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なんとしてでも、結婚してみせます
第十話 同じ想いを抱いて夜はふける
しおりを挟む「……シオン様」
婚姻届を出して正式に結婚してから、今日は二人一緒の初めてのお休みです。といっても、家デートですけどね。それも、もうすぐ寝る時間。時間がありませんわ。
なので、休みのうちに、今までできなかったことを挑戦することにしましたの。
「どうした、セリア」
いつもの定位置に私を座らせながら、シオン様は凛々しくて格好いい笑顔で答えてくれます。
「結婚式をあげてはいませんが、私とシオン様は正式に婚姻したわけですし、今までできなかったことをしたいのです」
赤い顔を見られたくなくて、私は俯してしまいます。
「なにをしたいんだ?」
そう訊かれても、すぐに答えることができない私を、焦らずシオン様は待ってくれます。本当に優しくて、最高な旦那様ですわ。声に出せずに、心の中ではそう呼べるのに、現実は、どうしてこんなに難しいのでしょう。あ~ますます、顔が赤くなりますわ。
「ゆっくりでいいぞ」
そう言いながら、シオン様は私の剥き出しの項に触れます。優しい触れ方だけど、触れられた途端、私の身体はビクッと震えました。
これが、大人の余裕っていうものですね。
年齢が年齢ですから、シオン様はそれなりに異性と大人の付き合いを、今までしていたと頭では理解はしています。理解していますが、こうも見せつけられると、なんか腹が立ちますね。私の性格上、やられっぱなしは嫌ですわ。まぁ、それだけではないのですが、こう……モヤモヤとしていて、説明のしようがないのです。
私は勇気を振り絞り、シオン様の両頬を両手でソッと触れます。シオン様の瞳に真っ赤な顔をした私が映っています。何度も自分からキスをしたことがあるのに、本当に情けないですわ。
「…………シオン様にお訊きします。今までのようにシオン様とお呼びしたほうがいいですか。それとも……旦那様とお呼びしたほうがよろしいですか?」
私がそう尋ねると、シオン様は目を見開き、今まで見たことのないような幸せそうな笑みを浮かべます。
「旦那様か……」
ポツリとシオン様が呟きます。
「……シオン様?」
「俺たちは婚姻したんだな」
感慨深げに仰られるシオン様を見詰める私に、彼は触れるか触れないくらいの優しいキスをしてくれました。
そして、抱き締めてくれました。
スッポリとおさまる私の身体全体に、シオン様の熱が伝わってきます。心臓の鼓動も。
「これで、セリアは名実ともに俺のものになったのか……番という目に見えない形だけでなく、目に見える形で、セリアを俺のものとして認知されたのだな」
私は抱き締められていて、シオン様の顔は見えません。だけど、その声は本当に穏やかで、優しくて、幸せに満ちていました。
「……そうですね」
私の胸の中も温かくていっぱいになります。
「セリア、俺と二人だけの時は旦那様と呼んでほしい。セリアのこんな可愛い顔を他の誰にも見られたくないからな」
貴方の言葉一つ一つが愛おしい。
「わかりました。この部屋にいる時だけ、旦那様とお呼びしますわ」
この部屋には、私たちが呼ばないかぎり誰も入ってこないもの。
「ああ……呼んでくれ」
シオン様の願いなら、なんでも叶えてあげます。
「旦那様、愛してますわ」
「俺も我が妻を心から愛している」
私を抱き締める力が弱まった代わりに、近付くシオン様の顔。私はソッと目を閉じました。
シオン様は名実ともに俺のものになったと言ってくれましたが、それは私にも言えることですわ。
やっと、貴方を私のものだけにできましたわ。
☆★☆
最後まで読んでいただきありがとうございます。
これは私ごとになりますが、今二作品を同時進行で書いています。恋愛とファンタジーです。
タイトルは恋愛が【ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理番にされました。さて、デスゲームを始めましょうか】で、ファンタジーが【大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました】です。
もし、興味を持ってもらえたのなら、読んでもらえると嬉しいです。
これからも、一生懸命書いていきますので、宜しくお願い致します。
応援ありがとうございます!
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