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【続編】

45:それこそ王命だ

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期待されていると分かり、ドキドキしていると。

「……国王がせっつくのも無理はない。たとえ番(つがい)と結ばれても、子はできにくいと言われているからな」

「え、そうなの?」

アズレークは返事の代わりに私の髪に顔を埋めた。

「そもそもブラックドラゴンは……ドラゴンは長寿だが、その長い寿命の中で、子を成すのは1度か2度だと伝えられている。そもそもが子を成しにくいのだ。その血を引く私達もおそらくなかなか子はできないだろう。だから国王は早いうちから励め……と思っているようだ」

それは……知らなかった。
ドラゴンだからそうなのだろうか? 他の聖獣もそうなのかしら?

「ドラゴンは特に特殊だと言われている。実物を見たことはないが、その姿はとても巨大だ。その上、長命で個体数が増えて行くと大変なことになる。食料もしかり、縄張り争いもしかりだ。だから子をなかなか成さないのだとか」

「なるほど……」

そこでアズレークは突然、私の顎を持ち上げ、自分の方へ向けた。
シャンデリアの明かりを受け、キラキラと輝く黒曜石のような瞳で私を見ると……。

「国王から請われてはな。それこそ王命だ。パトリシア、式を挙げたら覚悟することだな」

「えっ!?」

「式を挙げたら1カ月の休暇、その後も極力を残業減らし、屋敷に帰るようにと言われているから」

言わんとすることをじわじわ理解し、私が顔を赤くすると、アズレークは楽しそうに笑い、私から離れる。するとその姿はレオナルドに変っていた。

「パトリシア。そのドレスは少し胸元が開き過ぎていると思う。そしてそのアザレ色はよく似合っているが……。赤系統の色は興奮をもたらす。僕と同じ白色のドレスに着替えてもらっていいかな」

今日の昼食は。
アルベルトと三騎士も一緒だった。
執務室に迎えにいったし、その時にこのドレスを見ている。でもそこでは何も言わなかった。それなのに今、こんなことを言うということは……。

間違いない。
アズレークはまだ会ったことのないロレンソをとても意識している。
嫉妬? いや、聖獣としての本能がそうさせている。
アルベルトや三騎士のことはよく分かっているから警戒しない。
でもロレンソのことは情報でしか知らないのだ。
しかも私に一度触れているから……。

「でもドレスを着替えるにはまだ早い。こっちへおいで、パトリシア」

ソファに座ったレオナルドが悠然と微笑む。
その美貌でその微笑みは……。
心臓がドキリとしてしまう。
ドキドキしながらソファへと近づくと。
レオナルドが再びクスリと笑ったが。
次の瞬間にはアズレークの姿に戻っている。

本当にこの早変わりは不思議。
でもアズレークを見るとどうしたって嬉しくなってしまい。
私はそのままソファに座るアズレークに抱きついた。



お詫び:
43話を公開する前に、44話を先に公開していたようです。
気付くのが遅れ申し訳ございません。
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