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一章最低最悪な出会い

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 こいつら……やっぱ頭イカれてる。サイコパスか。
 俺をおもちゃにして遊ぶ気満々で、人の心がないんじゃないだろうか。

『サイコパスな奴ら』

 それが四天王に対しての俺の第一印象だった。

「架谷君、大丈夫!?」

 四天王共が去って行くと、やっと張りつめた空気が和らいで正常にもどった気がした。神山さん達が俺に駆け寄ってきて労わるように声を掛けてくる。彼女達の顔は相当疲労困憊したような様子で、いかにあの連中といるだけで精神的に参るかがよくわかった。一緒にいるだけでどっと疲れるような威圧感なのだ。俺でさえあまり気を抜けなかったからな。
 
 この俺が気を抜けないって相当だろ。あいつら単独や二人同時相手をするならいざしらず、四人同時に攻められると確実に負けるな。戦ったことはないがあくまで俺の奴らの動きや癖等を見ての戦力分析カンだが。

 特に飛び道具なんて出されちゃあ面倒である。
 さっきの銀髪野郎の動きや肩の高さからみて懐に拳銃所持しているようだし。
 ここは平和な日本で学生の癖に拳銃持ち歩いてんじゃねーよと言いたい。まあ、お坊っちゃんだといろんなところから命を狙われるので護身用に持っているのかもしれんが物騒である。他の三人もおそらく飛び道具持ちだろう。
 久しぶりの強敵あらわる、か。

 こんな気持ち、本気を出したじいちゃんを相手に戦った時以来だろうか。
 じいちゃんは齢65を過ぎてもガチで強くて、機関銃をマジで避けることが出来、数体のクマを一撃で葬れるほど強い。そんなじいちゃん相手に俺は未だに勝てたことがない。いつか勝ってやるけどさ。でもあいつらも相当にできる。

「あれが四天王か。サイコパスみたいな奴らだな」
「よくわかったみたいだな……。俺らはいつもあいつらに下僕みたいな扱いをされている。あいつらを敵にまわしたら、一族路頭に迷うか一家心中って言われているくらいなんだ」

 本木君が深刻そうな顔で言う。顔色が未だに優れていない。

 奴ら四天王はEクラスの生徒はもちろんの事、それ以外のクラスでも気に入らない生徒がいれば徹底的にイジメと暴力の的にして、おもちゃのように弄んだ末に棄てる。

 暴力と支配と洗脳で完膚なきまで追いつめ、合理的に自殺にまで追い込む。
 そのパターンが四天王という奴らの一種の娯楽なんだそうで、いつくたばるかを賭け事にしているらしい。最低だな。

 そして、それ以上に彼らの機嫌を損ね、逆鱗に触れでもすれば、その生徒の親をなんらかの形で懲戒解雇に追い込んだり、親の会社自体を倒産に追い込んだり、圧力をかけて一族全てを路頭に迷わせる事だって造作ない権力を行使するんだそうだ。
 それはもう家の醜聞を世間にばらされての事なので、社会的名誉も信用も悉く奪われる末路を辿る。

 つまり、奴らを怒らせた者は、五体満足でこの娑婆を生きていけない。何事もなく平和に暮らしたければ、せいぜい機嫌を損ねないように卒業までビクビク慎ましやかに過ごすしかないのだという。

 は?ビクビク慎ましやかに?この俺が?あんなバカ共にぺこぺこして?
 アホか。小学校時代のヘタレ時代の俺じゃあるまいし、冗談はよしこさんだ。

 別に進んで目立ちたくはないし、揉め事を起こしたいわけでもないけれど、だからってあんな奴らに天下をとられているのもいい気にされるのも癪だ。お貴族様みたいな偉そうな奴から命令されるのは嫌いなんでね。

「俺、春から学校に行くよ」
「え、架谷君……!」

 四天王の奴らは、俺をもう銀髪野郎の従者下僕扱いしている様子から俺の入学は決まったも同然のようだし。
 できれば逃げたい。入学をボイコットしたい。マジでこんなクソみたいな学校死ぬほど行きたくはない。が、あいつら俺が学校に来ない事で神山さんらに危害を加えないとも限らない。宮本君が言うには、Eクラスで何か不始末を起こした者がいると連帯責任を科せられるらしい。理不尽な。

 ならば行くしかないじゃないか。
 今更、神山さんや宮本君や本木君らEクラスを放っておけないしな。そもそも俺は関わってしまったのだ。デブ理事長の秘密の花園とやらも含めていろいろ。

「あんな奴らがいる学校で、弱い生徒達が奴隷扱いされるのなんて胸糞悪い。知ってしまったらもう後戻りはできない。あんなのがまかり通っているのを知っておきながら、俺だけのうのうと逃げるなんて事はできないよ」
「架谷君……」
「そんでもってあのクソデブ理事長と髭ヅラハゲ校長。あいつらの股間をクラッシュしてオカマおネエに転落させてくれるわ。今に見ていろよ」

 俺は両手をボキボキさせつつ、ゴゴゴと燃え上がる憎悪と怒りを滾らせた。本木君らはガクガク震えている。下半身が震えているのは男としての生理的恐怖からくるものですね。わかります。

「気持ちはありがたいけど」
「それくらいの事をしてんだよアイツラは。ゆるせねぇ」

 かくして、俺は開星学園の入学を(成り行きで)決めた。
 悶々としながら秋葉原で欲しかったエロゲを買ったが、あまりテンションが上がってこないのはクソ開星学園のせいだ。楽しい青春学園ライフは入学前からお先真っ暗な空気が漂っている。

