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100:顔を赤くして黙り込む
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「パトリシアさま~!」
「スノー!」
初めて会った時と同じ、白いワンピース姿のスノーが私に抱きついた。
この馬車に乗った直後。
沈黙に耐え切れなくなった私は、スノーのことを思い出していた。
スノーを人間に変えてくれれば、この場が持つ!と思ったのだ。
でも結局それを言う前にいろいろ話した結果、アズレークからプロポーズされることになった。あの時、慌ててスノーを人間に変身させてと、言わなくて良かった。
一方のスノーは……。
ずっと話したかのだろう。
人間の姿になったと同時に、とにかくいろいろなことを話した。
ただその多くが、私とアズレークが無事気持ちを確かめ合ったことを、祝うものだった。
「もう馬車に乗った直後から、アズレークさまの落ち着かない気持ちが伝わってきて、スノーも本当に落ち着きませんでしたよ~。その後もなかなか核心に行かないので、ヤキモキしました。でも最終的にアズレークさまがちゃんとプロポーズして、パトリシアさまがイエスの返事をして安心しました」
スノーは私の隣にちょこんと座っていたが、何か思い出したようで立ち上がった。
「おい、スノー。馬車が動いている最中だ。ちゃんと座っていろ」
アズレークに指摘され、スノーは「はーい」と返事をして腰を下ろした。そしてアズレークに尋ねる。
「アズレークさま、パトリシアさまの髪にピンク色のビオラを飾ったことがありましたよね? スノーは、ピンクのビオラの花言葉を知っています! 『私のことを想って』『信頼』『少女の恋』です」
スノーの言葉に、アズレークの頬がうっすらとピンク色に染まる。
それを見たスノーは私の腕を掴み、嬉しそうな笑顔になる。
「ほら~、パトリシアさま! やっぱりアズレークさま、あの花に想いを込めていたのですよ。『私のことを想って』って」
「もう、スノーったら。それは秘めた想いなのだから、バラしたらダメでしょう」
そうスノーをたしなめていたが。
あの時、アズレークが私のことを恋しく想い、あのビオラを飾ってくれたのだと思うと……。自然と頬がほころぶ。チラリとアズレークを見ると、耳まで真っ赤になり、窓の外を見ている。
「アズレークさ……、アズレーク、魔法のことで聞きたいことがあります」
「なんだ?」
真剣な顔でこちらを見たアズレークに、今度は私が赤くなる。
おへその下の痣もカーッと熱くなる。
思わず手で痣を押さえる。
すると私が顔を赤くして、痣を押さえたことに気づき、今度はアズレークの顔が赤くなる。
こうなるともう、二人して顔を赤くし、黙り込んでしまう。
「え、どうしました、パトリシアさま。魔法の件ですよね? 廃太子計画を遂行して、パトリシアさまの体内からは魔力がなくなったはずなのに、魔法を使えたのですよね。その魔法で、睡眠不足の王太子さまや、三騎士さまの疲れを癒しましたよね」
スノーの言葉に、顔を赤くしていたアズレークが、キリリとした表情に変わる。
「パトリシア、スノーが言っていたことは本当か?」
「は、はい。そうです」
返事をした後、ルイスが言っていた推測をアズレークに聞かせた。
「ルイスはそこまで魔力が強いわけではないのに。よく勉強しているな。ルイスの言う通りだ。パトリシアの体には、魔力が宿った。つまり魔法を使える人間になった。こんなことは……普通ではありえないことだ。パトリシアが私の番(つがい)であり、私の魔力が体内を巡ったことで起きた奇跡といえる。恐らく、パトリシアに魔力を送りこめば、それはそのまま定着し、魔力の強化にもなるだろう」
「すご~い。パトリシアさま、よかったですね!」
「ありがとうね、スノー。……アズレーク、私にこれから魔法について、いろいろ教えていただけますか?」
アズレークは美しい黒い瞳を細め「もちろん」と微笑む。
そして、こんなことを口にし、私をドキッとさせた。
「そう言えばパトリシアは聖杯に塩水を満たす時、『聖杯に聖なる水を。遥かなるオケアノスよ、その水を杯に満たせ』という呪文を唱えていたが、あれは何か参考にしたのか?」
めちゃくちゃ参考にしている。
『戦う公爵令嬢』というゲームの、魔術師レオナルドの呪文を。
