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第四章 定め
4.4 私の戦い方
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迫り来るクイーン。あの体躯でどうしてそんなに高速で動けるのか。同時に強烈な臭いを放つ毒液が私に向かって飛んでくる。
だけど、やっぱりそうだ。
クイーンの動きが読める。飛んでくる毒液の軌道がわかる。
白仮面の時の氷塊もそうだった。もう間違いない。サーチングナビゲーションの効果だ。おそらく軌道をサーチしてる。おかげで避けられる。だけど間合いを詰められるからイメージする時間が無い。
一対一の接近戦は、不利だ。私はスッと毒液を避けながらクイーンから距離を取る。
毒液の水溜りが増えてくる。
このままだと安全地帯が無くなる。長引かせるのはまずい。
でも、だいぶ見えてきた。
クイーンは、私との距離がある場合は、毒液を連続して吐き出してくる。ある程度距離が詰まってきたら、毒液+長い尻尾での攻撃だ。
今のところ、突進、毒液、尻尾、という攻撃パターンしかない。
尻尾の攻撃も、大丈夫。難なく避けられる。よそ見はできないけど。
まぁ、まだタイマーを見なくても大丈夫だろうけど、攻撃の糸口はほしい。
アレでいこう。
「クリエイト:金の胡蝶――――」
イメージするのは、ガルシオンが使っていた美しい金色の蝶。
キラキラと光を放つアゲハ蝶だ。手の平くらいの大きさの。
「レイヤータイム:1sec、発動!」
時計の秒針が少し下に傾く。その傾きは緩やかだ。
私の右手の上に、金色のアゲハ蝶一匹がスッと現れる。
ダイナモの視線が、キラキラしたその蝶の動きを捉え僅かに警戒する。
よし。
「目標に向かって飛んで!」
私がそう告げると、蝶はふわりと飛びあがり、クイーンホーンダイナモの注意を惹き付けながら
クイーンの周りを飛ぶ。
クイーンが忌々し気に腕を振り上げるも、蝶はクイーンの攻撃を難なく避ける。
でも、一匹じゃ心許ない。ということで、アレも試す。
白仮面の技から得たヒントで印象よくないけど、性能はいい、と思う。
イメージは簡単だ。
三匹くらい増やそう。できればもっと増やしたいんだけどね。
「クリエイト:コピー; レイヤータイム:3 sec、3ターンズ; 発動!」
――――1秒経過。
金の胡蝶の存在がブレ、スッと横にずれる。おお! 二匹になった!!
――――2秒経過。
もう一度、蝶が二重に見えたかと思うと、スッと複製され……。あれ?
――――3秒経過。
3ターン目。さらに蝶の存在が複製され、増えて――――。完了。
クイーンの頭上には、金の胡蝶が八匹も舞っている。これは邪魔だろうな。
まてまて、なんでそうなった!? もっと増やしたいとか思ったから?
結果オーライ!
八匹の金の胡蝶は、変則的に動きを変えてクイーンの攻撃をかわし続けている。
蝶に翻弄されてクイーンが怒っている。これは怒るだろうな。
でもすごい。疲労はほとんど変わらない。コピーされた蝶は何となく存在が薄いけど――――。
これは効率がいい!
クイーンは手あたり次第毒液を吐き散らかしている。おかげでこっちにも時折飛んでくるけど、問題無い。落ち着いて背後に回る。丁度洞窟を背にして立つ位置だ。
チャンスだ。
初めて炎の柱を使った時のことを思い出す。なんでも威力が高ければいいってわけじゃない。その後、フニオは森を守る為に白い光の霧で炎を包んでくれた。
今度は、フニオにそれはさせない。
「クリエイト:雷撃――――」
散りかけていた雲が再度集まる。
さっきは雷の雨だった。今度は純粋に一本の光の柱でいい。
さらに、さっきは八匹に5ターンは多かった気がする。
今は一本に集約するから、3ターンで。
あと、時間指定にmomentを使うのはかなり疲労が多い気がする。
本来、発動にかかる時間をギュッと短縮(積層)させて限りなく0秒に近づけているのだから、当然か。
蝶のおかげで時間は稼げている。3秒くらいにしてみよう。それ以上待つのはちょっと怖い。
で。なんでこんな悠長に考えているかって?