 おまけに春から不幸が一気に降りかかるでしょうなんて雑誌の占いコーナーに載っていた。行く前から詰みフラグかよ。占いなんて当てにしないが、それを好奇心で眺めてテンションはまたさらに下降。でも恋愛運はかなり高くて大恋愛フラグありと記されてある。

 大恋愛ねー。俺は三次元には興味ないからどうでもいいんだが……。ま、たかが占いなんぞ気にしないでいよっと。焼き芋でも食いながらな。
 通りすがりの石焼き芋屋さんを見つけて爆買いして買い食いする俺。なんで焼き芋って食うと屁が出るんだろ。

 ビジホに帰ると妹がむすっとした顔で待ち構えていて、俺がどこに行っていたか察していたようだ。

「お兄ちゃん、私に嘘ついて置いていくなんて酷い!ゲーム買いに行ったのは嘘だったの!?」
「エロゲ買いに行ったのは本当だ。ほら見ろ」

 手にはゲームソフト。エルフの美少女が服を乱れさせて上目遣いで見ているパッケージである。当然18禁で触手プレイやアブノーマルなシチュもあるというタレこみ。裏パッケージにはモザイク付のエロスチルがこれでもかと掲載。

『女の子を可愛くするには、あなたの熱くて太い性剣を女の子の大事な場所に解き放ってあげてネ(はぁと)』という生々しい煽り文句付だ。
 
 やはりロリで巨乳は二次元では至高だな。二次元だからこそ裏切られたりすることもないし、煩わしい事もないので二次元がやはり最高だ。あー未来が寝た後にコッソリPCをフロントから借りてきてやろうっと。ティッシュとヘッドホンを準備してな。

 ん、なんで未成年なのに18禁プレイしてるかだって?それにはいろいろネットでの付き合いがあってだな~全国にいるオタ仲間から融通を利かせてもらったのだよ。よいこのみんなは真似しないで高校卒業してからプレイするようにな。

「で、悪い女の虫に絡まれなかった!?」

 俺の期待のエロゲに一瞬視線を移して華麗にエロゲをスルーする未来。くそ、女の子の裸絵を見てあからさまに嫌そうな顔すんなっつうの。女の子はイケメンが出てるやつじゃないと食いつかないってか。だったら乙女ゲーでもしてろよ。

「悪い女の虫ってなんだよ」
「お兄ちゃんに色目を使ってくる女だよ!」
「そんな女いねーよ。色は使ってないが同級生とは再会したがな」
「えー!同級生ってある意味危ないじゃんかっ!」
「お前が考えている事はなんもねーよ。昔の同級生相手を別になんとも思ってないし」

 神山さんは前より綺麗で可愛くなったなとは思ったよ。俺じゃ勿体ないくらいには。

「お兄ちゃんがそんなんでも、向こうがそう思ってないかもしれないじゃん。んもー警戒心ゼロなんだから」
「なんで俺が警戒しなきゃなんないんだよ……」

 普通は女の子が男相手に警戒するもんなんだがなぁ。モテない俺が警戒してもしゃーなくね?ま、現実の女の子には興味ないし、二次元の女の子がいれば俺は満足だからな。巨乳ロリの金髪碧眼がジャスティスである。

「心配しなくても俺はモテねーよ。不潔キモオタの掃き溜めなめんな」

 自分の部屋はいろんな意味でイカ臭いとは言われる。イカ臭いってなんだよイカ臭いって。精力有り余ってる野郎の部屋ってこんなもんだろ。

 入った瞬間二次元エロタペストリーと二次元美少女ポスター満載な内装で、棚には大量の薄い本とエロフィギュアと漫画がどっさり。ベッドの奥には箱があり、その中には俺の一番のお宝のエロアニメDVDを保管している。ヤフオクで売れば数十万はくだらないマニアが欲しがる逸品だ。ま、絶対売らないけどな。世間様から見たら汚部屋かもしれんが俺にとってはお宝ルーム。そんなキモオタな俺が悪い女とやらに引っ掛かるどころか逆に女が逃げていくと思うんだけど。自分で言ってて悲しくなるけどね。

「そんな事ない!お兄ちゃんがいくらキモオタで、たまに風呂五日も入らない不潔マンな一面あっても、お兄ちゃんは意外に……意外にモテるって知ってるんだから」
「そこまで言うかよ。っつーか褒めてんのか貶してんのかどっちだ」
「とにかく!余所の女の子に目を向けないでよね!」

 未来は俺にタックルする勢いで抱きついてきた。
 あまりに勢いが強かったのと、足を滑らせてそのままベッドに倒れ込んでしまう。二人してベッドに雪崩れた事で俺はまずいと思い、慌てて未来を退けて離れようとするも未来は逃してはくれない。起き上がろうとする俺に馬乗りになるようにおさえつけた。

「ちょ、おい未来!」

 未来は女の子だが柔道をしているので力は強い。男として本気で振り払おうと思えば振り払えるが、なかなか妹相手に邪険にできないのだ。

「お兄ちゃん。さっき言ってた警戒心ゼロってこういう事。だからお兄ちゃんはこうやって押し倒されちゃうんだよ」

 未来の顔がものすごく至近距離にある。

「そうだな。俺が警戒してなくて悪かった。女の子は男以上に策士だって事も。だけど、いくらなんでもこの体勢はよくないからどいてくれ」
「よくないってなんで?やだって言ったら?お兄ちゃんがよくなくても私は嬉しいよ」
「オマエな。それがわからない年頃でもないだろ。オマセなくせに。いいからどけって」
「じゃあ……キスしてくれるならどいてあげてもいいよ」
「は……?バカか。何冗談言って……る」

 その時、唇に柔らかな感触が一瞬だけした。
 俺は絶句した。不意打ちだと!?

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