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48:潜入成功。早速。
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プラサナス城には、馬車にスノーと二人で乗り込み、入城した。アルベルトの指示で、剣の騎士ミゲルが用意してくれた馬車だった。
三方を断崖で囲まれ、天然の要塞となっている場所に、プラサナス城は建っている。壮麗な門をくぐると、石畳の勾配のあるスロープが続く。そこを馬車でゆっくり進むと、エントランスに到着した。
ファザードはズグラッフィートになっており、美しい波模様が見えている。塔の屋根は秀麗な円錐形で、鮮やかなシアン色。プラサナス城は、まさに冬晴れに映える城だった。
この国の王太子を迎えるということで、エントランスには領主のヘラルドはもちろん、その奥方やご子息・ご息女、騎士から召使いまで、ズラリと並んでいる。
三騎士がまず馬から降り、警備の騎士が配置につき、いよいよアルベルトが馬車から降りる。
本当はアルベルトも、馬で入城するはずだった。でも直前で突然、不調が現れた。だから大事をとり、落馬することを防ぐため、馬車での入城になった。
スノーと私は、警備に着いた騎士達の後ろで、ひっそりと佇んでいたのだが……。アルベルトがこちらを見て、すぐにマルクスが駆け寄り、スノーと私は、領主ヘラルドと対面することになった。
「なるほど。聖女オリビアさま! なんと我が城の噂を聞き、ゴースト退治のために駆け付けてくださったとは……! とてもありがたく思います。ぜひご滞在くださいませ」
ヘラルドは50代前半というぐらいの銀髪の男性で、ふくよかな体型をしている。目を引くのはその福耳で、誰かに似ていると思ったら……。前世のお寺で見た七福神の一人、大黒天に似ていた。
そのまま城の中へと案内され、スノーと私は部屋へ、アルベルト達はそのまま領主ヘラルドとの会談へと向かった。部屋につくとすぐに召使いが暖炉をつけ、テーブルにお茶菓子が用意される。さすがにまだお腹がいっぱいだったので、スノーと二人、お茶を飲んで休憩した。その後はトランクの荷解きをする。
そうこうしているとマルクスが、家令のゴヨを連れ、部屋にやってきた。
「ゴーストは、城の至るところに現れる。特定の場所に、毎日のように出ると聞いた。その場所に、こちらの家令であるゴヨが、案内してくれるそうだ」
マルクスに紹介され、ペコリと頭を下げる家令のゴヨは、主(あるじ)である領主ヘラルドとは対照的に、とても痩せていて長身だ。
「それでは聖女オリビアさま、ご案内いたします」
ゴヨに従い、部屋を出ると、マルクスが私と並んで歩き出す。
「念のためで、俺が護衛につく」
それは有難い申し出だ。
こうして四人で歩き出し、いくつかの場所を巡ることになる。
青い塔、小ホール、厨房、遊戯室そして中庭。
丁度、中庭についた時、陽が沈むところだった。
すると。
ゴヨの顔が青ざめた。
「急いで建物に入りましょう。中庭に毎日出るゴーストは、いつも日没後、数分で姿を現しますから」
そう話すゴヨは、既に開いた扉の内側にいる。
中庭には大理石で作られた噴水があり、周囲を回廊でぐるりと囲まれていた。柔らかな明かりが灯り、穏やかなブルアワーの時が流れているだけで、ゴーストの気配は皆無だ。
しかし、ゴーストが現れる時間が分かっているならば。
神出鬼没のゴーストを退治するより、楽に思われた。
「ゴヨさん、案内ありがとうございます。中庭に現れるゴーストは、せっかくなので、退治しようと思います」
私の言葉に、ゴヨは目を丸くする。
まさか今すぐ退治するとは、思っていなかったのだろう。
「早速、退治されるか。俺は聖女さまの護衛だから、ここに残る。ゴヨ、扉は閉めてもらって構わない」
マルクスは背負っていた槍を手に取った。ゴヨは「か、かしこまりました」と返事をすると、おずおずと扉を閉める。
「マルクスさま、その槍は……」
「ああ、この槍は、聖槍として伝えられているものだ。アルベルト王太子の三騎士に選ばれた時、贈られたもの。聖槍であれば、ゴースト避けぐらいにはなるだろう」