それは今、例のスローモーション状態に入っているから。
私はこれまでも戦闘中に敵の動きがゆっくりに見えることがあった。そして、それは偶然ではなくて、集中を高めたときにこのモードに入るっぽい。あれだ、無敵のスライムさんがつかってた思考加速。あんなふうに自由に使えるようになりたい。
よし、かなり落ち着いた。
「レイヤータイム:3sec、 3ターンズ; 発動!」
――――――3。
変わらず蝶を追い払おうとするクイーン。
――――2。
頭上の蝶に向かって口を開く。
――1。
毒液を吐こうとしたその瞬間。
強い光と激しい雷鳴の中。
クイーンホーンダイナモは、その重い体躯を地面に横たえる。
同時に金の胡蝶達も姿を消した。空中に残った金の粒子がクイーンホーンダイナモに舞い落ちる。
金の粒子がその体に触れると、禍々しかった赤黒い斑紋がスウッと消えた。浄化、だろうか。
白仮面の「破邪クラス」という言葉を思い出す。
クイーンの体から黒い靄が発生する。
星界にいけるのなら、それでいい。
目の前には、斑紋のない美しい赤い角と、緑色の核が残った。
だけど、やっぱりそうだ。
クイーンの動きが読める。飛んでくる毒液の軌道がわかる。
白仮面の時の氷塊もそうだった。もう間違いない。サーチングナビゲーションの効果だ。おそらく軌道をサーチしてる。おかげで避けられる。だけど間合いを詰められるからイメージする時間が無い。
一対一の接近戦は、不利だ。私はスッと毒液を避けながらクイーンから距離を取る。
毒液の水溜りが増えてくる。
このままだと安全地帯が無くなる。長引かせるのはまずい。
でも、だいぶ見えてきた。
クイーンは、私との距離がある場合は、毒液を連続して吐き出してくる。ある程度距離が詰まってきたら、毒液+長い尻尾での攻撃だ。
今のところ、突進、毒液、尻尾、という攻撃パターンしかない。
尻尾の攻撃も、大丈夫。難なく避けられる。よそ見はできないけど。
まぁ、まだタイマーを見なくても大丈夫だろうけど、攻撃の糸口はほしい。
アレでいこう。
「クリエイト:金の胡蝶――――」
イメージするのは、ガルシオンが使っていた美しい金色の蝶。
キラキラと光を放つアゲハ蝶だ。手の平くらいの大きさの。
「レイヤータイム:1sec、発動!」
時計の秒針が少し下に傾く。その傾きは緩やかだ。
私の右手の上に、金色のアゲハ蝶一匹がスッと現れる。
ダイナモの視線が、キラキラしたその蝶の動きを捉え僅かに警戒する。
よし。
「目標に向かって飛んで!」
私がそう告げると、蝶はふわりと飛びあがり、クイーンホーンダイナモの注意を惹き付けながら
クイーンの周りを飛ぶ。
クイーンが忌々し気に腕を振り上げるも、蝶はクイーンの攻撃を難なく避ける。
でも、一匹じゃ心許ない。ということで、アレも試す。
白仮面の技から得たヒントで印象よくないけど、性能はいい、と思う。
イメージは簡単だ。
三匹くらい増やそう。できればもっと増やしたいんだけどね。
「クリエイト:コピー; レイヤータイム:3 sec、3ターンズ; 発動!」
――――1秒経過。
金の胡蝶の存在がブレ、スッと横にずれる。おお! 二匹になった!!
――――2秒経過。
もう一度、蝶が二重に見えたかと思うと、スッと複製され……。あれ?
――――3秒経過。
3ターン目。さらに蝶の存在が複製され、増えて――――。完了。
クイーンの頭上には、金の胡蝶が八匹も舞っている。これは邪魔だろうな。
まてまて、なんでそうなった!? もっと増やしたいとか思ったから?
結果オーライ!
八匹の金の胡蝶は、変則的に動きを変えてクイーンの攻撃をかわし続けている。
蝶に翻弄されてクイーンが怒っている。これは怒るだろうな。
でもすごい。疲労はほとんど変わらない。コピーされた蝶は何となく存在が薄いけど――――。
これは効率がいい!
クイーンは手あたり次第毒液を吐き散らかしている。おかげでこっちにも時折飛んでくるけど、問題無い。落ち着いて背後に回る。丁度洞窟を背にして立つ位置だ。
チャンスだ。
初めて炎の柱を使った時のことを思い出す。なんでも威力が高ければいいってわけじゃない。その後、フニオは森を守る為に白い光の霧で炎を包んでくれた。
今度は、フニオにそれはさせない。
「クリエイト:雷撃――――」
散りかけていた雲が再度集まる。
さっきは雷の雨だった。今度は純粋に一本の光の柱でいい。
さらに、さっきは八匹に5ターンは多かった気がする。
今は一本に集約するから、3ターンで。
あと、時間指定にmomentを使うのはかなり疲労が多い気がする。
本来、発動にかかる時間をギュッと短縮(積層)させて限りなく0秒に近づけているのだから、当然か。
蝶のおかげで時間は稼げている。3秒くらいにしてみよう。それ以上待つのはちょっと怖い。
で。なんでこんな悠長に考えているかって?
それは今、例のスローモーション状態に入っているから。
私はこれまでも戦闘中に敵の動きがゆっくりに見えることがあった。そして、それは偶然ではなくて、集中を高めたときにこのモードに入るっぽい。あれだ、無敵のスライムさんがつかってた思考加速。あんなふうに自由に使えるようになりたい。
よし、かなり落ち着いた。
「レイヤータイム:3sec、 3ターンズ; 発動!」
――――――3。
変わらず蝶を追い払おうとするクイーン。
――――2。
頭上の蝶に向かって口を開く。
――1。
毒液を吐こうとしたその瞬間。
強い光と激しい雷鳴の中。
クイーンホーンダイナモは、その重い体躯を地面に横たえる。
同時に金の胡蝶達も姿を消した。空中に残った金の粒子がクイーンホーンダイナモに舞い落ちる。
金の粒子がその体に触れると、禍々しかった赤黒い斑紋がスウッと消えた。浄化、だろうか。
白仮面の「破邪クラス」という言葉を思い出す。
クイーンの体から黒い靄が発生する。
星界にいけるのなら、それでいい。
目の前には、斑紋のない美しい赤い角と、緑色の核が残った。
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