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3.喜多村本家に居候
104.サキちゃんの叱責?
しおりを挟む「それで、これは一体どー言うことじゃ?」
「え~なんと言いますか──」
装甲車は暴徒の波を泳ぐように駐車場を走り抜け、帰途に就く。
その車内、乗車状況は行きと違う様相である。
中央の広場? と言うか通路には気更来さん、羽衣さんが跪いている。
その後ろにボクの護衛、歩鳥、斎木、羽徳煌太女殿下──ミヤビ様の護衛、笹さん、打木さんまで跪いている。
そして、サキちゃん──皆がお館様と呼ぶ人の真ん前でボクも同じく座らされている、床に。
「──なぜ、ボクも床に座らされてるのか、分からないんですけど~?」
「はあ~……その黒メガネはどうした? どうして、わしの携帯にメールできる? 装甲車を喚んだそうじゃが、どうやって?──」
「ちょっと、そんなにいっぱい答えられない」
「ふむ……まず、そのメガネはどうした」
おずおずと気更来さんが手を挙げる。
「わたくしが渡しました。館内の見取り図があれば案内しやすいかと思いまして」
「分からぬ。なぜ、キョウが案内する? 貴様が案内すればよかろう?」
「ええっと、その……その時は前を見れない状況でして、ですね?」
「前を見れない? 意味が分からん……」
「あの~僭越ながらご説明いたしますと──」
そう言い羽衣さんがボクのスカートを捲る。
「きゃ! 何すんのよ~」
「ぶふっ!」とスカートの中身を見たサキちゃんが吹く。
「と、このような、媚態が目の前にあるとですね、前を見れなくてですね?」
「意味がわからん。貴様らが前を歩けばよかろう? ん~ん?」
「あ~、えっと、キョウ様を担いでおりましたので前を向いてしまいますと、その媚態が目に入って正気ではいられませんから……」
「なぜ担ぐ。単直に申せ」(✳️『単直』単刀直入の略)
そこから、一からの説明が始まる。
「──なるほど、元凶は羽衣、貴様だな? それでキョウよ、なぜ斯様なことができた? そなたは、そこまで調整されておらん」
「ええっと、コーデって何?」
「はぁ~そこからか……。まあ良い。できてしまったものを本人に分かろうはずもない……か?」
そういってサキちゃんは空をにらみ物思いに耽る。
ちょっと~、そこで話やめられると首すじがムズ痒くなるんですけど~?
とは言え、ご立腹なサキちゃんに訊けるはずもなくボクは言葉を呑みこんだ。
「そのメガネを返せ。そなたには早い。まったく、計画を修正せねばならん……」
「あの~、返さなきゃダメ? 計画って何?」
「そなたには関係……あるが、まだ話せん」
それきりサキちゃんは黙ってしまう。
泣く泣くサングラスを気更来さんに返し、ボクたちは座席に着いた。
余計に乗り込んだ護衛や警護と、特殊部隊な笹さん、打木さんは立ちん坊だ。
あ”~、あれがあればアレやコレやができたのに~。
直近では、タマ・水無の現況を覗け無事なのか確認できるし、逐一マキナの様子を視れるかも知れないし。
ああ、そうそう。放置できないのでサガラ・クルーも車に乗せ、モールから離れたところで投棄した。
降車の間違いじゃないかって?
だって、本当に蹴り降ろしたから投棄でしょ? やったのはボクじゃないよ?
他の車、むくつけき特殊部隊の車に乗ったから、そっちの人たち。だからしょうがない。
行きより少し時間が掛って喜多村本家楼壁に着く。通過儀式を経て壁の中へ。
車から降りて迎賓館へ戻ろうとするところをサキちゃんに止められる。
「もう、そなたは母屋に来よ」
「え? どうして」
「そなたを放置できなくなった。許可なく本館を出ること罷りならん」
「え~! 迎賓館のお風呂がボク、良いんだけど?」
「風呂などどこでも同じじゃ」
「ええっ~? 違うよ?──」
そこからボクのお風呂愛が炸裂してしまい捲くし立ててしまう。
「あ~分かった分かった。風呂は好きにせよ」
「それじゃ。本館──母家のソープ使っていい?」
「ソープ?……ああ~アレか。そなた、女の中でアレを使うと酷い目に遭うぞ?」
「酷い目って何さ?」
「もっとヌルヌルにされる、別のもので……まあ、それも愉しいかも知れぬが……」
「そ、そう? 別のものが分からないけど、マキナは別に普通だったよ」
「あやつは慣れておるからじゃ。まあ、今夜、使ってみれば分かる。おお! 今度はわしも一緒に入る。風呂の刻は知らせよ」
「…………」
なんだよ。サキちゃんも楽しみにしてるじゃん。
「はあ~、つ・か・れ・た……」
「あの、キョウ様。荷物はどこへ」
「もう、適当に置いておいて? ボク寝るから。なんか精神的に疲れちゃって……」
「お召しのままでは、寝苦しいでしょう? 脱がれたらどうです」
「そうだね……」
ベッドに寝転びながら、のろのろエプロンドレスを脱ぐ。
「ちょっと、下着くれない? ボクサーパンツが良い」
「はい、どうぞ」
「ありがとう──って、なんで居るのさ?」
顔をあげたらパンツを差し出す気更来さんと、荷物を物色する羽衣さんが目に入る。
まあ、歩鳥さんと斎木さんが来ても不思議じゃなかったんだけど、その二人も何やら荷物を物色してる。点検してると思いたい。
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