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第四章 定め
4.3 ホーンダイナモ討伐③
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フニオが茂みの中から出て、ホーンダイナモの注意を引き付ける。
巣に侵入したフニオを撃退しようと、多くのホーンダイナモがフニオに攻撃を与える。
それをフニオは難なくかわしながら、奥へ進む。
そうして姿が一瞬見えなくなった辺りで、私も茂みから出る。
余計なことは考えちゃだめだ。
一撃で倒すのがきっといい。
水は電気を通す……なら、イメージするのは雷。
私は後ろに2,3歩下がって射程距離を調節する。
「クリエイト――――」
今回は範囲攻撃だ。
苛烈な一本の雷ではなく、降り注ぐ電気の雨のイメージ。
周囲を攻撃する強力なエネルギーだ。
フニオの体に緑色のしみができている。毒液だろうか。
あと数メートル、フニオが入口から出てきたら私の番だ。
上空に生まれた雲からからバチッバチッという音がする。
雷のエネルギーが集まってきているのを感じる。
イメージが固まった。
「電撃の雨――――」
フニオが、入口に向かって走ってくる。緑の毒液まみれで本来の美しい毛並みが台無しだ。
後からホーンダイナモ八体が洞窟の中から出てくる。
今だ!
私は大きく息を吸い、宣言する。
「レイヤータイム:moment5ターンズ。発動!」
宣言と同時に出現する紫色の稲妻。幾筋の光が走ったかと思うと、空気を引き裂く鋭い音がそこかしこに響く。何本もの光の矢となった雷電がホーンダイナモに降り注いだ。
まさに、瞬きほどの一瞬の出来事。
バタバタと倒れていくダイナモたち。取り残しは、ない。
発動の瞬間、グンッと秒針が動いた。まずまずの疲労。
でも、ぜんぜんまだまだいける。一度限界近くまでいったからかな。
よし、と思った目の前に。
緑色の毒液まみれなフニオが恨めしそうにこちらを見ながら立っている。
――――あ。
「俺ごと打つとは……」
「あぁぁ、ごめんフニオ。そういう訳じゃないんだけど……」
「信頼の証と受け取ろう」
やれやれといった表情で、フニオは自らの体の傷を白い光の粒子で回復する。
あれ? あの白い光の粒子。確か蝶から放出されていた……。
――――フニオだったんだ。
「優花、呆けている場合ではないぞ。クイーンがくる。やれるか?」
洞窟を見ると、赤黒く光る目が私を睨みつけている。
――――仲間を殺された怒り、憎悪。そして、深い悲しみ。
人じゃないから、魔獣だからってことはない。
その想いに引き込まれそうになる。
「うん」
それでももう後には退けない。私は即答する。
「ならば俺は影に入っている。……だが無理はしてくれるな」
私は素直に感謝する。
すべては私のため。フニオの配慮が心に刺さる。
「ありがとう、フニオ」
洞窟からその姿が現れる。
全身に広がる赤黒い斑紋。サイズも先程のホーンダイナモより更に二周りほど大きい。
特徴的なのは額部分に生えた深紅の角、だ。
背中にはやはり透明な小さな羽がある。
憎悪に満ちた赤黒い目が、私の姿をとらえ妖しく光る。
そう言えば冒険者ギルドでマールに言われんだったな、赤い角のホーンダイナモには手を出すなと。
忠告を受けたのに、結局対峙することになってしまった。
それは私がエクストラだからだろうか?
ううん、たぶん私は自分からそうなる道を選んでしまってる。
あとは何のアドバイスを受けたんだっけ。
あ、毒液だ。直撃は避けたほうが良い……。
クイーンホーンダイナモが、私に向かって突進しながら毒液を吐く。
それが戦闘開始の合図だった――――。
巣に侵入したフニオを撃退しようと、多くのホーンダイナモがフニオに攻撃を与える。
それをフニオは難なくかわしながら、奥へ進む。
そうして姿が一瞬見えなくなった辺りで、私も茂みから出る。
余計なことは考えちゃだめだ。
一撃で倒すのがきっといい。
水は電気を通す……なら、イメージするのは雷。
私は後ろに2,3歩下がって射程距離を調節する。
「クリエイト――――」
今回は範囲攻撃だ。
苛烈な一本の雷ではなく、降り注ぐ電気の雨のイメージ。
周囲を攻撃する強力なエネルギーだ。
フニオの体に緑色のしみができている。毒液だろうか。
あと数メートル、フニオが入口から出てきたら私の番だ。
上空に生まれた雲からからバチッバチッという音がする。
雷のエネルギーが集まってきているのを感じる。
イメージが固まった。
「電撃の雨――――」
フニオが、入口に向かって走ってくる。緑の毒液まみれで本来の美しい毛並みが台無しだ。
後からホーンダイナモ八体が洞窟の中から出てくる。
今だ!
私は大きく息を吸い、宣言する。
「レイヤータイム:moment5ターンズ。発動!」
宣言と同時に出現する紫色の稲妻。幾筋の光が走ったかと思うと、空気を引き裂く鋭い音がそこかしこに響く。何本もの光の矢となった雷電がホーンダイナモに降り注いだ。
まさに、瞬きほどの一瞬の出来事。
バタバタと倒れていくダイナモたち。取り残しは、ない。
発動の瞬間、グンッと秒針が動いた。まずまずの疲労。
でも、ぜんぜんまだまだいける。一度限界近くまでいったからかな。
よし、と思った目の前に。
緑色の毒液まみれなフニオが恨めしそうにこちらを見ながら立っている。
――――あ。
「俺ごと打つとは……」
「あぁぁ、ごめんフニオ。そういう訳じゃないんだけど……」
「信頼の証と受け取ろう」
やれやれといった表情で、フニオは自らの体の傷を白い光の粒子で回復する。
あれ? あの白い光の粒子。確か蝶から放出されていた……。
――――フニオだったんだ。
「優花、呆けている場合ではないぞ。クイーンがくる。やれるか?」
洞窟を見ると、赤黒く光る目が私を睨みつけている。
――――仲間を殺された怒り、憎悪。そして、深い悲しみ。
人じゃないから、魔獣だからってことはない。
その想いに引き込まれそうになる。
「うん」
それでももう後には退けない。私は即答する。
「ならば俺は影に入っている。……だが無理はしてくれるな」
私は素直に感謝する。
すべては私のため。フニオの配慮が心に刺さる。
「ありがとう、フニオ」
洞窟からその姿が現れる。
全身に広がる赤黒い斑紋。サイズも先程のホーンダイナモより更に二周りほど大きい。
特徴的なのは額部分に生えた深紅の角、だ。
背中にはやはり透明な小さな羽がある。
憎悪に満ちた赤黒い目が、私の姿をとらえ妖しく光る。
そう言えば冒険者ギルドでマールに言われんだったな、赤い角のホーンダイナモには手を出すなと。
忠告を受けたのに、結局対峙することになってしまった。
それは私がエクストラだからだろうか?
ううん、たぶん私は自分からそうなる道を選んでしまってる。
あとは何のアドバイスを受けたんだっけ。
あ、毒液だ。直撃は避けたほうが良い……。
クイーンホーンダイナモが、私に向かって突進しながら毒液を吐く。
それが戦闘開始の合図だった――――。
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