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【続編】
118:さぞかし優しくと思いきや
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夕食を終えると、スノーは義母のロレナと義父のエリヒオと共にジグソーパズルを始めた。
というのも。
パズルメーカーが最難関パズルとして、7000ピースのパズルをこの冬に売り出した。するとそれは爆発的に売れた。そして今、その売れ行きに便乗し、8000ピースのパズルが登場した。その結果。貴族の子供達は勿論、街の子供達も含め、さらには大人も巻き込み、皆、パズルに熱中していたのだ。
エリヒオは元々パズル好きだったので、その7000ピースのパズルを手に入れ、スノーに声をかけた。スノーは好奇心旺盛なので、すぐパズルにハマった。アズレーク不在の夜。夕食の後のパズルはスノーの楽しみの一つだった。そして今日。エリヒオは満を持して8000ピースのパズルを手に帰宅した。
というわけで。
空き部屋に三人はこもり、熱心にピースを手ににらめっこをしている。
この様子を見たレオナルドは笑顔で私に提案した。
「丁度いい。風の魔法の練習をしよう」
確かに今日は屋敷に戻ってからは読書をして過ごし、魔法の練習はしていない。レオナルドに言われるまま、共に魔法を練習する部屋に向かった。
そう。
風の魔法を練習するつもりだったのだが。
昼間、魔力を送ってもらっていなかった。
だからまずは魔力を送ってもらうことになる。
それはアズレークの姿ではなく、レオナルドの姿で行われたので……。
逆鱗の反応はアズレークに魔力を送られた時のように出ることはなかった。ホッとしたのも束の間。魔力を送り終えると、その姿は瞬時にアズレークに変り……。
そうなると、あの本に書かれていた通り。いつも以上にアズレークを求めてしまう。そんな風にされれば、当然、アズレークも私を求め……。
危うい状況に何度もなりかけ、遂にアズレークはレオナルドの姿になり、なんとか自身を律してくれた。そこまではそれで良かったのだが……。
その後、アズレークはレオナルドの姿のままで、風の魔法を指導してくれた。
優雅で洗練されたレオナルドの姿なのだ。
当然、アズレークの時とは違い、さぞかし優しく指導してくれるのかと思ったのに。
「パトリシア。ちゃんと集中して。そして目の前にある物の質量は一旦忘れて」
ピシャリと言われ、「は、はいっ!」と返事をせずにはいられない。
そう。
レオナルドの姿で魔法を教える時。
彼はとんでもなくスパルタになる。
美貌の顔での厳しい指導……。人によってはご褒美だろうが、私としては……この姿なのだ。もっと甘やかしてくれてもいいのに……と思ってしまう。
すると。
まるで私の気持ちが伝わったのだろうか?
優しく腰を抱き寄せられ、胸がドキドキしてしまう。
遂に、レオナルドの姿のアズレークとキスをしてしまうのだろうか。
緊張と喜びに胸を震わせ、その美貌の顔を見上げる。
紺碧の美しい瞳と目があった。
柔らかい眼差しを私に向けたレオナルドは、穏やかな声で告げる。
「あと1時間は練習しようか。そのために魔力を送るよ」
一瞬、何を言われたか分からなかった。
だって。
てっきりキスをされると思っていたから。
そして現に今も。
あの優美で気品あるレオナルドの姿で微笑むと、しとやかに私の顎を持ち上げる。
だが。
じわじわと言葉の意味を理解する。
え、あ、後、1時間も練習するの……!?
抗議の声をあげることもできず、レオナルドから魔力が送りこまれる。
こうして。
食後の3時間。
みっちり風の魔法についてレオナルドから指導を受けた。部屋に戻った私は。
魔力は……満タンだ。指導を終えたレオナルドからたっぷり魔力を送りこまれたから。でもいろいろな意味でグッタリして入浴することになった。
疲れた……。
魔法を使うというのは。
神経を使う。精神力が物を言う。集中を途切れさせると失敗する。
だから……。
とても大変。
そう思うと。
王宮付きの魔術師として案件をこなすレオナルドは……。本当にすごいと思う。魔力については始祖のブラックドラゴンなのだ。問題ないだろう。だが魔力がどれだけ強くても。集中力と精神力は別問題。それはレオナルド……アズレークの人としての資質なのだから。
そう考えるとアズレークもそうだがロレンソも、ホント、すごいと思う。
魔法を使える以前に、人としても優れている。だからその魔力も見事にコントロールできているのだろう。私は……アズレークに魔力をもらえるから、魔力については問題ないと思うが。精神力と集中力の鍛錬は……まだまだ必要だと思う。
ということで入浴を終えると。
疲れた気持ちを癒すためにベルガモットの香油を使うことにした。甘みのある柑橘系の香りは私のお気に入りだった。髪にもなじませてから、ネグリジェに袖を通す。クリーム色のネグリジェにストロベリー色のレース編みのガウンを羽織ると。なんだか苺のミルフィーユみたいなコーディネートだ。
思わず「ふふふ」と微笑みながらバスルームを出ると。
