをしていると、向こうで数人の気配を感じ取った。
修行で得た「空間認識能力」で。
そしてその中に含まれる「気配探知」と「殺気」と「口唇術」もそれなりに訓練させられた。数匹のクマとの戦闘やじいちゃんとの修行で五感が鍛えられたため、遠く離れている人間や動物の動き、もしくは壁を隔てている向こう側の空間や位置や方向などを素早く把握して認識できるようになった。
おかげで寝ていても気配を研ぎ澄ませられるようになったので、誰かが近づくようならすぐに目を醒まして不意をつけるようになった。
しかし、相手が俺以上の強さを持つ手練れや、気配に聡い者だとその限りではない。俺でさえ気づけない事もあるし、思わぬことで驚いたり、油断していたり、集中力を欠いていると気配探知できない事もある。
そんな今はリラックスしているせいか眼で凝視してはいないが、足音や空気の流れや声の声質等で大まかに様子を把握する事はできる。
向こうの裏庭の壁際にざっと六人程だろう。多分動きや下卑た笑い声からするとここら辺を牛耳る不良共か。その不良五人が一人を取り囲み……む。これは俺が小学校時代に経験したあれか。フクロにされているのか。
ちっ……どこに行っても威張る勘違いバカはいるようで面倒くせぇな。
仕方ない。俺も経験者だし、放ってはおけない。俺にもちゃんと両親の固有スキル「お人好しの血」が引き継がれている様だ。
『す、すいません!どうか、ゆる、ゆるじ……ぐっ、あ』
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