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第四章 定め
4.2 ホーンダイナモ討伐②
しおりを挟むパーラ湖から東へ進む。
その道中パープルウルフが襲い掛かってきたけど、フニオの雷撃で一撃だ。
「目標外の魔獣は俺が始末する。優花はスキルを使うな」
いつも思うんだけど、フニオの雷撃ってどうして音が無いんだろう?
雷撃なら落ちるときに音がするはずなんだけどなぁ。
「俺の雷撃は、優花の記憶の自然現象からヒントをもらった。一番相性のよさそうなものが、優花が認識する雷だっただけだ。俺はそのイメージを光魔法で再現しているわけだが……。そうか。音も必要だったか?」
「いや、攻撃するのにどうしても音が必要な訳じゃないけど……」
いやでも、そういう理由っ!?
てかそれ、レーザー光線なんじゃないの!? なんで曲げられるの!?
「音を付加してもいいが、余計な魔力を使うな」
フニオはパープルウルフの核を拾い集めながらそんなことを言う。
いや、エコが一番だと思うから、音はいいよ。
浄化された核を受け取り、また歩きはじめる。今回は三つ。
魔獣の核のストックがまた溜まっていく。
30分近く歩いた頃、急に開けた場所に出る。その奥に見える緑に覆われた岩壁には縦に裂けたような大穴がある。洞窟だ。
フニオと一緒に茂みに隠れて様子を伺う。
八つの白い点と、赤の点の場所。
私が選択したのは、巣だ。
脅威なのはこちら。
赤いのがリーダーなら、それを倒せばあとは散り散りになるだろう。
洞窟の中は、曲がった白い角を持ったオオサンショウウオに似た魔獣。ホーンダイナモだ。
爬虫類の次は両生類か……。縁があるのかな。
しかも地球の水族館で見かけるオオサンショウウオよりも2周りくらい大きい。
あとなんか、背中に透明な小さな羽が付いてる。絶対飛べないと思う。
しかもホーンダイナモの目は大きく、よく見ればマロンのようにかわいい。
――――討伐。か。
「奥に赤の点。クイーンを確認した」
うん。見える、私にも。
……。
できたらこの巣を一掃なんてことはしたくない。ホーンダイナモは元々大人しい魔獣だとカーラさんが言っていた。それに、乱獲することで生態系に影響が出るという話も聞いたことがある。地球の話だけど。
「ねえ、フニオ。赤黒い目って、ゆがめられた魂、だよね」
これまでの経験上、そうだ。成れの果て。とどめを刺した後、黒い靄が立ち上る。
みんな赤黒い目、だった。
「クイーンホーンダイナモ以外は、みんな普通の目、なんだよね」
私が何を考えているのか、フニオにはわかったようだ。
ホーンダイナモが人間を襲うようになった原因はクイーンにあるだろう。
「ふむ。奥に居るクイーンだけを引っ張り出すことは無理だな」
「じゃあ洞窟に突撃するしかないってこと?」
結局ここにいるホーンダイナモを全部やらないとダメってことか。
でも、心が決まらない。
歪められている魔獣を倒すのはまだ納得できる。
だけど、そうじゃない魔獣まで一掃するってどうなの?
元々は、マロンのようにただ普通に生きていたい魔獣もいただろう。
「洞窟に直接突撃でもいいが、優花が狭い場所で戦うのはまだ難しいだろう。洞窟と炎の相性もよくない。俺が洞窟に入ってホーンダイナモを纏めて外に出る。そのタイミングで優花が攻撃した方が、戦術の幅が広がるな」
「そうすれば、クイーンごと洞窟から出せる、か。戦いやすいのもあるけど……。他のホーンダイナモまで倒すのは……」
「クイーンのみを狙う。か。分かった何とかやってみよう」
私の目をしっかり見つめ、その後フニオは洞窟へ歩みを進める。
てっきり、反対されるものと思った。フニオは私の考えを分かってくれた。
いや……。本当に、そう?
「……。まって、フニオ」
考えろ、私。戦闘の行く末を。自分の技量を。
まず、負ける要素は、ない。今は無敵のフニオがいる。私の時間だってまだまだ安心。ファイヤーアームだって、新しい攻撃のアイディアだってある。八体の魔獣にだって、引けをとらないだろう。
白仮面との戦いはまさに死闘だったけど、その経験のおかげでわかる。
負けは、ない。
じゃあ、次の条件。
クイーンのみ倒し、他のホーンダイナモには一切攻撃せず、撤退。
洞窟から出てきた後、乱戦になるだろう。フニオの雷光線ならピンポイントでの撃破は可能。
私なら……。炎も、風も、周囲を巻き込みそうだ。
仮にクイーンだけ倒せたとして、その後の展開は?
間違いなくホーンダイナモの集団に囲まれる。そんな中でも、反撃しない私達。
ただの袋だたきだ。フニオにも傷を負わせるだろう。
逃げるか? いや、そのまま引き連れてしまっては元も子もない。
だめだ。成功のビジョンが見えない。
幻惑を使えたら? ダイナモ達を眠らせられたら?
そんなできもしないことを……。
そうか。これが無謀か否かの見極めか――――。
「フニオ、ごめん。やっぱりフニオのプランでいく」
「全滅させることになるが?」
「しかた、ない。私達が傷つく訳にはいかない。フニオに負担をかけちゃうけど、たのめる?」
フニオがくるりと踵を返しながら応える。
「任せておけ。主よ」
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