ソファに座り、紅茶を口に運ぶアズレークと目が合う。
その瞬間。
さっきまでの疲れが嘘のように吹き飛び、駆け足でソファに向かってしまう。
というのも。
パズルメーカーが最難関パズルとして、7000ピースのパズルをこの冬に売り出した。するとそれは爆発的に売れた。そして今、その売れ行きに便乗し、8000ピースのパズルが登場した。その結果。貴族の子供達は勿論、街の子供達も含め、さらには大人も巻き込み、皆、パズルに熱中していたのだ。
エリヒオは元々パズル好きだったので、その7000ピースのパズルを手に入れ、スノーに声をかけた。スノーは好奇心旺盛なので、すぐパズルにハマった。アズレーク不在の夜。夕食の後のパズルはスノーの楽しみの一つだった。そして今日。エリヒオは満を持して8000ピースのパズルを手に帰宅した。
というわけで。
空き部屋に三人はこもり、熱心にピースを手ににらめっこをしている。
この様子を見たレオナルドは笑顔で私に提案した。
「丁度いい。風の魔法の練習をしよう」
確かに今日は屋敷に戻ってからは読書をして過ごし、魔法の練習はしていない。レオナルドに言われるまま、共に魔法を練習する部屋に向かった。
そう。
風の魔法を練習するつもりだったのだが。
昼間、魔力を送ってもらっていなかった。
だからまずは魔力を送ってもらうことになる。
それはアズレークの姿ではなく、レオナルドの姿で行われたので……。
逆鱗の反応はアズレークに魔力を送られた時のように出ることはなかった。ホッとしたのも束の間。魔力を送り終えると、その姿は瞬時にアズレークに変り……。
そうなると、あの本に書かれていた通り。いつも以上にアズレークを求めてしまう。そんな風にされれば、当然、アズレークも私を求め……。
危うい状況に何度もなりかけ、遂にアズレークはレオナルドの姿になり、なんとか自身を律してくれた。そこまではそれで良かったのだが……。
その後、アズレークはレオナルドの姿のままで、風の魔法を指導してくれた。
優雅で洗練されたレオナルドの姿なのだ。
当然、アズレークの時とは違い、さぞかし優しく指導してくれるのかと思ったのに。
「パトリシア。ちゃんと集中して。そして目の前にある物の質量は一旦忘れて」
ピシャリと言われ、「は、はいっ!」と返事をせずにはいられない。
そう。
レオナルドの姿で魔法を教える時。
彼はとんでもなくスパルタになる。
美貌の顔での厳しい指導……。人によってはご褒美だろうが、私としては……この姿なのだ。もっと甘やかしてくれてもいいのに……と思ってしまう。
すると。
まるで私の気持ちが伝わったのだろうか?
優しく腰を抱き寄せられ、胸がドキドキしてしまう。
遂に、レオナルドの姿のアズレークとキスをしてしまうのだろうか。
緊張と喜びに胸を震わせ、その美貌の顔を見上げる。
紺碧の美しい瞳と目があった。
柔らかい眼差しを私に向けたレオナルドは、穏やかな声で告げる。
「あと1時間は練習しようか。そのために魔力を送るよ」
一瞬、何を言われたか分からなかった。
だって。
てっきりキスをされると思っていたから。
そして現に今も。
あの優美で気品あるレオナルドの姿で微笑むと、しとやかに私の顎を持ち上げる。
だが。
じわじわと言葉の意味を理解する。
え、あ、後、1時間も練習するの……!?
抗議の声をあげることもできず、レオナルドから魔力が送りこまれる。
こうして。
食後の3時間。
みっちり風の魔法についてレオナルドから指導を受けた。部屋に戻った私は。
魔力は……満タンだ。指導を終えたレオナルドからたっぷり魔力を送りこまれたから。でもいろいろな意味でグッタリして入浴することになった。
疲れた……。
魔法を使うというのは。
神経を使う。精神力が物を言う。集中を途切れさせると失敗する。
だから……。
とても大変。
そう思うと。
王宮付きの魔術師として案件をこなすレオナルドは……。本当にすごいと思う。魔力については始祖のブラックドラゴンなのだ。問題ないだろう。だが魔力がどれだけ強くても。集中力と精神力は別問題。それはレオナルド……アズレークの人としての資質なのだから。
そう考えるとアズレークもそうだがロレンソも、ホント、すごいと思う。
魔法を使える以前に、人としても優れている。だからその魔力も見事にコントロールできているのだろう。私は……アズレークに魔力をもらえるから、魔力については問題ないと思うが。精神力と集中力の鍛錬は……まだまだ必要だと思う。
ということで入浴を終えると。
疲れた気持ちを癒すためにベルガモットの香油を使うことにした。甘みのある柑橘系の香りは私のお気に入りだった。髪にもなじませてから、ネグリジェに袖を通す。クリーム色のネグリジェにストロベリー色のレース編みのガウンを羽織ると。なんだか苺のミルフィーユみたいなコーディネートだ。
思わず「ふふふ」と微笑みながらバスルームを出ると。
ソファに座り、紅茶を口に運ぶアズレークと目が合う。
その瞬間。
さっきまでの疲れが嘘のように吹き飛び、駆け足でソファに向かってしまう。
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