「なるほど」
私が返事をしたまさにその時。
「オリビアさま!」
スノーが叫び……。
三方を断崖で囲まれ、天然の要塞となっている場所に、プラサナス城は建っている。壮麗な門をくぐると、石畳の勾配のあるスロープが続く。そこを馬車でゆっくり進むと、エントランスに到着した。
ファザードはズグラッフィートになっており、美しい波模様が見えている。塔の屋根は秀麗な円錐形で、鮮やかなシアン色。プラサナス城は、まさに冬晴れに映える城だった。
この国の王太子を迎えるということで、エントランスには領主のヘラルドはもちろん、その奥方やご子息・ご息女、騎士から召使いまで、ズラリと並んでいる。
三騎士がまず馬から降り、警備の騎士が配置につき、いよいよアルベルトが馬車から降りる。
本当はアルベルトも、馬で入城するはずだった。でも直前で突然、不調が現れた。だから大事をとり、落馬することを防ぐため、馬車での入城になった。
スノーと私は、警備に着いた騎士達の後ろで、ひっそりと佇んでいたのだが……。アルベルトがこちらを見て、すぐにマルクスが駆け寄り、スノーと私は、領主ヘラルドと対面することになった。
「なるほど。聖女オリビアさま! なんと我が城の噂を聞き、ゴースト退治のために駆け付けてくださったとは……! とてもありがたく思います。ぜひご滞在くださいませ」
ヘラルドは50代前半というぐらいの銀髪の男性で、ふくよかな体型をしている。目を引くのはその福耳で、誰かに似ていると思ったら……。前世のお寺で見た七福神の一人、大黒天に似ていた。
そのまま城の中へと案内され、スノーと私は部屋へ、アルベルト達はそのまま領主ヘラルドとの会談へと向かった。部屋につくとすぐに召使いが暖炉をつけ、テーブルにお茶菓子が用意される。さすがにまだお腹がいっぱいだったので、スノーと二人、お茶を飲んで休憩した。その後はトランクの荷解きをする。
そうこうしているとマルクスが、家令のゴヨを連れ、部屋にやってきた。
「ゴーストは、城の至るところに現れる。特定の場所に、毎日のように出ると聞いた。その場所に、こちらの家令であるゴヨが、案内してくれるそうだ」
マルクスに紹介され、ペコリと頭を下げる家令のゴヨは、主(あるじ)である領主ヘラルドとは対照的に、とても痩せていて長身だ。
「それでは聖女オリビアさま、ご案内いたします」
ゴヨに従い、部屋を出ると、マルクスが私と並んで歩き出す。
「念のためで、俺が護衛につく」
それは有難い申し出だ。
こうして四人で歩き出し、いくつかの場所を巡ることになる。
青い塔、小ホール、厨房、遊戯室そして中庭。
丁度、中庭についた時、陽が沈むところだった。
すると。
ゴヨの顔が青ざめた。
「急いで建物に入りましょう。中庭に毎日出るゴーストは、いつも日没後、数分で姿を現しますから」
そう話すゴヨは、既に開いた扉の内側にいる。
中庭には大理石で作られた噴水があり、周囲を回廊でぐるりと囲まれていた。柔らかな明かりが灯り、穏やかなブルアワーの時が流れているだけで、ゴーストの気配は皆無だ。
しかし、ゴーストが現れる時間が分かっているならば。
神出鬼没のゴーストを退治するより、楽に思われた。
「ゴヨさん、案内ありがとうございます。中庭に現れるゴーストは、せっかくなので、退治しようと思います」
私の言葉に、ゴヨは目を丸くする。
まさか今すぐ退治するとは、思っていなかったのだろう。
「早速、退治されるか。俺は聖女さまの護衛だから、ここに残る。ゴヨ、扉は閉めてもらって構わない」
マルクスは背負っていた槍を手に取った。ゴヨは「か、かしこまりました」と返事をすると、おずおずと扉を閉める。
「マルクスさま、その槍は……」
「ああ、この槍は、聖槍として伝えられているものだ。アルベルト王太子の三騎士に選ばれた時、贈られたもの。聖槍であれば、ゴースト避けぐらいにはなるだろう」
「なるほど」
私が返事をしたまさにその時。
「オリビアさま!」
スノーが叫び……。
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