そう、アズレークのもう一つの姿、レオナルドの呪文を参考にしていた。
でも、それを言うわけにはいかない。
「スノー!」
初めて会った時と同じ、白いワンピース姿のスノーが私に抱きついた。
この馬車に乗った直後。
沈黙に耐え切れなくなった私は、スノーのことを思い出していた。
スノーを人間に変えてくれれば、この場が持つ!と思ったのだ。
でも結局それを言う前にいろいろ話した結果、アズレークからプロポーズされることになった。あの時、慌ててスノーを人間に変身させてと、言わなくて良かった。
一方のスノーは……。
ずっと話したかのだろう。
人間の姿になったと同時に、とにかくいろいろなことを話した。
ただその多くが、私とアズレークが無事気持ちを確かめ合ったことを、祝うものだった。
「もう馬車に乗った直後から、アズレークさまの落ち着かない気持ちが伝わってきて、スノーも本当に落ち着きませんでしたよ~。その後もなかなか核心に行かないので、ヤキモキしました。でも最終的にアズレークさまがちゃんとプロポーズして、パトリシアさまがイエスの返事をして安心しました」
スノーは私の隣にちょこんと座っていたが、何か思い出したようで立ち上がった。
「おい、スノー。馬車が動いている最中だ。ちゃんと座っていろ」
アズレークに指摘され、スノーは「はーい」と返事をして腰を下ろした。そしてアズレークに尋ねる。
「アズレークさま、パトリシアさまの髪にピンク色のビオラを飾ったことがありましたよね? スノーは、ピンクのビオラの花言葉を知っています! 『私のことを想って』『信頼』『少女の恋』です」
スノーの言葉に、アズレークの頬がうっすらとピンク色に染まる。
それを見たスノーは私の腕を掴み、嬉しそうな笑顔になる。
「ほら~、パトリシアさま! やっぱりアズレークさま、あの花に想いを込めていたのですよ。『私のことを想って』って」
「もう、スノーったら。それは秘めた想いなのだから、バラしたらダメでしょう」
そうスノーをたしなめていたが。
あの時、アズレークが私のことを恋しく想い、あのビオラを飾ってくれたのだと思うと……。自然と頬がほころぶ。チラリとアズレークを見ると、耳まで真っ赤になり、窓の外を見ている。
「アズレークさ……、アズレーク、魔法のことで聞きたいことがあります」
「なんだ?」
真剣な顔でこちらを見たアズレークに、今度は私が赤くなる。
おへその下の痣もカーッと熱くなる。
思わず手で痣を押さえる。
すると私が顔を赤くして、痣を押さえたことに気づき、今度はアズレークの顔が赤くなる。
こうなるともう、二人して顔を赤くし、黙り込んでしまう。
「え、どうしました、パトリシアさま。魔法の件ですよね? 廃太子計画を遂行して、パトリシアさまの体内からは魔力がなくなったはずなのに、魔法を使えたのですよね。その魔法で、睡眠不足の王太子さまや、三騎士さまの疲れを癒しましたよね」
スノーの言葉に、顔を赤くしていたアズレークが、キリリとした表情に変わる。
「パトリシア、スノーが言っていたことは本当か?」
「は、はい。そうです」
返事をした後、ルイスが言っていた推測をアズレークに聞かせた。
「ルイスはそこまで魔力が強いわけではないのに。よく勉強しているな。ルイスの言う通りだ。パトリシアの体には、魔力が宿った。つまり魔法を使える人間になった。こんなことは……普通ではありえないことだ。パトリシアが私の番(つがい)であり、私の魔力が体内を巡ったことで起きた奇跡といえる。恐らく、パトリシアに魔力を送りこめば、それはそのまま定着し、魔力の強化にもなるだろう」
「すご~い。パトリシアさま、よかったですね!」
「ありがとうね、スノー。……アズレーク、私にこれから魔法について、いろいろ教えていただけますか?」
アズレークは美しい黒い瞳を細め「もちろん」と微笑む。
そして、こんなことを口にし、私をドキッとさせた。
「そう言えばパトリシアは聖杯に塩水を満たす時、『聖杯に聖なる水を。遥かなるオケアノスよ、その水を杯に満たせ』という呪文を唱えていたが、あれは何か参考にしたのか?」
めちゃくちゃ参考にしている。
『戦う公爵令嬢』というゲームの、魔術師レオナルドの呪文を。
そう、アズレークのもう一つの姿、レオナルドの呪文を参考にしていた。
でも、それを言うわけにはいかない。
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